テラーノベル
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深夜、テンペストの住人たちが完璧に眠りについた時間帯。私はベッドから音もなく身を起こし、自身に完全な隠蔽工作を施した。魔素の揺らぎ一つ、空気の振動一つすら外に漏らさない。そして、あの口の軽いディーノ(口軽いのは偏見)にすら行き先を悟らせぬよう、一瞬で空間転移を発動させた。
ユウキとカガリの待つ事務所のような場所。これが私の本当の仕事。ここにテンペストの様子や、あのスライムの情報を流すために、私は冥界から呼び出されたのだ。
転移を終えて二人の前に姿を現すなり、私はまだ地味に残る頭痛のせいで頭を押さえた。
「にしてもさ、心臓止まるかと思ったよ…」
私の恨み言に、ユウキはいつもの調子で軽薄に笑う。
「あはは、ごめんってー。なんか思念飛ばしたら修羅場にならないかなーって思ってさ!」
「……いや大当たりですけど。危うく修羅場だった」
面白がって命がけのタイミングで繋いできやがったこのクソガキ。
私が冷や汗交じりに睨みつけると、隣にいたカガリが信じられないといった様子で真面目な顔に戻った。
カザリームは元魔王、つまり原初に名付けがどれほど危険なことなのかが人一倍分かっているのだろう。
「にしても本当に、あのスライムは原初に名前を?」
「もはやスライムの皮を被った何かだよ……」
「ほんとほんと……世も末だよねー」
呆れ果てるユウキの言葉に、私は深く同意してため息をついた。すると、ユウキがふと不思議そうな顔でこちらを見てくる。
「なんかずっと思ってたけど、タメ口呼び捨てだね?」
「お前みたいなの尊敬できるわけ……(※どストレート)」
「えぇー? 心外だなー。てゆうか、なんでさっきから頭押さえてんの?」
失礼な態度を笑顔で流されつつ、二日酔いの頭痛に眉を顰めているのを見咎められた。
「いや、原初3人に『誰が1番好きか』聞かれて、『酒1番強いやつ』って言ったらなんか対決始まってさ……」
「勝ったの?」
「勝った」
「「 こわ……」」
声を揃えて引き気味になるボス2人。ひど……。身を守るために全力を尽くしただけなのに、化け物を見るような目をされる筋合いはない。
報告を終えた私は、再び誰にも――それこそあの恐ろしい《智慧之王(ラファエル)》にすら悟られぬよう、張り巡らせた結界の隙間をすり抜けて自室へと戻り、翌朝には何食わぬ顔でテンペストの生活へと溶け込んだ。
スパイ行為、徹底した隠蔽工作。これこそが、私の最も得意とする専門分野だからだ
リムル=テンペストは、ヒナタの一件もファルムス王国の一件も、何もかもの黒幕にユウキが絡んでいるのではないかと疑っている。いや、ほぼ確信していると言っていい。だから私の正体がバレたら、その時点で全てが終わる。
ただ、本当に皮肉なものだ。
私にこの『智慧之王にすら見破られない完璧な隠蔽工作能力』をもたらしたのは、他でもない、名前をつけた張本人であるリムル=テンペストなのだから。あの人が名前をつけたせいで、私は誰にもバレずにこれを続けられている。
いつだったか、ディーノに「もうリムル様に寝返っちゃおうかなー」なんて冗談半分で口にしたことはあるけれど、私は今もこうして普通に潜入捜査の真っ只中だ。
裏で毒を飼い慣らし誰よりも賢く立ち回ってみせる。
#東リべ
ぱなっぷ
17
53
#クロスオーバー
ココア☆
1,586
この正体と本性だけは、どんな代償を払ってでも、何が何でも隠し通してみせる――。
コメント
3件
うわ、第9話めっちゃ重かった……! 深夜の密会シーン、背筋が冷えるような緊張感がずっと続いてて、息するの忘れそうになったよ。それなのにユウキとの軽口とか「酒1番強いやつ」エピソードで一瞬空気が和むのがまた絶妙で、ギャップにやられた🥀 リムルに名前つけられたおかげで智慧之王すら欺ける隠蔽能力を得てるっていう皮肉、本当にゾクゾクする……「この正体と本性だけは隠し通す」って最後の一文、すごく心に刺さった。ダークな覚悟がカッコよすぎる。ゆめさんの描く裏の顔、毎回たまらないです✨