──一夜明けた、朝の玄関で、
旅行の支度を済ませた華さんが、「それでは行って参ります」と、頭を下げた。
「ああ、ゆっくり骨休めをしてくるといい」
「はい、ありがとうございます。ゆっくりさせてもらいますね、陽介様」彼の言葉に、華さんが笑顔で答えると、
「それと、鈴ちゃま。作り置きのお惣菜はいくつか常備しておきましたが、もしお料理をされるようでしたら、お台所を使っていただいて構いませんので」
初めて、キッチンを使うことを許してくれた。
「でも、いいんですか?」
「ええ、あなたがこちらに来てから、もうひと月余りが過ぎて、こちらにもだいぶ馴染まれましたし、お台所も解禁ということで」
そう言うと、「お二人で楽しくお料理などをされたらよろしいのでは」と、まるで昨日の彼との会話を聞いていたかのように話して、
やっぱり華さんは何もかもお見通しなのかもと感じていると、そう感じていたのは彼の方もどうやら同じだったようで、思わず顔を見合わせて笑ってしまった。
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