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ぷりっつ視点
お互いに荷物をカバンに詰め終わったころには夕方になっていた。
「もうこの場所に戻ってくることはないね。」
莉犬君がそうこぼした。それを聞いて、俺の中にも寂寥感が込み上げてきた。
「そうやな。小学校の頃に作ってからずっと、ここで遊んできたもんな。」
雨の日も、雪の日も。
「うん。だって俺、家とかで家族と過ごす時間より、ここでぷりちゃんと過ごす時間のほうが多いもん。」
どれだけ忙しくなっても。
「俺もや。ゲームしたり、お菓子食べたり。」
距離が離れてしまっても。
「あと、2人で勉強会とかもしたよね!お互いに苦手なとこ教え合って。」
改めてここで過ごした時間の長さを感じる。
「、、、。本当に、これが最後なんやな。」
自分で言って涙が込み上げそうになった。それは莉犬君も同じようだった。
少しでも明るくしようと思った。
でも。
今日が最後なんだ、ここで過ごすのは。俺らが去ったあと、ここには”誰もいなかった”、ここにいた人は”死んだ”ことになるんだ。
なら。
俺はおもむろに立ち上がると、置かれていた工具箱の中からハンマーを手に取った。
そして、そのまま秘密基地の隅にある棚へ向かっていった。
置いてある写真立ての中には、幼き日の俺と莉犬君が写っている。
その形を持った思い出に向かって、俺はハンマーを振り下ろした。
ガラスが割れるような鋭い音がした。
「ぷ、ぷりちゃん?!な、何してるの?」
突然鳴った大きな音に驚いた莉犬君が聞いてきた。
写真立てを見下ろすと、中の写真こそは無事だったが、フレームはひしゃげて、前面には蜘蛛の巣のようなひびが入っていた。
「ねぇ莉犬君。俺たちは存在しなかったことになるんだ。」
「なら、いらないものは全部壊していこうよ。」
その写真も、あの交換日記も全部。
「モノだけ残っていいたら不自然やろ?」
俺が悲しさに顔をゆがませながら残酷に事実になるであろうことを告げると、
「、、、そうだね。」
莉犬君はひどく悲しそうな顔をしていたが、しばらくして、覚悟を決めたように俺に賛同した。
秘密基地内のものを全部外に出したころには、あたりは暗くなっていた。
「さようなら。」「ばいばい。」
はたから見たらガラクタの、俺たちの思い出を集めた山に火をつけたマッチを投げ入れると、いとも簡単にそれらは燃えた。
「もう戻れなくなったね。」
ぱちぱちと燃え上がる小さな火に照らされ、莉犬君と俺はそれぞれの思い出を思い返して、涙をこぼしていたと思う。
お待たせしました。次回、ついに出発いたします。
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