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それから何年も、季節が何度もめぐって、俺たちは高校生になった。
いむくんは、相変わらずトンネルの向こうにいた。
学校が終わって、部活もサボって、真っすぐ走って行けば、あの笑顔に会える。
「しょーちゃん、また制服のまま来たの? 汗だくじゃん!」
『お前が待ってるんやから、しゃーないやろ!』
「ふふ、ほんと来るの好きだよね、しょーちゃん」
その言葉が、どうしようもなく嬉しかった。
どれくらいこの時間が続けば満足なんやろって、考えたこともあった。
でも、そんなの考えるまでもなく「永遠」って答えが出てた。
その日、いむくんが言った言葉は、まるで世界が裏返ったみたいに感じた。
「僕、ここに来るの明日が最後なんだ」
『……は?』
俺は、一瞬、何を言われたのか分からへんかった。
「親の都合で遠くに引っ越すんだ。…だから…もうここには来れない、と思う」
笑ってたけど、その声は少し震えてた。
『……ほんまに、?』
「うん」
俺は言葉を失った。
頭の中がぐちゃぐちゃで、何もまとまらない、
いつも通り、変わらん顔でいむくんが笑ってるのに、なんでこんなに苦しいんや。
『……わかった』
それだけ言って、俺は帰った。
震えた声を、情けない顔を、いむくんに見られたくなかった。