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『東京ジェノサイドの真実』なる動画がネット上を賑わせていた頃、さくらテレビの報道番組に緊急速報が流れ出た。
ー第3国主導で半島統一に向けた代表会談はじまる。仲介役の中国・ロシア代表団も韓国入りー
その内容に触れた時間は3分程度だった。
そして、臨時ニュースがスタジオへ飛び込んだ。
それこそが、韓洋の醜態をさらけ出したネット動画であり音声記録だった。
映像を疑う者など皆無だった。
さくらテレビの大株主である韓洋を、退陣に追い込む策だと知る者は、このスタジオにはいない。
ネットからの映像を垂れ流しにする地上波テレビの姿勢は、政治利用しやすい媒体へと変化していた。
東京区千代田エリア・グランドホテル九段下で行われていた、
『全国殉職警察官追悼式典』
の壇上に上がる前、槇村の元へ駆けつけた久保キリカが言った。
「総理、この後の予定は全てキャンセル致しました。高麗民主主義連邦共和国樹立の動きが早まってます。挨拶の後直ちにお戻り下さい」
槇村はゾッとした。
それはすなわち、民主主義国家と独裁国家の最前線が日本国へと移り変わるからだ。
在韓米軍が撤退する可能性は、昨年頃から騒がれていた。
それでは在日米軍はどうなるのだろうか?
東京ジェノサイドにより日米の結束は揺らぎ始めている。
高麗連邦は、事実上の核保有国となるだろう。
アメリカの核の傘に守られ続けられる補償はあるのだろうか。
唯一の被爆国として、核保有も検討しなければならないのではないか。
国家存亡に関わる転換期が訪れている。
槇村は考えていた。
「全ては朝鮮半島統一に絡んだテロではなかったのか…第3国と韓国、中露が企てたストーリーに、我々は乗っかっているだけではないのか…」
キリカは、唇をぎゅっと真一文字に結んだまま槇村の次の言葉を待っている。
槇村は言った。
「官房長官は?」
「戻っています」
「自衛官追悼集会は?」
「代わりに高波防衛副大臣が…」
「わかった。ありがとう」
そう言い残して、槇村は壇上へと向かった。