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その日の夜
自室でただ行き場のない思いを悶々と抱いていた
好きな人にはもう相手がいる
しかも女の子
俺は恋愛対象にすら入っていない
ただの…友達
考えるごとに涙が溢れてくる
長かった片想いにもそろそろ終止符を
打たなければならないのかもしれない
いい友達であるように、ずっとそばで見守れるように
彼の幸せを願おう
自分の思いは無かったことに、しよう
がんばろう
次の日の朝
昨日の晩泣きすぎたせいで
目が少し赤く腫れてしまった
『バレるかなー、まぁ大丈夫か』
なんて鏡の前で身なりを整えながら確認し
そのまま家を出ていった
[がっくんおはよう]
『おはよう!!』
いつもの時間いつもの登校
変わったのは俺だけ、君は同じように綺麗な顔で
俺の名前を呼ぶ
[あれ?がっくん目、腫れてない?]
『、』
こんな些細な変化に気がついてくれるんだな
『何でもないっすよ!行こう!』
[…]
刀也さんは少し怪訝そうな顔をしつつ
二人で学校へ向かった
『昨日は急に帰っちゃってごめん!』
[あぁ、全然大丈夫、でもどうして?]
『き、急用を思い出して、』
[ふーん]
こんなバレバレの嘘に刀也さんも気がついてはいる
それでも彼の優しさで深くは聞いてこなかった
彼女のこと聞きたいな
彼はどんな恋をしたんだろう
『か、彼女と何で付き合ったんすか』
[…!え、えっと、]
予想外の質問をされた刀也さんは少し照れた様子で少しずつ話を始めた
[一昨日…?かな教室に呼び出されて、告白されて僕、告白されるのなんて初めてだったからすごくびっくりしたんだけど]
少し嬉しそうに語る彼の顔を俺は見ることができなかった
[お試しでもいいから付き合ってって彼女が言って、その真剣さに僕も向き合わなきゃなって]
まだ、好きではない、のか
いや変な期待を持つなまた傷がつくだけだ
でも、でも
『まだ…好きじゃないってことすか、』
[うん、でもこれから好きになりたいなって思うよ]
『そっか、』
自分で聞いて聞かなきゃよかったと後悔した
自分の心への負担が強くなっていくだけだ
『…応援するね、』
[ふふっなんか恥ずかしいですねありがとう]
これが正解だよね
彼が笑っているならそれで俺はいい
高校にて
刀也さんとは学年が違うから学校内で会うことは滅多にない
たまにすれ違うことがある程度だ
なのに
今日に限って刀也さんと彼女さんが一緒に歩いているところを見てしまった
髪が長くて、小柄で華奢な可愛い女の子
俺とは正反対のタイプ
[あっ!がっく、]
こちらに気がつき手を振ってきた刀也さんから目を背け、俺は急いで自分の教室に戻った
剣持side
[…?]
がっくん僕に気がついていたはずなのに
いつもなら刀也さん!って
映えてない尻尾が見えるほど手をブンブン振ってきていたのに
どうしたんだろう
今日の目の腫れといい、なにかあったのかな
「どうしたの?刀也くん」
隣にいるのは静香さん
一昨日からお付き合いすることになった女の子だ
[いや、何でもない]
「んー?そう?ねね!今日帰り遊びに行こうよ!」
[あーごめん今日はがっくんと帰るから]
「えーまた?ほんと刀也くんって伏見先輩のこと好きだよねー」
まぁ好きっていうか親友だし大切ってだけ
確かに自分の中の優先順位の上位をがっくんが占めている
それは理解している
けど、それは彼が僕の大切な親友だからだ
「私を好きになる前に伏見先輩に落ちないでよ!」
[落ちるって…同姓どうしで何言ってるの]
「それならいいけどさー、」
嫉妬しているのかな
しょぼんとする姿がどこかがっくんに似ていて
かわいい
「まぁいいや!」
ぱぁっと切り替えて明るくなる姿も
がっくんにそっくりで思わず笑ってしまった
「な、なにー?」
[いやぁ、そっくりだなって]
「…」