テラーノベル
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撮影が終わり、M!LKメンバーはスタッフに軽く挨拶をして楽屋を出た。その少し先、廊下で女性スタッフが大きな荷物を持っているのが目に入る。
真っ先に気づいたのは勇斗だった。
「持ちますよ!」
自然な動きでスタッフのもとへ駆け寄り、荷物を受け取る。突然荷物を取られたスタッフは驚きつつも、ふわっと笑って
「ありがとうございます!」
と礼を言った。
その様子を少し後ろから見ていた仁人は、ふと思い出す。
ー笑顔が素敵な人ー
以前、勇斗が何かのタイミングで答えていた好きなタイプ。
スタッフと並んで歩く勇斗の姿が、あまりにも自然で絵になっていて、仁人は思わずぽつりとこぼす。
「、、、いいなぁ」
口に出した瞬間、はっとして自分の口を手で押さえる。無意識に出た言葉に心拍が跳ねる。後ろから太智と舜太が楽しそうに話している声が聞こえ、幸い聞かれてはいない様子。仁人は少しホッとする。
しかし、柔太朗の話し声が聞こえないことに気づき後ろを振り返ると、そこには仁人に声をかけようと手を伸ばしていた柔太朗の姿が。目が合った瞬間、柔太朗が
「あー、、、」
と気まずそうな顔をする。
「、今の、、聞いてた?」
仁人が問うと、柔太朗はほんの少し間を置いてから
「、うん」と頷いた。
仁人の表情から血の気が引く。そんな仁人を見て柔太朗は少し笑ってこう言った。
「わかるよ」
困惑したような表情のまま仁人は柔太朗を見つめる。すると彼は前を歩く勇斗とスタッフの方を見ながら、ゆっくりと言葉を紡いだ。
「勇ちゃんってさ、漫画から出てきたみたいな人じゃん? 女の子の隣に立つだけで、その場が漫画のワンシーンみたいになる。
女の子たちはそんな勇ちゃんの隣で、ただ笑ってるだけでそのワンシーンのヒロインになれる。
仁ちゃんは、そういうのを見て “羨ましい” って思っちゃうのかもしれないけど——
でもね、案外、勇ちゃん自身は違う人のことを意識して、ああいう行動してるのかもよ?」
優しく、けれど確かに意味を含んだ視線で仁人を見る柔太朗。しかし、仁人はさらに困惑の表情を浮かべる。
言葉の意味を全く理解していなさそうな仁人の様子を見て
(、、、頑張れ、勇ちゃん)
と柔太朗は心の中で呟いた。
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その頃、太智と舜太は2人の真剣な様子に気づき、空気を読んで先に勇斗のもとへ向かっていた。
「ここまでで大丈夫です!」
とペコペコしながらお礼を言っているスタッフさんに荷物を手渡し、
「いえいえ!」
と笑顔で頭を下げている勇斗のもとに到着すると、太智が声をかける。
「おつかれ勇斗〜! なに爽やかに荷物運びしちゃって〜」
それに続いて
「うわ〜できる男やわ〜!」
と舜太もふざけて言う。勇斗が2人の茶化しに笑いながら
「なんなんおまえら笑てか、2人の笑い声めっちゃ聞こえてたんだけど何話してたん?」
と聞くと、
「めっちゃおもろいことあってん!昨日さ!」
と太智と舜太は昨日あった出来事を楽しそうに話し始める。
しかし、自分から聞いたくせに勇斗の反応が妙に薄い。時よりへぇー。なんそれ笑と相槌をするもどこか上の空。気になった2人が勇斗の表情を見ると、勇斗は仁人と柔太朗の方をじっと見つめていた。
そして、ふいに勇斗の口からもれる。
「、、、いいなぁ」
その小さな呟きに、太智と舜太はぴたりと話すのをやめ、
「なにが?」
と同時に問いかけると、
「、、え?」
と勇斗が一瞬固まるが、心の中で言ったつもりだった言葉を声に出していたことに気づき、慌てて
「あ、いや!なんでもないって!」
と動揺しながらごまかそうとする。
太智がニヤリと笑いながら、
「仁人やろ?」
と言うと、図星をつかれた勇斗が
「うぇっ!?」
と変な声を上げる。すると舜太がすかさずからかう。
「勇ちゃんも可愛いとこあるなぁ〜!」
「うるせぇ!」
勇斗は照れ隠しのようにツッコみ、再び仁人の方に視線を向けた。
「……仁人ってさ、柔太朗といると、雰囲気違うよな」
どこか寂しげで、嫉妬の混じったような呟き。太智と舜太はキョトンとした顔をしたあと、顔を見合せ大爆笑。
「えww勇ちゃん本気で言っとるん?w」
「俺らから見たら、勇斗といる時の仁人の方が全然雰囲気ちがうよ?w」
「え? どゆこと?」
首をかしげる勇斗に、さらに笑いが止まらなくなる2人。
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にぎやかに話していた3人の元へ、仁人と柔太朗も合流してきた。
「そんな盛り上がって、どしたん?」
柔太朗が穏やかに声をかけると、待ってましたとばかりに太智と舜太が前のめりになる。
「あんな!今、勇ちゃんがさ〜!」
「ちょ、待て待て待て!! なんでもないから!!」
勇斗が慌てて2人の話を遮るように割って入る。両手を伸ばし、太智と舜太の口をふさぐが、太智はその手を無理矢理はがし大声で
「仁人にさ!」
と言うと、
「うわあああああああああ!!!」
と太智の声にかぶせるように、勇斗が大声を上げる。皆がわちゃわちゃしている様子をまたやってんなぁーと眺めていた仁人は、突然自分の名前が出てきたことに驚いて目を丸くする。
「えっ、俺!? 」
混乱している仁人をよそに、勇斗は暴れる2人を抑えるのを諦め、仁人の手を掴んで逃げるように走り出す。
「うわ、ちょ、待って!? なに、なに???」
仁人は訳も分からぬまま、勇斗に引っ張られて行く。その後ろで、取り残された3人は手を叩いて爆笑中。
「はぁ〜、おもろっ笑」
太智が腹を抱えながら笑い、どこか満足げに息をつく。
「勇ちゃん、あんなに慌ててんのレアやな〜!」
舜太は涙目になりながらも、ニヤニヤが止まらない。一方で柔太朗は、さっき自分が仁人に言った言葉を思い出す。
「仁ちゃん、今、自分がヒロイン側になってるって気づいてるのかな?笑」
勢いで逃げてきたはいいものの、どゆこと?とでも言いたげな顔で見つめてくる仁人に少々気まずそうに愛想笑いを返す勇斗。2人の会話は聞こえないが、2人の幸せそうな雰囲気がほんのり甘さを漂わせる。
その様子を見守りながら、太智が
「両想いなの、気づいてないのあの2人だけやん笑 いつになったらくっつくんかなぁ」
と言うと、2人がうんうんと頷く。
「もぉ〜、佐野さん勘いいのに変なとこで
にぶちんなんだからぁ〜」
と仕方ないなぁという雰囲気で言う太智。
「仁ちゃんも基本ネガティブやから、勇ちゃんがはっきり言葉で伝えるまで信じなさそうじゃない?」
と真剣に考えている様子の舜太。
「勇ちゃんはいつか気づきそうな感じあるけど、よっしーはネガ発動しちゃって、”もしかして”ってとこまでいっても結局”そんな訳ない”に落ち着いちゃいそう」
と謎の予想を立てる柔太朗。
3人はやれやれと呆れつつ、まあ2人が幸せならいっか!と思うのでした。
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どうですかね、、?
誰が話してるのか分かりやすくしたい!と思いことあるごとに名前を書いた結果、大量発生してしまいました。w読みにくかったら、すみません。( ;´-`)
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