『僕の友達』
どうも、僕です。名前はユーリィと言います。簡単に言うとアネーシャくんのお友達です。今日、僕アネーシャくんと遊ぶ約束してるんですけど時間を1時間過ぎても全く来る気配がありません。きっとまた記憶でも失くしてるんでしょう、こういうときは僕から迎えに行きます。
「よし、着いた。」
独り言を言いながらドアノブに手をかける。
そのまま手前に引くと、ガチャ、という音とともに簡単に開いてしまった。あぁ、やっぱり鍵閉め忘れて寝たんだな、と思いながら部屋に入っていく。
「おーい、アネーシャくーん?」
「ッ!?」
あ、この反応は。
「あ、え、あ、あなた…だれ…ッ?なんでぼくのなまえしって…ッ」
やっぱり。
「あ~…ねえ、アネーシャくん、壁に貼ってあるのは全部見た?」
大体覚えてるうちに付箋に書いて貼っておくんだ、そう言ってたし、書いてある付箋があったはず。
「ま、まだ…」
「わかった。じゃあ君の名前は?」
「アネーシャ」
「僕は?」
答えは大体わかってる。
「…わかんない…ごめんなさい…」
「うん、うん、大丈夫だよ。また忘れちゃったみたいだね、」
僕のこと忘れてるときは、いつも同じ説明をしてあげる。
「僕はユーリィ。君と同じ棒人間で、君の友達だよ。」
「お友達…?」
「うん、はい、これ。」
壁から1枚の付箋を剥ぎ取り、見せる。
『↓友だち ↓ぼく』と書かれていて、1枚の写真が貼り付けられている。
「…いっしょ…」
写真と僕を交互に見ながら、そうポツリとつぶやく。
「そ、いっしょ。」
「ほぇ…あ、えと、ユーリィ、くん?だったっけ…?」
「はぁい?」
「ぼく、君のことなんて呼んだらいいかな?」
「うーん、なんでもいいよ」
なんでもいいよは困ると聞くけどアネーシャくんなら考えてくれるはず。
「ん〜…ユーリィだから…」
「うん」
「わかった!ゆーくん!!」
「…!!」
「っ、ふふ、」
思わず笑いが出てしまう。
「え、なんで?!なんで笑うの?!!?」
「いやあ、やっぱりアネーシャくんはアネーシャくんなんだなぁ、って思って。」
いつもなんでもいいよって言うと『ゆーくん』になる。
記憶がなくても変わらないんだな。
「で、なんでゆーくんは僕の家に来たの?」
急に話題変わるよね、慣れてるけど。
「あ~、えっとね、今日ほんとは遊ぶ約束してたんだけど君が来ないからまた記憶失くしちゃったのかなって。」
「えっ…」
「ん?」
「えーーーッ!!!???」
突拍子もなく叫ぶ。耳がやられるかと思った。
「ど、どうしたの?」
「ご、ごめんねぇ、!」
遊ぶ約束をしてたのに忘れてしまっていたことについて謝ってるのかな、
「いやぁ、別に大丈夫だけど…」
「せっかく来てくれてるし今から行こう!」
え、ええ…
「ほ、ホントーに唐突だなあ…」
「まあまあ!ほら、早く行こ?」
そう言うとアネーシャくんは僕の手を引いて外に出ていくのだった。
コメント
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なんていいお友達…(号泣)