テラーノベル
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翔太💙『好き!……だったりして俺の事…なんちゃって…////』
放課後の校舎に伸びる影の中で、またバカみたいに笑ってごまかした。でも心の奥だけは誤魔化せなくて、冗談の形にして差し出したのは、長い時間胸にしまってきた本心だった。やっぱり怖い…そんな心情が、漸く放ったはずの想いに付け足された。
幼馴染の君に、言えない〝好き〟をそっと預けてしまった自分がどうしようもなく惨めで切なかった。
面食らったように俺を見つめ、顔を赤くした涼太は片手で顔を覆った。
二人だけの音楽室に、時計の針の音だけがやけに大きく響く。 俺は何も言えないまま、涼太の名前を呼びかけそうになって…やめた。冗談に逃げたくせにその続きを欲しがっている自分がひどくずるい気がして何も言えなかった。
涼太はしばらく顔を覆ったまま動かなくて、それからほんの少しだけ指の隙間を開けて、こっちを見た。真っ直ぐなその瞳と 視線がぶつかった瞬間、胸の奥にしまっていたはずの想いが丸裸にされ隠れ場所を失った気がした。
涼太は小さく息を吸って、何か言おうとして…
〝お前達こんなとこで何やってんだ!〟
低く響く声と一緒に、がらりと教室の扉が開き 長い説教を受ける事となった。
その後迎えに来た車内でもママにこっ酷く怒られた。温かい車内とエンジン音に、意識が少しずつ沈んでいって、睡魔に襲われウトウトしかけた時〝やっぱ怖えな翔太のママ…〟と言った涼太にクスッと笑った。
そのときだった。
涼太の手が膝の上で何度か迷うみたいに動いて、それからそっと俺の指先に触れてきた。
ほんの一瞬触れただけなのに、心臓が跳ねドキドキと騒がしく胸が苦しい。俺が何も言えずにいると、指を一本ずつ絡めてきた。 俺は息を吸ってそれを受け止めるみたいに握り返す。
窓の外に流れていく街並みを見ているふりをしながら、 本当は、隣にいる涼太の体温と、指先に伝わる熱ばかりを感じていた。 その全部が、やけに近くて、やけにあたたかい。
車がゆっくりと減速して、ウインカーの音が一定の間隔で鳴りはじめる。この時間に終わりが近づいていることが分かると涼太は一度絡めたままの指に視線を落としてから、そっと顔を上げると瞳がぶつかった。
夕焼けを映したみたいなその瞳に、言葉にならなかった続きが揺れている気がして、俺は何もできずに見返す。
ほんの数秒だったはずなのにやけに長く感じた。 涼太は、名残を確かめるみたいに親指で俺の指の甲をなぞってから、ゆっくりと指をほどいた。
触れていたところだけが取り残されて、急に、世界が広くなった気がした。
亮平💚『着いたよ?また寝てる…おいこらっ起きろっ!』
翔太💙『んっ…』
亮平💚『なんだかいい夢でも見てたの?ニヤニヤして気持ち悪かった』
〝まぁね〟無意識に右手を見つめる。 さっきまで居たその場所には 絡めた指も、あたたかさも、どこにも残っていなかった。それなのに、胸の奥だけがまだ、夢の続きを探しているみたいにふわふわと浮いて涼太の温もりを探した。
そんな俺を見てキモッと言いながらも〝正夢になるといいね〟と言って俺の頭を撫でた亮平は目尻を目一杯下げて微笑んでいる。 タクシーから降りると…
ここ何処?
亮平💚『じゃっ当たって砕けろぉ〜頑張れ翔太♡』
翔太💙『おい💢ちょっと…待って…最悪』
涼太❤️『何が最悪だって?』
修羅場に置き去りにするなよ…タクシーの窓から身を乗り出した亮平は指ハートを作って〝頑張れ〟だなんて言いながら立ち去っていった。
元はと言えばアイツが原因でこうなってるって言うのにこれ以上俺にどうしろって言うんだ。眠ったまま幸せな夢の中の続きがみたい…もう一度彼の指に触れたい。
涼太❤️『タクシー拾おうか?それとも歩いて帰る?』
翔太💙『涼太の家に入る選択肢はないの?』
涼太❤️『ん…無いね』
もう泣きそうだけど…〝そう…歩いて帰りますお騒がせしました〟踵を返すとふわっと薫ったブルガリの香水に包まれて涼太の腕が首に巻き付いた。
涼太❤️『ごめん意地悪…上がって……何も無いけど泣くなって悪かったよ』
翔太💙『ごめんなさい…一人で帰るから離して』
涼太❤️『意地張るなよ?おいで…』
掴まれた手首がジンジンと痛む。足早に歩く涼太に俯いたまま引っ張られるように歩く俺がエントランスホールのガラスに映り込んで〝見て翔太幼稚園の時もこんな事あったね〟って笑った顔は無邪気で益々涙が溢れた。
翔太💙『覚えてない』
涼太❤️『そう?俺は覚えてるけど。翔太との事は全部覚えてるよ‥音楽室に閉じ込められた時の事なんか今思い出しても笑える』
翔太💙『えっ…あの日は駅前に出来たラーメン屋に行っただろう?』
涼太❤️『はあ?行かないって断ったのお前だろ?まぁ行かなくて正解だったな…お陰で今がある』
どうなってんの?俺の記憶違いだろうか…いや絶対に違う。間違いなくあの日ラーメン屋に行って喧嘩になったんだ。夢を見てから過去の出来事が変わっちゃった?まさかね‥そんな事ある筈がない…
〝俺らって大きな喧嘩した事あったっけ?〟半信半疑で聞いてみる。
後にも先にも喧嘩したのはあの時くらいだ。
涼太は場合によっては今日初めて大喧嘩をするかもね?翔太の言い訳次第だけどなんて牽制してきた。夢の事なんかどうでもいいくらいには動揺してる。
翔太💙『今すぐ帰りたい…』
涼太❤️『残念もう着いたよ…どうぞ上がって』
これ以上涼太に嫌われるなんて耐えられない。納得できる言い訳も、この恋心をぶつける勇気もない俺は開かれた扉の向こうに足を踏み出せずにただその場に立ち尽くした。止め処なく溢れる涙は頰を濡らす。
翔太💙『明日も会えますか?その先もずっと俺は涼太の隣に居たい。ただそれだけで構わないから』
コメント
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切ない感じともどかしい感じとが いっぺんに来ている😢複雑
