それから一カ月後――。
私が仕事を終え、帰宅しようとしていると携帯が鳴った。
相手を見ると、蘭子ママさんからだった。
珍しい、どうしたんだろう。
慌てて電話に出ると
<桜ちゃんっ!?大変なの!!蒼がっ!!>
「蒼さんがどうかしたんですかっ!?」
<ごめんなさい!とにかくSTARに来てくれる!?>
「えっ?わかりました!」
もう少し詳細を聞こうとしたが、途中で切れてしまった。
どうしたんだろう、何かあったんだろうか?
タクシーを呼び、STARへ向かう。
蒼さん、どうしたんだろ?嫌な予想ばかりしてしまう。
具合でも悪いの?蕁麻疹が出たとか?ケガとか?
STARがある地下へと続く階段を下り、慌ててドアを開けた。
「どうしたんですかっ!!?」
私が勢いよくお店に入ると――。
<パーン>っとクラッカーが弾ける音がし、カラフルなリボンが宙を舞った。
「へっ?」
状況が飲み込めない私。
目をパチパチしていると
「誕生日おめでとう!」
蒼さん、蘭子ママさん、遥さんの三人が声を揃えてそう言ってくれた。
えっ、誕生日?
「ごめん。桜。騙すつもりはなかったんだけど、どうしても蘭子さんと姉ちゃんがびっくりさせたいからって。止められなくてごめんな?」
蒼さん、元気そう。良かった。
蒼さんに何もなくて良かったと安堵し、次に誕生日を祝ってくれた嬉しさが込み上げる。
「桜ちゃん、ごめんなさいね?サプライズでお祝いしたかったの。誕生日は明日だって聞いてるけど、どうしても三人でお祝いしたくて。前祝いになっちゃったけど、今日はこの四人で貸し切りにしたから。四人しかいないけど、パーティーよ!好きなもの何でも作るから言ってね?」
蘭子ママさんが手を合わせながら謝ってくれた。
貸し切り?そんなことしてもらっていいのかな。
「ありがとうございますっ!」
こんな素敵なパーティー、初めて。
「桜。驚かしてごめんね。最近いろいろあったから、桜に元気になってもらいたくて。どうしても三人でお祝いしたかったの。蘭子ママと一緒に計画して。まぁ、蒼は《《二人》》でお祝いしたかったみたいだけど」
「おい」
蒼さんが遥さんを肘で軽く押した。
「さぁさぁ、座って!お料理持ってくるから」
蘭子ママさんに言われ、ソファーの席に座る。
ここは、初めて蒼さん《椿さん》に接客してもらった席だ。
なんだか懐かしく感じる。何回もSTARには来ているのに。
貸し切りだから誰にも気を遣うことなく、いろんな話を四人でした。
蘭子ママさんの料理も美味しいし、お腹もいっぱいだ。
蘭子ママさんと遥さんからプレゼントも貰っちゃった。
昔だったらこんなに良くしてもらって申し訳ないって考え方だったけれど、今度二人の誕生日がきたら、私も同じように喜んでもらえるように頑張ろうって思えるようになった。
だから、ごめんなさいとか申し訳ないとかもう言わない。
「今日は本当にありがとうございました。楽しかったです!」
帰り際に蘭子ママさんと遥さんにお礼を伝えていた。
蒼さんはタクシーを呼びに行ってくれている。
「本当は当日が良かったのに。蒼が邪魔するなって言うから。あっ、これ、蒼には秘密ね。とりあえず、あんな弟だけどこれからもよろしく!早く桜の《《正式な》》お姉ちゃんになりたいな」
遥さんがハグしてくれた。
正式なお姉ちゃん……。それって……!?
急に恥ずかしくなって、顔が熱い。
「桜ちゃんが居てくれるから、蒼も今まで以上に仕事頑張ってるわよ。椿の接客にも磨きがかかってきたわ。STARの売上げも伸びているし、私も安心よ」
ハハっと蘭子ママさんは笑った後
「まぁお店のこと以上に、蒼が幸せそうだから嬉しいの。桜ちゃん、本当にありがとうね。あの子のこと、これからもよろしくね。桜ちゃんも遠慮なくこれからも遊びに来て?桜ちゃんも、もう私の娘みたいなものだから」
蘭子ママさんに頭をポンポンされる。
大きい手。お父さんみたい。んっ?お母さんかな。
「お待たせ。タクシーそこにいるから、帰るよ」
蒼さんが戻って来てくれた。
「二人とも、俺がいない間に変な話、してないよな?」
うんうんと蘭子ママさんも遥さんも首を縦に振っている。
「帰ろう?桜」
「はい!」
二人にもう一度ありがとうと伝え、蒼さんと帰宅した。
先にお風呂に入って、蒼さんを待っていた。
「お疲れ様。仕事終わりだったし、今日は疲れただろ?寝ようか?」
蒼さんがお風呂から上がったようだった。
「いいえ。こんなに楽しかった誕生日パーティーは初めてでした。ありがとうございました。二人の誕生日の時、私もびっくりしてもらえるような計画を立てます!蒼さんも一緒に考えてくださいね」
「あぁ。もちろん」
彼は優しく返事をしてくれた。
自分の部屋に戻らなきゃと思っていた時
「桜。ちょっと待ってて」
リビングにいてほしいと言われた。
なんだろう。
言われるがまま待っていると
「改めて……。誕生日おめでとう。これからもよろしくな」
蒼さんはそう言って、可愛く包装された小さな四角いボックスのようなものを渡してくれた。
「もう二十四時過ぎたから、誕生日当日になった」
そう言われ時計を見ると、二十四時を数分過ぎていた。
「あっ、今日になりましたもんね!蒼さん!プレゼントありがとうございます。あの……。開けても良いですか?」
「うん。喜んでもらえるかわからないけど……」
蒼さんがくれるプレゼントなんて、何でも嬉しいに決まっている。
ラッピングを解いていく。
「えっ!」
小さなジュエリーボックスだった。
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パーティー楽しそう、!! え、え、指輪ですか、?!🫶