テラーノベル
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暴力表現はありませんが、ガッツリいじめ表現を含んでいます。
(目黒視点)
「___♪」
ジュースを飲みながら、康二の歌声を聞く。
ラウも隣でリズムに乗ってる。
後夜祭のライブとか、普段の鼻歌とか聞いても思うけど、康二って歌上手いんだよな。
俺らは約束通り、3人でカラオケに遊びに来てた。
「さすが康二くん!さいこー!!」
「ほんまに…?///」
歌い終わった後の康二は恥ずかしそうに頬をかく。
「つ、次!目黒くんの番やで!!///」
「うん、ありがと」
照れ隠しするように勢いよく俺の方にマイクを向ける。
康二、もうちょっと自分に自信持てばいいのに。
歌声だけじゃない。
顔もスタイルとか外面的な部分も完璧だと思うんだけどな。
いつもラウが褒めても、康二はそんなことないでって否定するんだよな。
ラウが言ってるのに、そんなに自信ないのかな?
それに、最近女子の間でもちょっとずつ話題になってきてるのに。
クラスが違うから普段康二が教室でどう過ごしてるかはわからないけど、あんまり目立たないらしい。
俺らの前では明るく話してくれるけど、他の人たちとはどうなんだろう?
康二みたいな人だったら、周りにいっぱい人がいてもおかしくないと思うけど…
「______♪___♪」
そんなことを片隅で思いながら、俺は歌い始める。
「……っ…!目黒くん、綺麗な歌声やね!」
「でしょ?!めめはすんごい歌上手いの!」
なんでラウが自慢げなんだよ、笑
それに、康二もラウもどっちも歌上手いじゃん。
「はぁ〜!!楽しかった〜!!!」
フリータイムを全力で楽しんでたから、外は日が暮れ始めてる。
もうそろそろで夏休みも終わるのか…
中学もそうだったけど、夏が終わってからは結構早いんだよな。
体育祭とかやったらもう終わりじゃん、やば!
「2人とも、今日はほんまにありがとうな!」
後ろを歩いてた康二が俺らに笑いかけてる。
後ろの夕陽も相まって、すごい絵になるなって思った。
「こっちこそ!また一緒に行こうね」
「うん、俺も楽しかったよ」
ラウと俺が笑い返すと、康二はいっそう笑みを深める。
「友達と遊ぶって、こんなに楽しいんやね」
「……康二はこういうのは初めてなの?」
夏祭りとかでも思ったけど、康二って一緒に遊びに行くと毎回新鮮な反応するんだよな。
もしかして、あんまり友達と一緒に遊ぶってなかったのかな?
そういうところも全然いいなっては思うんだけどね。
「………まぁな、俺、東京来てほんまによかった」
一瞬だけ動きが止まったように見えたけど、少しだけ柔らかく笑った。
「「………」」
ラウと顔を合わせる。
「2人とも何しとるん?外暗くなってまうで?」
後ろにいた康二は立ったままの俺らの腕を引っ張る。
俺らは小さな違和感を胸の中に収めながら、笑う康二と一緒に帰り道を歩く。
たまに見せる表情……
俺の知らない康二がいる気がする。
(向井視点)
「……はぁ…ほんまに、ほんまに楽しかった〜!!!」
家に帰って手を洗ってソファにダイブ!
目黒くんとラウールくんとカラオケ……なんて幸せなんやろ!!
学校の有名人2人とカラオケ……めっちゃ自慢できるやつやん!
……まぁ、2人の迷惑になるのは嫌やから言わんけど、そもそも自慢する相手もおらんしな。
唯一俺の話ができるのはブログとか掲示板だけ。
どっちも身バレ対策はちゃんとしとるし、なんの心配もなく投稿できる!
あげるとしても、憧れの生徒会、風紀委員の情報とか風景写真とかだけなんやけど…
意外とみんな見てくれてるんよな。
……ピロンッ!
「……通知?誰からやろ?」
もしかして、目黒くんとかラウールくん?!///
それとも佐久間先輩たちなんかな?
期待しながらスマホを手に取る。
遊びの予定やったら嬉しいなぁなんて思いながら画面を開く。
「…………え…?」
圭佑……確か、中学でクラスメイトやった……
『向井って、ほんま役立たんよな!w』
「……っ…」
なんで、今さら連絡なんて……
恐る恐る、トーク画面を開いてみる。
圭佑が写真を送信しましたって1文と通知3…
なんやの、急に……
目を開けて、画面を見てみる。
『これ、向井やろ?』
『ずいぶん楽しそうやん』
この2文と、目黒くんとラウールくんと一緒に帰ってる写真…
息が、詰まる感覚がした。
今、ここにいるん…?
いや、夏休みやもん…そりゃ、遊びに来たりはするよな…
てことは、他にも何人かいるんかな….
そもそも、なんで俺に連絡してきたん…?
既読がついたことに向こうが気づいたのか、またメッセージが送られてくる。
『逃げた場所の居心地はさぞいいんやろうな』
『俺らは、お前が逃げたこと許してへんからな?』
「…………」
逃げ、な…
そうやで、ここはすんごい居心地がいい。
あんたらがいる場所と違って、息がしやすいんやで。
中学までは、ずっと関西にいた。
小学校の頃まではすごい楽しかった。
友達と話すことが好きで、先生のことも友達やと思って話してた。
それに、俺は誰かを笑顔にさせるのが大好きやった。
とにかく教室を、みんなを笑顔にしたくて、いつも冗談を言ってみたり、いろんなことに挑戦してみたり…
それで、みんな笑ってくれて…
たとえすべったとしても!何やってるん?笑って優しく笑ってくれた。
みんなみんな、優しかった。
きっと、中学校もみんな優しくて楽しいところやって思ってた。
小学校が同じやった子もいたはずやけど、クラス分けでは俺1人…
「嘘やろ!!?そんなことあるん!?」
昇降口に貼られたクラス分け表の前で絶句する俺を慰めながら、友達は別々のクラスに入ってく。
でも、今まで通りで大丈夫。
クラスが離れたからって友達じゃなくなるわけやないもん。
いつも通りしてたら、きっといつの間にか友達ができてる。
学校っていうのはそういう場所やもん!
そんな希望を持って、俺は教室に足を踏み入れた。
友達作りは自己紹介が肝心。
自分の席でソワソワしながら自分の番を待つ。
みんな、なんとなく楽しそうな人やなって思った。
自己紹介にマイナスな感じを持つ人もおらんし、楽しいクラスやなってのが第一印象。
やっと俺の番!
先生から名前を呼ばれて、俺は元気よく立ち上がる。
「どうも〜!関西の万能調味料こと塩麹よりも向井康二です!これからよろしくな!!」
俺の中の手応えはバッチリで、俺が頭を下げると同時に笑いの空気が広がる。
向井くんって面白いって。
俺の最初の自己紹介のおかげで、そのあとはすぐに人が集まってきた。
俺の自己紹介は、大成功やった。
このクラスは俺とは違う小学校出身の子が多いみたいで、最初からグループとかもできてた。
違う小学校でもすぐに打ち解け会えて、あっという間にクラスは1つになっとった。
俺も、クラスの中心になるような男の子のグループに入れてもらえてすごい楽しかった。
でも、その中に1人だけ、グループでまとまらない女の子がおった。
その子以外の女の子はいつも固まっとるのに…
最初はその子が1人でいるのが好きやと思ってた。
たまに視界に映る時も、自分の机で本読んどるし、1人の時間大事よなって…
でも、その子が1人でおるのは自分の意思やないってことがわかるのは案外早かった。
「あかん!!忘れ物してもうた!!」
家に帰ってから明日の課題を学校に置いてきたのを思い出して、学校に走ってきた放課後。
多分誰もおらんって思った教室。
「……?誰かおるん?」
「……!誰!?」
俺が声をかけると、可愛らしい声が聞こえてきた。
「山村さん…?どうしておるん?」
それは、いつも1人で本を読んでた女の子…山村さんやった。
ゴミ箱のところに立っとるし、ゴミ捨てにでも行くんかな?
そうやったら女の子1人にさせることちゃうやん!
「ゴミ捨てにでも行くん?俺も一緒に着いてこか?」
手助けをするつもりで俺は山村さんに近づく。
「……っ…こっち来ないで!」
「…ぁ、ごめんな。近づかれるのあんまり好きちゃう?」
つい癖で近づこうとしたけど、すぐに断られる。
こういうところはあかんよなぁ…人との距離を大事にしたい人もおるし。
「……何なん?うちの様子でも見に来たん…?」
「え?」
謝ったけど、山村さんはすごい鋭い目つきで俺を睨んでる。
様子を見に来た……?
「あんたもうちのこと笑いに来たんやろ…とっとと帰ってや」
「え?え…?いや、何の話……?」
山村さんがすごい怒っとるように見えるけど、何を言ってるのかが俺にはさっぱりわからんかった。
「これ、あんたたちやろ」
何にもわからずに困惑する俺の目の前に、山村さんはゴミ箱から出したボロボロの本を突きつける。
「……ぇ…?な、んやこれ…」
この分厚い本…確か山村さんがいつも読んでる本やろ…?
何でこんなこと…
「どうせそっちのグループのリーダーの指示やろ?こんなことして何が楽しいん?」
「ま、待ってや!それ、どういうことなん…!?俺、そんなの知らん……!!」
怒りを露わにしながら俺を睨む山村さん。
どういうことなん…ほんまに、、俺は知らんのに…
「可哀想やね、あんなアホみたいなグループの一員になってまうなんて」
「あ、ほ……どういうことなん…?さっきから、何言っとるん……?」
わからない…
山村さんが何に怒ってるのかも、何を言ってるのかも、一体、このクラスで何が起こってるのかも…
「知らんの?このクラスにいる全員がうちのこと嫌いなんよ」
「……え…?」
「うちのことを気に食わん奴が一定数おるんよ。それも小学の頃から、な。その波紋が別の小学出身の子にも伝わって、今じゃみんなうちのこと避けとるんよ」
淡々と事実でだけ伝える山村さん。
そんな……じゃあ、今までずっと1人だったのは……
今まで、クラスの子達が何かを見てクスクス笑ってたのは……
「う……そ…」
「嘘ちゃうよ。何ならうちの傷でも見せたろか?」
俺の必死に否定したい気持ちを、山村さんは正面から砕く。
俺……今まで何を見とったん…?
ずっとこのクラスにいたはずなのに、俺だけ何も知らんかった。
俺は、何も……
「俺……先生に…」
「馬鹿やないの?そんなん意味ないに決まっとるやん」
「でも……きっと大人なら…」
「そんなん一瞬だけやろ?余計にヒートアップさせる無駄な行為」
「……なら、どうしたらええの…?」
「うちに聞くん?そんなん知っとったらもう何とかしとるわ」
「………」
俺に、何かできることはないんかな…
山村さんへの嫌がらせを、止められないんかな…
山村さんと話したことを、俺は一日中考えてた。
本来の目的だった課題のことも忘れて、俺は何とかできないかを考え続けた。
俺が一緒に遊んでる子が主犯なら、俺が言えば止まってくれるんちゃう…?
それに、友達が間違った時に止めるのが本当の友達ってやつやろ?
「……俺が、止めなきゃあかん…」
次の日の昼休み。
「向井!今日は何で遊ぶ?」
「外晴れとるしサッカーせん?」
いつも通り、みんな…圭佑たちが俺に話しかけてくれた。
「……そやね…」
ちらっと山村さんの方を見る。
山村さんは静かに本を読んでた。
昨日見たボロボロになった本とは違うやつ。
教室の隅っこではクスクス笑う女の子たちの声……
俺が、言わなあかん…
「なぁ……その、やめへん…?」
勇気を出して振り絞った声。
いつも以上に小さいはずの声なのに、教室は俺の一言で静まり返った。
教室から出ようとしてた圭佑たちも、クスクス笑ってた女の子たちも、雑談とかで盛り上がってた他の子も、山村さんも……
全員が俺のことを見てる。
今まで、クラスのみんなの視線を浴びる機会はいっぱいあった。
教室の前での発表とかそういうので…
でも、今はその時の空気と全然違う…
「……向井?何言っとるん?笑」
圭佑は何を言ってるかわからないって顔で笑ってる。
でも、その笑顔に異様なほどの圧を感じた。
笑っとるのに、笑ってへん…
でも、ここで言わな…止めなきゃって決めたやん…!
「その、みんなして誰かを無視するとか……嫌がらせとか…」
大丈夫…
昔も何回か友達と意見の食い違いが起こることがあったけど、話し合いで仲直りできたんやもん!!
きっと、話せばわかるはz
「……向井って、ほんまそういうとこあるよな〜」
圭佑の言葉で教室の温度が下がってく感覚がした。
「なぁ、みんなずっと思ってたよなぁ?向井って、“空気読めへん“って」
圭佑の問いかけに“笑い”が広がってく。
…………え…?
何で、みんな笑っとるん……?
問いかけの内容、ちゃんと聞いとった…?
「わかるわ〜w」
「向井ってなんか変よな!w」
「場違いな発言ばっかするしな!!w w」
「………ぇ……え…?」
何で、みんなそんな冷たい目で俺を見るん……?
山村さん………
この空気がすごい怖くて、俺は山村さんの方を見る。
「……ぁ…」
けど、山村さんは女の子たちに囲まれてた。
「山村さん、今まで無視してごめんね?」
「うちら、実はちょっと前から山村さんと話してみたいって思ってん」
「連絡先交換しない?」
綺麗な手のひら返し…
何で……今まで山村さんのこと嫌っとったんちゃうの…?
「………ありがとう」
「…………っ…」
山村さんは、周りの笑顔に合わせてスマホを出す。
楽しそうに、わざとらしく……
そう、よな……
山村さんはずっと苦しんできた。
ようやく、解放されるんやもん。
この絶好の機会を逃すわけにはいかない。
一瞬だけ、山村さんと目が合う。
縋るように見つめてる俺。
山村さんは、冷たい瞳で俺に語りかけてる。
あんたが選んだことやからな、って……
それからは、ただ辛い日々が続いた。
俺をいない存在といて扱うことがあったり、逆に俺の行動を全員が監視したり…
ずっとクラスからの笑いを浴びてた。
それはいつの間にか学年全体に伝わってた。
圭佑は、学年で見ても目立つ男の子やったから…
小学校の頃に仲良かった友達も俺のことを知らんぷり…
もう、学年には俺の味方なんて誰1人もいなかった。
先生にも親にも頼れなかった。
山村さんの余計にヒートアップさせる無駄な行動っていう言葉が、本当な気がしたから…
俺は、あんなに大好きだった笑顔が、笑い声が怖くなった。
誰かを笑顔にするのが大好きだったのに、前に出て注目を浴びるのが怖くて仕方ない…
このままじゃ俺がダメになる。
だから、俺は親に必死に東京の高校に行きたい言った。
一人暮らし頑張るから、絶対迷惑かけへんからって…
それを、みんなが“逃げ“って言って罵った。
俺なんかが東京で生きてけるわけないやろって…
それでも、俺は逃げてきた。
変わるために、俺は東京に来たんよ…
笑い声も注目を浴びるのも怖い。
自分から誰かに話しかけることもできひんし、なるべく目立たない行動をとるようにもしてる。
それでも、俺は変わりたい。
せっかく、目黒くんとラウールくんと仲良くなれたのに…
佐久間先輩、渡辺先輩、深澤先輩と一緒にいれるようになったのに……
『お前が逃げたこと許してへんからな?』
また、こん人たちに怯えなきゃいけないん…?
まだ、あの冷たい視線と笑い声から逃げられへんの…?
コメント
7件
関西でなにかあったとは思ってたけど、まさかここまでだったとは😭😭 善意でやったことなのに訳も分からず簡単に裏切られて、楽しかった場所が一瞬で息苦しい場所に変わるのほんとに辛すぎます。 めめとラウと楽しく過ごしてた時間がこのまま続きますように😭✨
これは…きつい( ´ー`)フゥー...
あぁ… 辛い… やばい、
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