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#NL
瀬名 紫陽花
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――あの日を境に、穂乃果の日常は、琥珀色の熱にじわじわと侵食されていった。
気がつけば、週に何度も『BLACK CAT』の扉を叩き、夜が更ければナオミの部屋のベッドで、あの大きな身体に貪られる日々。
バーに居る時は完璧に美しく凛としたママなのに、二人きりの密室になると、ゾクゾクと鼓膜を震わせるような甘い声で名前を呼び、目が合うと引き合うみたいにキスをする。そこからはもう、なし崩し的に関係を持ってしまっていた。
「アタシが男だって、ちゃんと分かってるくせに……本当に、可愛いわね」
耳元で囁かれる甘いテノールに包まれると、もう堪らなくて、抵抗するなんて考えは頭の中からすっぽりと抜け落ちてしまう。
もとより、彼のキスや愛撫が気持ち良すぎて、最近では自分の方が彼を求めてしまっているのではないか? とすら錯覚してしまう始末だった。
付き合っているわけじゃない。彼がどんな過去を抱え、なぜ『ナオミ』として女装をしているのかも知らない。
また期待して、裏切られて傷つくのが怖いから、「これは大人の割り切った関係なんだ」と自分に言い聞かせているけれど――歩くたびに太ももの付け根に残る微かな痛みが、穂乃果をまぎれもない「女」へと変えていく。
直樹との冷え切った数年間が、嘘のように淫らに上書きされていく快感に、穂乃果はただ溺れていた。