テラーノベル
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「おはよ〜っ♡ 今日のネイル、超ピンクで可愛くない?」
朝の教室。白雪りりあは、お気に入りのフリルブラウスの袖から、キラキラの爪を覗かせて微笑んだ。
周りの女子たちが「さすが、学校一の量産型女子!」とはしゃぐ声を背景に、りりあは内心で満足感に浸る。
ふふん、今日も私は完璧に可愛い♡
──その時、ふと視線を感じて教室の隅に目をやった。
そこには、いつも黒いセーラー服風ワンピを身に纏い、ぱっつんの黒髪ツインテールを揺らしている女の子──夜宵めるがいた。
めるは耳のイヤホンを少し押し込むと、つまらなそうに視線を逸らす。
(……チッ。白雪りりあ、朝からうるさい。あんなフリフリのピンク、私には一生理解できない)
(……あ。あの地雷系女子。いつも黒づくめで怖そう。絶対に私とは住む世界が違うな〜)
お互いにフイッと顔を背ける。
同じクラス。出席番号も割と近い。
だけど、二人の間にある空気は「絶対に、一生関わることなんてない人」という透明な壁で隔てられていた。
──はずだったのに。
「え、なんであんたがここに……!?」
「ちょっと、なんで量産型が私の目の前にいんの……!?」
放課後、親に連れてこられた高級レストランの個室。
そこに並んで座っていたのは、お互いの親と、昼間まで教室の隅にいたはずの「地雷系」と「量産型」だった。
「あら? 2人とも同じクラスだったの? 今日から新しい家族になるお姉ちゃんと妹よ。仲良くなれそうで良かったわ〜!」
笑顔の母親を前に、りりあとめるは同時に立ち上がり、息をぴったり合わせて叫んだ。
「「よくない!!!!」」
◆
「ちょっと待って!親が勝手に用意したこの部屋、何!?ベッドが半分ピンクで、半分真っ黒なんだけど!」
引っ越し初日の夜。二人で使うことになった子供部屋で、りりあは頭を抱えていた。
対するめるは、ベッドの黒い側に自分のドクロのぬいぐるみを並べながら、冷たい視線をりりあに投げかける。
「私のセリフ。量産型の隣で寝るとか、地雷原を踏み抜くより無理。学校では絶対に『姉妹』ってこと秘密にしてよね。話しかけたら呪うから」
「言われなくても話しかけないし!……っ,ていうか」
言い返そうとしたりりあの言葉が、不意に止まった。
目の前にいるめるが、いつの間にかツインテールを解き、黒髪をサラリと肩に流していたからだ。
おまけにメイクも落としたようで、すっぴんの顔は驚くほど幼くて、儚い美少女そのものだった。
(……え。めるちゃん、髪下ろしたらめちゃくちゃ可愛いじゃん……)
「な、なにジーッと見てんのよ、変態。……てか」
めるもまた、お風呂上がりのりりあを凝視したまま耳を赤くしている。
ハーフアップを解いたミルクティーベージュの髪に、うるうるとした素顔。いつもより少し無防備なあざとさが、めるの胸に不覚にも突き刺さる。
(……こいつのすっぴん、あざとすぎてずるい……)
「「……最悪」」
部屋の明かりが消える。
黒とピンク、正反対のパジャマを着た二人の、絶対に秘密の同居生活が幕を開けた。
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