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うめぼっち

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臣桜
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#恋愛
水無月 京
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一応、チャットで会食の件を伝えてみると、しばらくして「了解」と返信が来た。詳細は彼が出社した際に伝えようと思ったけれど、
「今日どこかで話せる?」
と返信が来たので、夜の会食前の15分をもらうことにする。
「この打ち合わせの前に帰宅しなよ」
まさに、少し悩んでいた点を先回りして指示される。時々豆さんには何かのレーダーが付いているのではと馬鹿馬鹿しいことを考えてしまう。
「承知しました、豆さんもお気をつけて」
***
「というわけで、この日が会食ですのでよろしくお願いします」
「結局、弓家さんも参加するわけ」
「はい、あちらの秘書さんも入ってますね」
「へー」
しかもなんかずいぶん変な場所だよなぁ。
Web会議は割と頻繁にしているけれど、今日は珍しく豆さんがカメラオンにしたので、私もそれに倣っている。
ちゃんと帰って来たのね、と開口一番指摘されて「どうしてそれを!?」を驚きを隠さずに言えば、「背景見たらわかるよ…」と苦笑いされた。
確かに。
自宅を間接的に見られていて、何となくくすぐったかったけど、多分そんな変なことを考えているのは私だけだから、と気を引き締める。
一番の要件である会食の件を伝えれば、顎に指を添えて虚空を見つめている。
「なんなんだろな」
「なんなんでしょうね」
「毒でも盛られるのかな」
「スパイ小説じゃないんですから」
「犯人バレバレで何も面白くないな、小説的には」
はは、と笑う彼は少しだけやつれているように見える。
直接会ったのは1週間前ぐらいが最後だったろうか。
「豆さん、お疲れですか」
「え?」
驚いたように画面越しに見つめられて、自分の頬が少しだけ熱くなるのを感じる。よかった、画面越しで。
「俺そんな疲れてそう?」
「なんか少しやつれた気がします。ご飯食べてます?」
「ご存知の通り、連日会食よ」
彼の言う通り、予定だと毎日会食になっていて、店のラインナップを見るだけでも胃もたれがしそうではあるのだ。
「ただまあ、落ち着いて食ってられるわけでもないし。結構会食の後会議入るんでね」
あんまりぼーっと飲み食いしてらんないというか、とぼやく豆さん。
これも、私だって実は気づいている。
翌日出勤して彼のスケジューラーを開けば、夜にいくつもの打ち合わせがねじ込まれている。
基本的に日中の予定は私を通して依頼されるけど、緊急だったり夜ならば敢えて私を通すと時間がかかる。だから、直接当事者同士で調整しているのだろう。
その運用に文句はないんだけど…
「ちょっと働きすぎでは…」
会食は2時間以上かかるのもザラで。
それが終わり、移動して会議なんていったら…一体何時になるのか。
「もうねー弓家さんぐらいよ俺のこと心配してくれるの」
天を仰ぎながら空気を盛大に吐き出す豆さんは、嬉しいんだか悲しいんだかわからないことを言ってくれる。
「俺ももう少し人間的な生き方したいなぁ」
「それは同感ですね。有給とってくださいよ」
「取れたらなあ…苦労しないよなぁ…」
それはそうだ。
有給の予定を確保しても「その日じゃないと困る」という案件が大量に発生するのがこの人なんだから。
「社長選終わればちょっとはマシになると思うんだけど」
「じゃあせめて午後ブロックしてお休みいただけるように調整しましょうか」
「最高」
それ良いね、と言われるから私は容易く調子にのる。
いくつか候補になりそうなところを早速探してみよう、と手元でスケジューラーを引っ張り出してしまうほどには。
「ありがとね」
優しく目を細める彼を直視できなくて、「いえいえ」とよそ見をしながら返すのが精一杯だ。
「あ、そうだ」
そろそろ会食の時間が迫っているし、切り上げようとすれば思い出したように豆さんが声をあげる。
「再来週末が会食だけど、来週と再来週はほとんど毎日オフィスに出勤すると思う」
「そうなんですか、珍しいですね」
「なんかね、プロジェクト燃えてるっぽくて」
しんどー、と再びため息をつく彼は、「だから消火活動しないとね、めんどくせ」と呟く。
「…色々重なりますね」
「ほんと。どこかに誰かの悪意が働いてそって思っちゃうよね」
「そう思いたくなる気持ちもわかります」
豆さん、そろそろ移動されたほうが良いのでは。
このままゆるゆるとおしゃべりしていたかった気持ちも大いにあるけれど、流石に移動しないと間に合わないだろう。
「あーそうね」
「お忙しいところにすみません」
「いえいえ。伊藤との会食の件はまた作戦会議立てよ」
「…作戦会議?」
なんのことだ、と思わず固まれば
「やっぱり鬼退治、しよーぜ」
ニヤリと笑った顔は、この打ち合わせの中で一番生き生きとしていた、気がする。
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