こんにちはミラです。これの前作が私の初投稿作品なのですが、そんなに日は経っていないのになんとも初々しい文体ですね。読み直して驚きました。逆に今の私は何故こうも擦り切れた人間になってしまったのか、甚だ不思議でなりません。
書いていて思ったのですが、エモいって「えもいわれぬ」から来てるのでしょか。もしそうなら上手く略したものですね。
桜シロップ
なんでこんなことになった。と相手の男が独り言ちる声が聞こえる、少し痛む胸は無視して、こっちの台詞だ莫迦。と返す。
薄紅色の空が光の雨をしとしとと降らせ、街が真っ赤に染まっていく。隣を歩く男も例外なく。
ふとその男の顔を一瞥してみると、暮れ方のえもいわれぬ雰囲気がその端正な横顔に似合っていて不思議と頬に熱が集まった。きっと今日が猛暑日なせいだ、と心の中で言い訳じみたことを言ってみる。
掌から零れ落ちてしまいそうな小さな幸せ。
三途の隣を優雅な足取りで歩くのは、灰谷竜胆その人で。
三途はこの時間がずっと続けばいいと、敢えて歩みを遅らせるのだった…
時は数時間前に遡る。
今日三途と竜胆は最近売り上げの伸びているホストクラブの買収するための取引に出向いた。
元々梵天の息がかかったホストクラブだった為、取引もすんなりと終わり三途たちは意気揚々と引き揚げようとしたのだが、三途のお気に入りである笹川という部下がぽつりと零したのだ。
「ここら辺に…滅茶苦茶美味しい幻のかき氷屋がごく稀に出没するんすよ。」
と。三途と竜胆はいつもだったら部下の何気ない呟きなど相手にしないだろう、しかし。今日は取引が早くに終わった為機嫌が良く、更に笹川は常時本当に無口な男であった。なんなら竜胆も、また直属の上司である三途すら笹川の私的な発言を聞くのはこれが初めてだった。
そういえば笹川の出身はここら辺だったか、と竜胆が言った。
きっと、魔が差したのだ。それにきっと、竜胆も、三途も。心の何処かで魔が差してしまうことを望んでいた。
結果竜胆と三途は部下は全員帰らせて二人でその幻のかき氷屋とやらを探すことにしたのだ。
そして案の定、二人して迷子になった。
「いなぇな、かき氷屋。」
「うー、足痛い。」
「竜胆は普段歩かなさすぎ。」
「三途はスクラップで駆け回ってるからいいかもしれないけど俺は繊細なの!」
「おー、お姫様かお前は。お姫様抱っこで街歩いてやってもいいぜ。」
「無理。」
そんな他愛もないことを言いながらぶらぶらと二人街を散策する。
「あ、駄菓子屋。」
「え、マジ?」
「まじまじ、見てアレ。」
そうしていると、三途が駄菓子屋を発見したようだった。
竜胆が三途の視線の先を辿ると、こじんまりとした、けれど幼い頃みた駄菓子屋と変わらない趣を湛えた駄菓子屋がそこにはあった。
突然、ダッと三途が駆け出す。ついに気でも狂ったのかと驚く竜胆だが、三途の生き生きとした横顔を見て自分も駆け出した。
「はぁ、はぁ、はぁ。三途、お前足だけは早いのな…」
「足だけはってなんだ、足だけって。」
「そのまんまの意味。」
「ふざけんな。あ、おばあちゃんきなこ棒っておいてるー?」
「おいてるよぉ、ほれ、そこの奥の三列目…」
「俺もきなこ棒買うわ。」
「竜胆真似しいっこ。千咒みた…」
「ウルセェ、俺もきなこ棒好きなんだよ。」
ふと、あの日から置き去りにしてきてしまった生意気な妹のことが思い出され、柄にもなく目頭が滲んだ。
隣では竜胆が思いの外真剣に陳列棚を覗き込んでいる。
その子供っぽい、可愛いらしい横顔を見て、泣きそうになったことは秘密である。
「ん?ばーちゃんなにこれ。」
早くも竜胆はおばあちゃんのことをばーちゃん呼びである。末っ子末恐ろし。
「あぁ、これねぇ。夏だけたまにやってるんだよ、お前たちも食べてくかい?」
竜胆が指差した先にあったのは、笹川が口にした伝説の桜かき氷の張り紙だった。
っし、寝よう。
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コメント
1件
*〆の言葉をっし、寝よう。 で終わらすの好きですね。 *竜胆と春千夜の会話尊い。兄弟みたいな感じがする *まるさんのストーリーは私の足りない国語力を鍛えてくれますね…そこもまたいい *私すごく千壽✖️春千夜の絡みとか、そういうのがほんと大好きで…‼︎ まるさんが千咒を出してきた所でなんか運命を感じました… *いつもいつも語彙力が無くてすみません…