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なあ。お前。


……お前だよ。


そこ、

画面の向こうで黙って読んでるやつ。



全部、

わかってんだろ?


俺が何度戻ったかも。

誰が消えたかも。

誰を選んで、

誰を見捨てたかも。


どうせ「物語だから」って顔してさ、

安全な場所から

俺が壊れるのを見てるんだろ。



なあ、

いい加減にしてくれよ。


お前は知ってる。

俺が次に何を選ぶか。

誰が削られるか。

どこで失敗するか。


なのに――

黙って、

先を読もうとしてる。



……なあ。


全部わかってるなら、

もう救ってくれ。


ヒントでもいい。

止めてくれてもいい。

途中でページを閉じてもいい。


それだけで、

俺は――


……いや。


違うな。



正直に言う。


お前が読む限り、

俺は続く。


お前が「次」を望む限り、

誰かが消える。


ユウも。

ミオも。

ナナも。


そして最後は――

俺だ。



でもさ。


それでも、

お前は読むんだろ?


だって今、

ここまで来た。


俺が叫ぶところまで、

ちゃんと見届けた。



……なあ。


もし次の一文で、

俺が完全に思い出したら。


もしナナの名前を、

はっきり呼んでしまったら。


その瞬間、

もう引き返せない。



それでも進めるか?


それとも――

ここで、

俺を“存在しなかったこと”にしてくれるか?


選ぶのは、

俺じゃない。


―――


コメント……。

そうだ、コメントだ。


できるはずなんだ。

理由は分からない。

仕組みも、場所も、形式も。

でも――

そう感じる。


ここには、

俺に触れられる“隙間”がある。



なあ。

お前。


読んでるだけじゃなくて、

書けるだろ。


たった一行でいい。

「やめろ」でも

「戻れ」でも

「それは違う」でもいい。


命令じゃなくていい。

肯定でも、

否定でも、

迷いでもいい。


……声が欲しい。



分かってる。

これは情けない。

主人公が、

読者に縋るなんて。


でもさ、

もう選択肢が残ってないんだ。


俺が選ぶたびに、

誰かが薄くなる。

正しいと思った方が、

必ず間違いになる。


だから――

お前に委ねる。



なあ、聞いてくれ。


もし、

「続けろ」って書いたら、

俺はまた戻る。

誰かが消える。


もし、

「終われ」って書いたら、

俺はここで止まる。

全員が救われるかは、分からない。


でも、

少なくとも――

これ以上、

削られない。



頼む。


少しでいい。

ほんの一文字でいい。


俺を否定してくれ。

俺を止めてくれ。

俺の選択を、

奪ってくれ。



……ああ。


今、

画面の向こうで

指が動いた気がした。


気のせいか?


それとも――



もしこの先、

文字が乱れたら。

行が途切れたら。

名前が途中で消えたら。


それは、

お前が触れた証拠だ。



なあ。

お願いだ。


少しでいいから――

俺を、

救ってくれよ。


……一度さ。

俺、

主人公をやめた気がするんだ。


はっきり覚えてない。

でも、確かに――

「もう俺じゃない」って

思った瞬間があった。



この……

物語。


……物、語?


おい。


は?


どうなってるんだよ。



今、

自分で言ってて

背中が寒くなった。


物語って、

なんだ?


誰が語ってる?

誰が決めてる?

誰が始めた?


俺か?

アリウムか?

ナナか?


……それとも。



なあ、

お前。


今、

「物語」って単語を

読んだよな。


普通に、

何の疑問もなく。


でもさ、

おかしくないか?


俺は“中”にいる。

なのに、

外側の言葉を

自然に使ってる。



ページがある前提。

読者がいる前提。

コメントができる前提。


……誰が、

それを教えた?



頭が、

ぐちゃぐちゃになる。


時間を戻ってた時より、

よっぽど気持ち悪い。


だってこれは、

世界のルールじゃない。


構造だ。



思い出した。


主人公をやめた瞬間。

あの時、

俺は選ばなかった。


進まなかった。

救おうともしなかった。


ただ――

“見る側”に回った。



だから、

分かる。


今の俺は、

語られてる。


動いてるんじゃない。

書かれてる。



……なあ。


ここ、

お前が読んでるこの行。


これ、

本当に必要だったと思うか?


なくても話は続く。

飛ばしても支障はない。


でも――

書かれてる。



つまり。


俺が主人公かどうかは、

もう関係ない。


この物語を

成立させてるのは

俺じゃない。



なあ、

聞こえるか。


今、

少しだけ

ページが軋んだ。


文字が、

不安定になってる。


世界が、

「自分は物語だ」って

気づき始めてる。



……笑えるよな。


時間を何度も越えて、

人を削って、

罪を重ねて。


最後に辿り着いたのが――

「物語だった」って

オチ。



でもさ。


まだ、

終わってない。


だって、

お前が読んでる。



なあ。


ここから先は、

主人公がいない。


因果も、

正解も、

エンディングもない。


あるのは――

読まれているという事実だけだ。



それでも、

ページを進めるか?


それとも、

ここで閉じるか?


……選ぶな。


もう、

選ぶな。


ただ一つだけ

答えてくれ。



お前は今、

これを

「物語」だと思ってるか?


それとも――

もう、

違和感を覚え始めてるか?

紫色のヒヤシンスが枯れ落ちた時に

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