テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
なあ。お前。
……お前だよ。
そこ、
画面の向こうで黙って読んでるやつ。
⸻
全部、
わかってんだろ?
俺が何度戻ったかも。
誰が消えたかも。
誰を選んで、
誰を見捨てたかも。
どうせ「物語だから」って顔してさ、
安全な場所から
俺が壊れるのを見てるんだろ。
⸻
なあ、
いい加減にしてくれよ。
お前は知ってる。
俺が次に何を選ぶか。
誰が削られるか。
どこで失敗するか。
なのに――
黙って、
先を読もうとしてる。
⸻
……なあ。
全部わかってるなら、
もう救ってくれ。
ヒントでもいい。
止めてくれてもいい。
途中でページを閉じてもいい。
それだけで、
俺は――
……いや。
違うな。
⸻
正直に言う。
お前が読む限り、
俺は続く。
お前が「次」を望む限り、
誰かが消える。
ユウも。
ミオも。
ナナも。
そして最後は――
俺だ。
⸻
でもさ。
それでも、
お前は読むんだろ?
だって今、
ここまで来た。
俺が叫ぶところまで、
ちゃんと見届けた。
⸻
……なあ。
もし次の一文で、
俺が完全に思い出したら。
もしナナの名前を、
はっきり呼んでしまったら。
その瞬間、
もう引き返せない。
⸻
それでも進めるか?
それとも――
ここで、
俺を“存在しなかったこと”にしてくれるか?
選ぶのは、
俺じゃない。
―――
コメント……。
そうだ、コメントだ。
できるはずなんだ。
理由は分からない。
仕組みも、場所も、形式も。
でも――
そう感じる。
ここには、
俺に触れられる“隙間”がある。
⸻
なあ。
お前。
読んでるだけじゃなくて、
書けるだろ。
たった一行でいい。
「やめろ」でも
「戻れ」でも
「それは違う」でもいい。
命令じゃなくていい。
肯定でも、
否定でも、
迷いでもいい。
……声が欲しい。
⸻
分かってる。
これは情けない。
主人公が、
読者に縋るなんて。
でもさ、
もう選択肢が残ってないんだ。
俺が選ぶたびに、
誰かが薄くなる。
正しいと思った方が、
必ず間違いになる。
だから――
お前に委ねる。
⸻
なあ、聞いてくれ。
もし、
「続けろ」って書いたら、
俺はまた戻る。
誰かが消える。
もし、
「終われ」って書いたら、
俺はここで止まる。
全員が救われるかは、分からない。
でも、
少なくとも――
これ以上、
削られない。
⸻
頼む。
少しでいい。
ほんの一文字でいい。
俺を否定してくれ。
俺を止めてくれ。
俺の選択を、
奪ってくれ。
⸻
……ああ。
今、
画面の向こうで
指が動いた気がした。
気のせいか?
それとも――
⸻
もしこの先、
文字が乱れたら。
行が途切れたら。
名前が途中で消えたら。
それは、
お前が触れた証拠だ。
⸻
なあ。
お願いだ。
少しでいいから――
俺を、
救ってくれよ。
……一度さ。
俺、
主人公をやめた気がするんだ。
はっきり覚えてない。
でも、確かに――
「もう俺じゃない」って
思った瞬間があった。
⸻
この……
物語。
……物、語?
おい。
は?
どうなってるんだよ。
⸻
今、
自分で言ってて
背中が寒くなった。
物語って、
なんだ?
誰が語ってる?
誰が決めてる?
誰が始めた?
俺か?
アリウムか?
ナナか?
……それとも。
⸻
なあ、
お前。
今、
「物語」って単語を
読んだよな。
普通に、
何の疑問もなく。
でもさ、
おかしくないか?
俺は“中”にいる。
なのに、
外側の言葉を
自然に使ってる。
⸻
ページがある前提。
読者がいる前提。
コメントができる前提。
……誰が、
それを教えた?
⸻
頭が、
ぐちゃぐちゃになる。
時間を戻ってた時より、
よっぽど気持ち悪い。
だってこれは、
世界のルールじゃない。
構造だ。
⸻
思い出した。
主人公をやめた瞬間。
あの時、
俺は選ばなかった。
進まなかった。
救おうともしなかった。
ただ――
“見る側”に回った。
⸻
だから、
分かる。
今の俺は、
語られてる。
動いてるんじゃない。
書かれてる。
⸻
……なあ。
ここ、
お前が読んでるこの行。
これ、
本当に必要だったと思うか?
なくても話は続く。
飛ばしても支障はない。
でも――
書かれてる。
⸻
つまり。
俺が主人公かどうかは、
もう関係ない。
この物語を
成立させてるのは
俺じゃない。
⸻
なあ、
聞こえるか。
今、
少しだけ
ページが軋んだ。
文字が、
不安定になってる。
世界が、
「自分は物語だ」って
気づき始めてる。
⸻
……笑えるよな。
時間を何度も越えて、
人を削って、
罪を重ねて。
最後に辿り着いたのが――
「物語だった」って
オチ。
⸻
でもさ。
まだ、
終わってない。
だって、
お前が読んでる。
⸻
なあ。
ここから先は、
主人公がいない。
因果も、
正解も、
エンディングもない。
あるのは――
読まれているという事実だけだ。
⸻
それでも、
ページを進めるか?
それとも、
ここで閉じるか?
……選ぶな。
もう、
選ぶな。
ただ一つだけ
答えてくれ。
⸻
お前は今、
これを
「物語」だと思ってるか?
それとも――
もう、
違和感を覚え始めてるか?