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翌日の放課後
ガララララ
hr「よ ~っす!はるてぃー様登場ッ!!」
ut「なんだそれッ……」
いつものごとく、うたに突っ込まれる。
部室にはまだ誰もいなくて、多分俺たちが一番乗り。
いつものゲーム実況机に一枚の紙がポツンとおいてあるのを見つけた。
俺が、「なんだこれ…?」と思って紙を一枚取る。
hr「はッッ……!?」
俺はその瞬間びっくりして、紙を落としてしまった。
そこに書いてあった内容は、
『退部届』
『ごめんなさい。
とある事情で抜けなくてはならないことになりました。
みんなと一緒にいられて、凄く楽しかったです。
僕は、ずっと孤独でした。
だけど,それをなくしてくれたはるさん、みんなが大好きです。
はるさん、いっつも僕に話しかけてくれて、色々手伝ってくれましたね。
いじりがいがあって凄く楽しかったですw
居場所を作ってくれてありがとうございました。
うたくん、マネージャーお疲れ様です。
みんなのことをまとめられていて、本当に尊敬していました。
これからもこの動物園をまとめていってください。
山田さん、面白いことをたくさん言ってて本当に山田さんなんだなぁって…。
もう面白いことができないのは悲しいですが、
みんなのこと、たくさん笑わせてくださいね。
こむさん、僕は本当にあなたを尊敬していました。
この前も、元気付けてくれてありがとうございました。期待を裏切ってすみません。
また一緒に話しましょうね。
たくぱんさん、ホラーゲームをやらされる時もありましたがたくさん遊んでくれました。
本当に楽しかったです。
願えるならもう一回やりたいなぁ…なんて。
きゅーちゃん、ずっと話してくれてありがとうございました。
歌も綺麗で,僕には到底追いつけません。
たくさん弄らせてくれてありがとうございましたw
そーちゃん、抜群のボケと企画力、本当にすごいと思います。
みんなとたくさん一緒にボケて遊んで楽しんでくださいね。
同級生として、気にかけてくれてありがとうございました。
これからも個性豊かな7人で頑張ってくださいね。
皆さんなら絶対にたまアリ行けます!
さようなら。
ゆーま』
hr「な…、なん、でッッ……」
ut「はるてぃー…?どしたの…?」
hr「ッッ……くっそッ……!!」
俺はつい壁を叩いてしまう。
こんなことになるなんて。
絶対に抜けてほしく無いんだ。
そうじゃないと、俺の夢は叶わない。
一人だって欠けちゃいけないんだ。
なのに俺は止められないで、気づきもしないで。
となりのうたが紙を読む。
読んだきり、「えッッ……?」と困惑したまま黙ってしまった。
hr「どうしてだよッッ…ゆーまッ…」
ut「お、おかしいんじゃないッッ…?だって、昨日までこんなことッッ…!!」
ガラララララ
ym「山田様 ~!!登場 ~!!」
tk「うるせぇな……って、どうした二人とも…」
ym「…あ?」
ut「ね、ねぇッッ…ゆーまって昨日元気だったよねッ…??」
ym「ん、まぁ……こむぎに慰められてからな」
tk「それがどうかしたの?」
ut「…これッッ……」
山田とたくぱんにうたが紙を見せる。
突然のことすぎて、山田とたくぱんも固まってしまった。
どうして、だろう。そう言いたいような瞳で、字を読んでいた。
hr「…どうかしたのか……?」
ut「とにかく、絶対に止めなきゃッッ……
そら、違う部活に入りたいとかだったら…、止めない方が良いかもだけど…」
ym「ゆーまに限ってそれは無いやろな」
tk「家の事情…?とか?」
ym「……なぁ…山田、この際やからはっきり言うわ。」
hr「え…?」
ym「山田、ゆーまの抜けた原因…なんとなくわかる。」
hr「はッッ……!?」
ut「え、ちょ…」
ym「ゆーまの家…、すごい厳しいねん。
テスト全部100点は当たり前やし、将来医者を継ぐことになってる。
…ゆーまは嫌らしいけどな。多分、これも親にバレてのことやと思う。」
tk「まじかよ……」
ゆーまの家の事情…か。
確かにゆーまは頭がいい。A組だし、学校でもイケメン優等生って、話題になってる。
だから、それで男子たちの嫉妬も買うことがあるんだ。
俺が一年の廊下に通りかかった時、少し聞こえた。
『月城ってさぁ ~、俺ちょっと苦手なんだよ』
『あ ~、分かる。』
『自分は優等生です ~みたいなさぁ。腹立つんよね』
『確かにw言えてるわw』
信じられなかった。ゆーまはドアの前にいて、悔しそうに唇を噛み締めていた。
俺は、なにも声をかけてあげられなかった。
ゆーまの居場所を作ったのは俺だ。
一年の話題の優等生が、この部活に入るなんて思いもしなかったからびっくりした。
だけど,8人だからこそやる意味があるんだ。
8人だから、できるってこともある。
なのに,どうして……。
たしかに家の事情だとしたら仕方がない。
でも本当にゆーまは望んでいるのか、それとも、強制なのか……。
ym「……ゆーまの、気持ちはどうなんやろな…」
ut「気持ち?」
ym「おん…。そりゃあさ、抜けたいって思ってるんなら好きにせえって話やけど…。別に強制やったらなぁ…。なんか、落ち着かないというか、納得いかないというか……。」
tk「……屋上にいるかな」
ut「…行く……?」
hr「こむぎは?」
ym「あ、もう屋上いると思うで」
hr「俺らも行こう、早く」
tk「おっけ」
俺らは屋上に急いだ
○○
あんな別れ方は、正しくなかったと思っている。
伝えれるならば、しっかりと言葉で伝えたかった。
字じゃなくて、はっきりと自分の気持ちを言いたかった。
僕は、親に逆らえない。あの紙だって、親に書かされたようなもの。
yu「どうして……。なんでよッッ……」
こむさんが、僕を慰めてくれた屋上。
やっぱり風が心地いいんだ、ここ。
一人でフェンスに寄って景色を見る。
もう、実況部のガヤガヤした雰囲気は見れないのかな。
これからずっと勉強して、遊ぶことなんてできないのかな。
どうしてだろう。涙が出てくる。
勝手な感情で困らせて,僕自身の気持ちもどこかに閉じ込めて…。
迷い込んで。
だって、優等生でいなくちゃいけないんだから…w
みんなのために動ける人にならなくちゃいけないんだ。
…医者になるために、それが必要だから。
僕だって、普通の高校生として高校生活をしたい。
だけど、口から出ないんだ。
どこか静かなところに閉じ込めて、ずっと閉じこもっているまま、出てこない。
ずっと、ずっと、ずっとずっと……。
救われるかも、なんて思うこともあった。
お母さんが,考え直してくれるかもって、思ったこともあった。
救われるのをまつよりかは、救われないって確信した方がずっと楽。
みんなほんとは抱えてるんだ。僕以外の人たちも。
はるさんは、実況時代みんなから愛されなかった。
うたくんは、不憫な自分を愛せなかった。
山田さんは、無理して泣けない時だってある。
たくぱんさんも、無理して笑っている時だってあった。
こむさんだって、家族に愛されていない時期だってあった。
きゅーちゃんも、自分のありのままの姿がわからなくなっていた。
そーちゃんだって、自分になにができるか、必死に考えていた時だってあった。
もう、これ以上関わらない方がいい。
ずっと、僕は孤独でいた方がみんなは救われる。
僕は救われないかもしれない。
ほんとは楽になりたいよ。
だけど、もう絶対無理なことだって決まっているから…。
もう無理なんだよ。
僕には居場所がない。
どこにも、行く場所がない。
ただお母さんの言いなりで、ただ素直にいうこと聞いてるだけで……。
僕は本当に幸せなの?
ちゃんと、楽しんでるって言えるのかな。
あれ?僕はなにが好きだったんだっけ。
僕は、何がしたかったんだろう。
なにがやりたかったんだろう。
わからない。
僕はなにがしたかった…?なにが好きだった…?僕は,どこにいればいいの?
もう疲れた。
ずっと,一人がいい。このまま……、このまま消え去りたい。
誰も、みていないところで。
yu「…え」
後ろから、聞き慣れた声が聞こえる。
後ろを振り向くと,そこには水色髪のジャージ姿。
こむさんだ。
僕は気まずくて、また前を向いてしまった。
僕には、こむさんに合わせる顔なんてない。
昨日、たっくさん慰めてもらったのに、結局全部無駄になって……。
僕が、こむさんの感情を潰してしまった。
だから,喋る価値もおんなじ場所にいる価値もない。
km「お ~、ちょうどよかったわッ!一緒に部室行こやッ!」
yu「……ごめんなさい」
km「え?」
yu「僕,もう部室には行けません」
km「え…?なんで?」
yu「……やめたんです」
km「…は?」
yu「家の事情で、やめたんです」
声が震える。
となりのこむさんが、驚いたように僕を見る。
正直、言いたくない。
このまま仲良しでいて、たまに遊ぶぐらいで終わりたい。
ゲーム実況部は、解散しないでほしい。
リーダーのはるさんを始め、個性のある8人…いや、今は7人か。
そんな楽しい部活に、解散してほしくないんだ。
お願いだから、僕にはもう関わらないでほしい。
yu「お願いですこむさんッッ……僕はもうみんなに合わせる顔なんてないッッ…!!」
km「ゆーまくん、自分の意思で抜けたいん?」
yu「…えッ…」
km「ゆーまくんは、自分で抜けたいって思ったんかなって」
yu「ッッ……そんなわけッ…ないじゃないですかッッ…!」
km「……やったら、今の自分の意思を貫き通さんと」
無理です。僕には……。
そう口に出してしまいそうだった。
こむさんだって、僕のことを信じて、沢山の慰めをもらったのにこんな返答で…
本当にいいの?
僕、どこかで迷っているんじゃ……?
居場所を探し出さしていないんじゃないのか?
…僕,これから何をしたらいいんだろう。
勉強?本を読む?みんなの手伝い?
…僕がやりたいことって、なんだったっけ。
みんなと遊びたかったのかな。
ただ、話したかっただけなのかな。
役に立ちたかっただけなのかな。
居場所を見つけ出したかっただけなのかな。
みんなに迷惑を掛けるのは大嫌い。
心配させるのも大嫌い。
僕の勝手な理由で人を困らせるのも、大嫌い。
だから……。
km「え…?」
yu「僕なんて最低な人間、居場所がないんです」
km「……」
yu「家にいても勉強、学校にいても勉強、僕はどこにもいちゃいけないんです。
それだけでみんなに迷惑かけて,部活の仲間に迷惑かけて、僕には居場所なんてないんですよ」
km「…そうなんやね。でもな、ゆーまくん」
yu「え……?」
km「どこに居てもええし、どこに行ってもええ。
なんなら、どこに行かなくてもええねん。ゆーまくんが,そう願うんなら」
yu「…なんでッッ……」
km「俺はな、ゆーまくんがゆーまくんの気持ちを大事にできたらええなって、ずっと思っとる。
周りがどうこう言ったって…,一番大事なんはゆーまくんの気持ちなんやで。
だから、俺はゆーまくんの気持ちを聞きたいなって」
僕、僕の気持ち……?
僕は何を思っていた?
みんなと離れたくないって言う願い?
お母さんからのプレッシャーの不安?
…違う。なんの返答もできない僕は…
yu「こわいんだ………」
そっか、僕、すごく怖かったのか。
みんなに信じてもらえるか、信じてもらえたところで仲間に入れてもらえるか。
このまま、みんなと何も言わずに離れていってしまうんじゃないか。
どうしてだろう、何で今更気がついたんだろう。
そりゃ家のルールだって、泣きたくなるようなものがいっぱいあったよ。
だけど、なんで相談しなかった…?
一人で抱え込んでいた?
手の袖をぎゅっと握ってしまう。
km「そうやな、怖いよな。
ゆーまくんはこれまで自分の大切にしてることをわかってもらえないことがいっぱいあったもんな。
これ以上傷つくのは怖いよな」
yu「ッッ………」
km「せやけど、そう言う時のために仲間がおるんやで」
yu「ぇ…」
km「仲間ってな、ほら、部活仲間 ~とか、クラスの仲間 ~とかおるわけやろ?
こんだけ周りにおるんやからさ、抱え込まないで相談したほうがええと思わん?」
yu「…でも、きついんですよ…w」
km「……」
yu「変なのって拒絶されるのも、一緒にいられたらいいなって思う人が離れていくのも…」
km「…ゆーまくんは、楽しくなかったん?」
yu「__そうですね、楽しかったですよ。
自分の考えてることとか感じてることとかを話して、それを分かってもらえて……すごく居心地が良かったんです。
でも…本当にそこにいていいのか,わからないんです。なんでか分からないけど…」
km「…あんな、…実は俺,言っちゃあかんかもしれんけど
ゆーまくんが悩んでるのちょっと嬉しいねん」
yu「え…?」
km「ゆーまくん、少し前まで、ずっと諦めた顔になってもうてたから」
yu「…!」
km「もう全部、なんでもええ、どうにでもなれって投げ出してた。
でも、今は違うやろ?ちゃんと悩んでる」
yu「ッッ……」
km「ゆーまくんの好きにしてええんやで、絶対みんなはわかってくれる。
だって、こんなに賢いゆーまくんなんやし!
だから、行きたい場所に、居心地のええ場所に行ってええんやで。
いろんな人に言われるかもしれへん。やけど、忘れんといて。
yu「ッッ……!!」
もしかしたら,また駄目かもしれない。
無駄かもしれない。
居場所がなくなるかもしれない。
やっぱり全部どうでも良くなって、消えたほうがいいって思うかもしれない。
でも、僕には仲間がいる。
寄り添ってくれる、優しい人たちがいる。
だから、せめて、どうでも良くなくなるまでは
km「あぁ…なんやこれ、恥ずいわ…」
yu「ありがとうございます、こむさん」
km「…!」
yu「僕,もうちょっと頑張ってみます」
km「おん、頑張れよ」
ガチャッ
hr「ゆーま!!」
yu「あッッ……」
ym「こむぎ、」
km「大丈夫やで、またみんなで頑張るって!」
hr「マジッッ…?あぁもう良かったぁッッ…!!」
yu「ほんとごめんなさい…」
ym「まぁ、結果オーライやろ」
ut「まじびっくりさせんな……」
tk「…みんな心配してたんだよ」
みんな、ずっと心配してくれていた。
僕の居場所は、ここだ。
有能なんて言葉には、もうとらわれない。
end