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せ と の コ ン テ ス ト

/ ド ラ マ 部 門


Mint’s contest

/ 一 次 創 作 部 門


上 記 参 加 作 品

















































此れは、


と或る遠くの王國の

と或る王族の令嬢が

と或る律儀な執事に


恋をする物語。


其れは果たして純愛か、

将又、不純愛か。















































此処から遥か西に在ると或る王國に代々続く王族が在ったそうで、其処に其れはもう誰もが目を奪われてしまう様な美しい少女が居た。

18歳にして國の人々に好かれる少女で在る。


陽の光が当たる度に艷めく金色の髪。

伏せられた長く 色素が薄い睫毛と同じ色の大きな瞳。

潤いが保たれた淡い桃色に林檎の様な赤みを帯びた色が塗られた唇。


彼女に釣り合う婚約相手などう居ない。

無論、其れは ‘ 身内を含めず ’ の話。


「 セシル嬢、御早う御座います。 」


今日も律儀に敬語を使う5つ歳上の執事。

黒いスーツに身を包み短めの髪が綺麗にセットされた清潔感の有る若者。

誰よりも令嬢に見合うであろう男性は執事で在った。


「 御早う、レオン 」


立場を考えて執事には敬語を使わない様に言われた令嬢は何処かぎこち無い口調で砕けた喋り方をする。


「 えーっと … 今日は何処か行かない?

デート、みたいな! 」


「 良いですね。 ですが御嬢様、

デートなんて私とは出来ませんよ? 」


心苦しい乍にルールを守り釘を刺す執事。

代々続く王族だ。

家に伝わり続ける堅苦しいルール許ある。

仕方が無い事。

そう弁えてはいるものの、

令嬢は何時も考えてしまう。


若し此の家の娘では無かったのなら、

貴方執事を婚約相手に出来たのでしょうか


なんて。

考えても意味の無い事。


「 そうね、笑

じゃあ、御出掛けって事で!ねっ? 」


「 仕方が無いですね 」


困った様に笑って、

今日も左手を差し出してくれる。


幼い頃に他界した母。

13歳の頃に他界した 執事。

此の2人に代わり5年間、私は彼に面倒を見て貰っていた。

どんな事が有ろうとも一緒に居た。

僅か5年。 然れど5年。

何時の間にか差し出される貴方の掌に触れる度、左胸がチクリと小さく細い針で刺された様に痛んだ。



*ねえ貴方は 何故なにゆえ、*

私と居るのですか。



そんな問いを投げ掛けたら貴方は些か驚いた様に瞳を大きくして優しく微笑む様に笑って

そして、当然の様に言うのでしょう。


‘ 御嬢様の執事だからですよ ’ と。


何て残酷な返事をするのかと泣き出す私か

涙を魅せぬ様に淋しそうに笑う私か

何方にせよ貴方は私 の恋心なんて踏み躙るしか無い。

そういう運命だと神に告げられたも同然。


「 御嬢様、

今日は何時もに増して可愛らしいですね 」


「 レオンは昔から褒め上手よね笑 」


貴方の為にほんの少し背伸びをしてみても、 昔から変わらない本心か否か判断も付かない 表情で褒めるのだから返事に迷ってしまう。


「 そう言えばセシル嬢。

先日ラファエル様が婚約相手の事で隣國の王子はどうかと言っておられましたよ。

容姿も中々良いらしくラファエル様はセシル嬢さえ良ければ早々に式を挙げたいと。 」


‘ ラファエル ’

久しぶりに聴く名前に眉間に皺が寄り掛けた。

其れも、婚約相手の話。

嬉しい所か気分は最悪だった。

其れでも彼の目の前で表情を崩す訳にもいかなくてやるせない気持ちだけが渦巻く。


「 そう、ラファエル御父様が … 」


「 どうかされました? 」


「 …  レオンは婚約相手とか居ないの? 」


口が滑ってしまった。

聴いてしまった。

5年間もの年月、  國の人々にも使用人にも御父様にも当然貴方にも

誰に打ち明ける事も無く隠してきた想いが溢れるのも時間の問題で鼓動は早まる許だった。


「 私は想い人は居ますが振り向いて貰える所か私には釣り合わないのです。

其れに、其の方とは事情があって御付き合い出来ませんので生涯独り身ですよ、笑 」


 其 の 人 は 誰 な の ?

 ね え 期 待 し て い て も 良 い の ?

 貴 方 の 想 い 人 に 成 ら せ て よ 。


「 私が結婚したらレオンは独りになるの? 」


「 御心配無く。

私は生涯セシル嬢の執事ですので傍で御支え致します。 」


嗚呼、貴方って人は狡い。

此の儘だと溢れてしまう。

全て、溢れてしまうでしょう?


「 レオン、婚約相手の話は断って。 」


「 … ‘ やはり ’ 他に想い人が? 」


そうね。

貴方が察していた事くらい知っていた。

5年もの年月を共に生きていたのに何も気付かない程に鈍感な執事じゃ無い。

全て、御互い解っていた。

そうでしょう?レオン。


「 想い人 … そうね、愛してるの。

レオンっていう独りの執事を。  」


「 セシル嬢 …

貴女の想いを踏み躙る様で申し訳御座いませんが、御嬢様は我が國の大切な令嬢です。

どうか、隣國の王子と御結婚して下さい。 」


「 本当、素晴らしい執事ね、笑 」


神の言う通りに私の気持ちを踏み躙るのね。

執事で在る事を確認する様に差し出された手を取る。

此れ丈の行為がこんなにも辛く苦しい。

其れはどうしようも無く貴方が好きだからだという理由しか考えられなくて彼の手を握る力が強まる許。











「 セシル、婚約相手の話はレオンから聴いたか? 」


王宮に戻ればラファエルが待っていた。

表情から滲み出る ‘ 勿論YESだろうな ’ という身勝手な期待と圧。

呆れて密かに溜息を吐いた。


「 御父様 … 大体は理解しています、 」


「 返事はどうするつもりだ 」


「 あの … 御言葉ですが … 『 彼は相当な男だ、セシルは他に想い人も居ないだろう?婚約相手に相応しい、どうだ?結婚してみないか? 』 」


一度に捲し立てられた言葉達に寄って、

僅かな期待と断れそうな雰囲気は音を立てて壊れた。

壊された。


「 そう、ですね、笑 」


「 よし、決まったな。

おい今直ぐ式の準備に取り掛かってくれ。

隣國の方々を饗す準備もな。 」


使用人が一礼するのを見つめては既に手遅れだと知らされる。


僅かな願いも届かないのね。

何時まで経っても

臆病に恋をするからこうなるのよ、レオン。











艶やかな生地でふんわりしたシルエットに仕上げられた純白のドレスを眺める。

こんな晴れ姿は貴方に魅せたかった。


「 では、誓いのキスを。 」


聴いていた通り中々の容姿をしている眼の前の王子。

レオンには劣るが其処らの人より釣り合う。

互いの唇が近付く。

私の初めては貴方では無く此の男だという屈辱にどうにも居た堪れない気持ちになる。

逃げてしまいたくなる。




さ  よ  う  な  ら  、  レ  オ  ン  。




王子の唇が触れる事は無かった。

瞼を開けた先に私の手で拒絶された彼が困惑した表情で座り込んでいた。

チャペルに居た誰もが動揺し、騒めいた。


「 セシル!何をしているんだ! 」


ラファエルが客の目も気にせず自分の名誉の為に怒り叫ぶ声も耳に入れなかった。


「 …… 御免なさい、  」


誰にも聴こえない。

否、眼の前の彼には聴こえていただろうか。

其れ程に小さく涙ぐんだ声で謝った。

純白のドレスの裾を持って走り去る。

そんな映画のワンシーンの様な場面で本物の王子は現れるもの。

ドアノブに手を掛ける。



刹那、貴方執事がそっと手首を掴んだ。



其れも簡単に振り解ける弱々しい力量で。


「 レオン … 」


何度呼んだか分からない名前をもう1度呼ぶ。

其れに応えるように片膝を着き頭を下げた 。


「 遅れてしまい申し訳御座いません、

セシル嬢。 」


「 どういう事だ、レオン君 」


彼は不機嫌なラファエルに一礼して

静かに口を開いた。


わたくしレオンは

セシル嬢と結婚致します。 」


再度、周りの人々は騒めいた。


「 何を言っているんだ?

其の子は私の娘だ、彼と結婚させる。 」


「 御言葉ですが其の娘さんの御要望です。

ラファエル様の名誉の為に御嬢様の気持ちを踏み躙るのは御遠慮頂きたく存じます。 」


臆病な私達は

強い口調で父に当たって、

砕ける未来をも恐れずに、

唯、愛を誓いたい。



唯、不純に愛したい。



「 … 処分されてもか? 」


「 此の國を追い出されたとしても

彼女と生きる所存です。 」


王子は心底驚いていた。

自分のプライドに傷が付いても尚、

私達を唯、傍観して。


そんな彼の目の前までもう一度歩み寄った。


「 どうか他の國の令嬢を愛して下さい。 」


執事がそうした様に左手を差し伸べた。

手を取る彼は少し悲しそうな笑みを魅せた。


「 セシル嬢

私は生涯、貴女を想い続けます。

柄にも無く一目惚れしてしまったのです笑 」


こういう純粋な人を裏切るのが愛で

執事と令嬢の恋なんて実らないのが普通で

此れは誰も予想だにして居なかった様な

不純愛の物語なんだと、

そう思い知らされる瞳だった。


「 御父様、

どうかレオンへの処分はお辞め下さい。   」


此の人に頭を下げる日が来るなんて思いもしなかった。


嫌いだった。

母が死んでも哀しそうな顔ひとつせず、

レオンに対する態度も暖かいものでは無く、

國と自分の名誉の事しか考えていない様な、

物言いも態度も面持ちも嫌いだった。


「 セシル、私は國も自分の名誉も考えない娘の事しか興味が無い駄目な王様だ。

バチが当たったな。

娘に頭を下げさせてしまった。  」


昔から誰かひとりでも不幸になる物語が

どうにも好きになれなかった。

何れ丈悪役だったとしても此の人は一度の過ちで生涯不幸になってしまうのか、と心底悲しくなった。

プリンセス許が幸せになる物語なんて良くないと、そう思っていた。


其れ故でしょうか。


貴方御父様の申し訳無さそうな顔を見ると嫌いになれない。

眉を下げて微笑む王子を見ると何度も謝りたくなる。

手を差し伸べる執事を見ると愛してしまった事への後悔が溢れ出る。


「 セシルが愛する人と結婚しなさい。 」


一時ひととき騒然としたチャペルで

ラファエルは唯、そう言った。

そんな優しい表情をすると思わなくて今にも泣き崩れそうだった。



誰に何と言われようと貴方を愛してる



不純にも程が有る。


純粋

純愛

至純

無垢

誠実


プラトニック


そんなものとは掛け離れた恋愛で、其処らの人が分かち合う様な純然たる愛など無い。


「 … レオン、愛してる 」


「 私もです、セシル嬢 」


純白のドレスを身に纏い、

誰が見ても不純愛だと言う様な口付けを。





















Je t’aime à la folieジュ テーム ア ラ フォリ


 狂 お し い 程 に 愛 し て る 。











依 依 恋 恋いいれんれん

恋 慕 う 余 り 離 れ る に 忍 び な い 様 。
































依 依 恋 恋

狂 お し い 程 に 愛 し て る


𝐹𝑖𝑛.





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コメント

43

ユーザー

サムネと言い、題名と言い、内容と言い、舞台と言いどれも全てがりんちゃんらしくて大好きです。りんちゃんらしさが溢れてる作品がほんとに大好きで、不純愛で普通は良くない恋愛であるお嬢様と執事の恋愛、それを舞台にしたフランスよく考えられたなと思う程に到底真似できません。

ユーザー

出先でこのストーリー見ててすぐコメントしたかったけど、これは家に帰ってじっくり考えた方が良いと思って辞めた笑 この世界の一般的には(?)不純愛かもしれないけど、私は物凄く純愛だと思いました‪🫶🏻‪ もう入りから神なの分かりきってた、フランスが舞台とかオシャレすぎない🤦🏻‍♀️💞 斜め文字と小さい文字でセシル嬢の本音書かれてるの好きっっ

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