テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
大晴をおさえつけた瞬間、カッターの刃が俺の手の平にズブッと刺さった《……っ。》
焼けるような痛みが走る。
血がじわりと溢れてきても、手を離すわけにはいかない。
“ここで離したら、誰かが殺される。”
その思いだけで、俺は必死に腕へ力を込めた。
{離せ……っ!!離せ言うてんねん!!如月ちゃんは俺のや!!俺の邪魔する奴らは全員死んじゃえっ!!}
大晴の叫びはもう“人”のそれじゃなかった。
怒り、執着、孤独、全部ぐちゃぐちゃになって、壊れたように吠えている。
《……大晴、やめろ!落ち着けや!!》
だが、言葉なんて届くはずもない。
大晴は狂ったように暴れ、刃を奪い返そうともがく。
視界が熱で揺れて、手が震える。
俺の血が床に落ちていくのが分かる。
それなのに……
“ここで止めな、誰かが死ぬ。”
その一心だけで、俺は叫んだ。
そして……
バチィンッ!!!
思い切り、大晴の頬を叩いた。
部屋中に響き渡る乾いた音。
大晴の動きが、一瞬止まる。
《お前、ええ加減にせぇや!!自分のものにしたかったら、大切な人でも傷つけるんか!?》
大晴は荒れた呼吸で俺を睨みつけた。
{……俺は、ただ……如月ちゃんが欲しいだけや。こいつらが邪魔すんねん……!如月ちゃんだって、こいつらばっかり見て……俺のことなんて、全然見てくれへん……}
その声は、怒りよりも“悲しさ”が滲んでいた。
けれど……
《それは“お前の勘違い”や。》
大晴の目が揺れる。
《如月ちゃんは、ちゃんとお前のことも見てた。ただお前が勝手に嫉妬して、全部歪んで見えてただけや。好かれへんと思い込んで……自分から壊れにいってどうすんねん。》
{……黙れ……うるさい……!}
《お前が悩んでること、俺……本当は気づいてたんや。でも、どう声かけてええか分からんくて……見て見ぬふりしてた。……ごめんな、大晴。》
大晴の指先が震えた。
《けどな。“見てくれへんから”って……傷つけてええ理由にはならへんやろ……?好きな人ほど、傷つけたらあかんねん……》
そう言って、俺はぎゅっと大晴を抱きしめた。
暴れるかと思った……
でも違った。
ぐしゃ……っと、大晴の体から力が抜けた。
{……ぁ……ああ……っ……なんで……なんで俺……こんなこと……ごめん……ごめんなさい……っ……!!}
大晴は、俺の胸に顔を埋めて大泣きした。
俺の手の痛みも、血のことも、もうどうでもよかった。
今はただ……
仲間が壊れてしまわないように、抱きしめてやるしかなかった。