ぼくは会場に向かったが、小さな存在であるぼくはスケルトンに追いつけない。
黒い影を引きずるように、会場へ戻ろうとしたそのときだった。
がさっ
近くに何かがいるらしい、動物か?
ぼくは音が鳴った方に顔を向けた。すると、
「うわあああああっ!」
甲高い声が森の中に響き渡った。
何だ、この生き物は?
白い服に身を包んだ小さな生き物がぼくを見て、腰を抜かして驚いている。
ぼくの中で強い不可思議な衝動が湧き上がった。
なんだ、これは??
ぼくは自分の中の衝動を抑えながら、小さな生き物に近づいた。
「ひいっ」
小さな生き物から悲鳴が上がった。
その様子を見て、スケルトンの話を思い出した。
目がふたつ揃って、口がある。
頭から髪が生えているし、よく見るとスケルトンの骨格に似ているような気がする。
もしかしたら、あれが鼻というものか?
スケルトンの言うとおり、骨に肉をつけたら、こんな風になるのだろうか。
ぼくは小さな生き物を観察しながらも、内心動揺を隠せていなかったのだろう。
黒い影を纏いながら、自然と化けるを繰り返していたらしい。
よく見るスケルトンの姿になって、
次には大っ嫌いの獣のモンスターになって、
その次には、小人族になって、
姿をコロコロと変えているぼくが怖かったのか、小さな生き物は体をふるふると震わせ、表情は怯えに満ちていた。
小さな生き物のふたつ揃った目玉から、ぽろぽろと涙がこぼれだした。
ぼくはこの感覚を知らない。
初めて味わう感覚にどうしていいか分からず、不思議な感覚を持て余していた。
「こ、来ないで!! モ、モンスター……」
次第に声が尻すぼみになっていく。
頑張って威勢をはったはいいが、やはり怖かったらしい。
ぼくは動揺する心を落ち着かせて、小さな生き物に尋ねた。
「お前、人間か?」
すると、小さな生き物はびくっと体を震わせ、泣き止んでこちらを見た。
「そうだけど、やっぱり君はモンスターなの?」
小さな生き物がびくびくした様子で、ぼくに尋ねてきた。
これがぼくと小さな生き物との初めての遭遇だった。
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