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「お前は人間か、月から戻ってきたのか?」
ぼくがそう尋ねると、小さな生き物もとい人間は戸惑った声でこう言った。
「人類のふるさと、地球へ帰ろうって大人達が言ったんだ。でも、宇宙船が故障して、最後のひとつの脱出ポットにぼくだけ乗せられたんだ」
まだ人間の体の震えが止まらない。
ぼくは人間を落ち着かせようと、人間と同じ姿に化けるした。
自分と似たような姿になったぼくを見て、人間は助けを求めるかのように早口で話し始めた。
「先に脱出ポットに乗った人たちは、別の場所に落ちたみたい」
何を言っているのかよく分からないが、どうやら他の人間達とこの地へ帰ってきたのだが、はぐれてしまったらしい。
「ねえ、ぼくはどうすればいいの?」
そんなこと、ぼくに聞かないでほしい。
何故、人間にこんなことを聞かれないといけないのか?
ぼくはそんなにも怖くない存在か……。
そのとき、
『ト、……。トウ、リ』
人間の右腕から声が聞こえてきた。
「その声、ディーン?! どこにいるの」
『トウリ、よかった。無事みたいだね。我々も無事だ、宇宙船が故障してしまったけどね』
「どうしたらいいの。ぼくひとりぼっちなんだ」
『すまない、我々がトウリのいるポイントまで向かうのに三日はかかる。三日間なんとか生き延びてくれ』
「そんな?!」
『大丈夫、脱出ポットに非常用の食料や日用品は揃っているから、一週間は持つはずだ』
『ああ、バッテリーが切れそうだ。すまない、トウリ。絶対になんとかするから。大丈夫、お前は強い子だから、きっと乗りきれる』
「本当に迎えに来てくれる?」
『約束する。大丈夫、必ず迎えに行くから』
そう言って、人間の腕から発せられた声は聞こえなくなった。
目の前にいる人間はどうやら未成熟な存在らしい。
【なり損ない】のモンスターであるぼくと少し似ている。
「うああああああんん」
人間は、その場にうずくまり大声で泣き始めた。
ぼくは慣れない姿に化けるした人間の手を、ポンと小さな人間の頭に置いて撫でた。
すると人間は、ぼくにしがみついてきた。
不安だったらしい。泣き声が一層大きくなる。
確かにぼくもこの人間と同じ立場だったら、不安に感じるだろう。
仕方ない、この人間の面倒を見てやるか。
それに……、
この人間といたら、この感覚が何か分かるかもしれない。