『星の英雄 ゲズとリオン』
第5章:星の涙、そして少女セレナ
リオンが息を引き取ってから、ゲズは何も口にせず、何も語らず、ただ――歩いた。
焼け焦げた空。灰色の風。静まり返った地球の大地。
雷の力は胸の中で揺れていたが、使う意味も、使う意志も、もう残っていなかった。
「俺は……なにも守れなかったんだ……」
何度も、リオンの声を夢で聞いた。
彼の剣を背負ったまま、どこへ行けばいいのか分からず、さまよった。
そんなとき、空から光の粒が降ってきた。
耳の奥で――リオンの声が響く。
「セレナを……守ってやってくれ。彼女が……星の鍵だ……」
そして次の瞬間、雷の紋章が光を放ち、ゲズの視界に“星図”が浮かび上がった。
そこには、銀河の彼方にひときわ強く輝く星――レファリエの名が刻まれていた。
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一週間後。
ゲズは、リオンの遺した隠された転送装置を使い、ついに“レファリエ”に降り立つ。
そこは、地球とはまるで違う、美しくも奇妙な惑星だった。
空は紫に染まり、森は発光し、建物はすべて有機的に呼吸していた。
「これが……リオンの妹がいる星……」
彼は村の奥深くで、一人の少女と出会う。
淡い銀髪、蒼い瞳。透き通るような声で、少女は言った。
「あなたが……ゲズ?」
「え……どうして、俺の名前を……」
少女は微笑んだ。
「兄から聞いていたの。“雷の継承者が来る”って。
私はセレナ。あなたに……助けてほしい」
そう言った彼女の背中には、リオンと同じ“星の紋章”が光っていた――ただし、それは“水”の紋章。
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その夜。
ゲズとセレナは小さな焚き火を囲みながら、静かに語り合った。
「リオンは……お前のことを最後まで守ろうとしてた。お前が、何より大事だって」
セレナは少しだけ涙をこぼし、そしてまっすぐゲズを見つめた。
「私は……“扉の鍵”なんだって。星々の封印を開ける力を持ってる。
でも、その力を狙ってる者がいる。兄は、“そいつ”と戦ってた」
ゲズの心が、雷のように震えた。
「ルシフェル……だな」
セレナは、小さくうなずいた。
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そして、物語は再び動き出す。
ゲズは剣を握り直した。雷が、少しずつ戻ってくる。
「もう一度だけ信じてみるよ。リオンが、俺を選んだ理由を」
空には、新たな星が現れていた。
その名も知らぬ“終焉の星”――ルシフェルの影が、少しずつ、近づいていた。
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