「斎藤!何回言ったらわかるんだ!!」
上司の怒号がオフィス内に響き渡る。
「大変、申し訳ございませんでした。」
あぁ 、まただ。
俺の名前は、斎藤奏人。
どこにでも居そうな社会人だ。
「先輩、大丈夫ですか?目の下のクマヤバいですよ?ちゃんと寝てます?!」
「大丈夫だ、鈴木。」
鈴木想太、こんな俺を慕ってくれる後輩だ。
「それにしてもあのクソジジイ最低ですよ!先輩悪くないのに!」
想太は、数少ない俺の理解者でもある。
「先輩!!なんで怒らないんですか!!こんなんじゃもっとアイツに舐められますよ?!」
「怒っていたって意味がないんだよ、それに俺が怒らなくても代わりに想太が怒ってくれてるからそれだけで十分だよ。」
「先輩!お人好しすぎますって!!ほら、今日仕事終わったら飲みに行きましょうよ!!」
「わかったよ…今日だけだらかな?」
「はい!あ、ちなみに俺、念願の彼女できたんスよ!!」
「おー、おめでとさん。」
「ありがとうございます!そういえば先輩、彼女作らないんスか?」
「あのなー、俺はもう想太みたく若くないから、こんなオッサン誰が好きになるんだ。」
「そッスかー、なんかすいません…あ、上司の愚痴言った後で俺の惚気け話聞いてください!」
「ハイハイ。」
平和だなー、奏人はそう思い何気に夜空を見上げた。
その日は綺麗な満月の日だった。
ずっとそんな生活が続いてくれればよかった。
まさか、想太と飲みに行って自宅に着いたら空き巣に入られててナイフで刺されて殺されるなんて…
その時は夢にも思ってなかった。






