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「おはよー」
普段通り、明るめの声で挨拶をする。
すると、先に来ていた4人のメンバーは次々と挨拶を返す。
だが北斗からだけ、返事がなかった。
よく見ると目頭を抑えている。
体調が良くないのかもしれない。
だが、俺は声をかけず、側にあったソファーに腰掛けた。
特に理由もなくスマホをいじっていると、樹が部屋へ入ってきた。
『おはよ』
いつも通りではあるが、樹のぶっきらぼうな挨拶に安心する。
甘い言葉をかけてくれるのは、俺だけなんだって…
少し頬が緩んでいると、不意に立ち上がった北斗が体勢を崩した。
樹は荷物も下ろさずにすぐ駆け寄る。
『北斗⁈どうした?体調悪い?』
北斗は、しんどそうに頭を抑えながら貧血気味と言った。
薬を求めた北斗に樹はすぐ薬を渡し、自分のペットボトルを差し出す。
間接キス…以前は全く気にしていなかったことが今は俺の心を締め付ける。
樹は北斗を椅子に座らせて、背中をさすっている。
『今日の撮影無理そう?』
そう樹が北斗へ問いかけると、北斗は心配いらないと言った。
『無理すんなよ!』
樹は北斗に喝を入れるようにして背中をポンと叩き、微笑んだ。
微笑んだ…なんで、俺以外にそんな顔見せるんだよ。
樹は、俺だけのものなはずなのに…
俺はドアを勢いよく開けて部屋を飛び出した。
「はぁっはぁ…樹…」
俺の目に涙が溜まってくる。
部屋を飛び出してトイレに駆け込んだはいいものの、気分はどんどん沈んでゆく。
トイレの鏡を見つめていると、目に涙を溜めている自分の姿がとても惨めに思えた。
「樹がいなくなったら無理なんだよ… 」
そう鏡にぶつけると、一筋の涙が流れた。
すると遠くの方から急いでいるような足音が聞こえた。
こっちへ向かっているようだった。
『ジェシー!』
トイレに入ってきたのは、樹だった。
『どうした?気分悪い?てか…泣いてんの?』
俺は涙を止めようとしたが、樹の姿を見て余計に涙が溢れる。
「樹が…北斗に優しくするから…」
『ごめん…ジェシーが嫌だって思うことわかってたのに…でも北斗の体調も大事なんだよ。』
「樹は俺のこと好きじゃないの⁈」
『好きだよ。大好きだよ。』
そう言って樹は俺を抱きしめた。
「分かってる。北斗がしんどいのは分かってるし、心配もしてるけど、樹が…」
『ごめんね。だから泣かないで。ジェシーが泣いてたら俺も悲しい。』
その後の撮影は、ほとんど記憶がない。
他のメンバーにはとても心配された。
ジェシーがボケない。発言しない。ボーッとしてる。
ジェシーじゃないみたい。そう言われた。
そりゃそうだよ。
恋愛は、人を変えるんだよ…
コメント
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いやもう最高です死にます続きください_(┐「ε:)_