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 聖壱さんから頼まれた事は……いつもと変わらない毎日を送ってほしいという事と、空いた時間は外に出て一人で行動して欲しいという事だった。

 今までは聖壱さんと取ることが多かった昼食も、テナント内のお店や少し離れた場所にある喫茶店などで過ごしていた。

 私が一人になればすぐに相手も近づいて来るかと思ったけれど、向こうも慎重なのかなかなかそれらしき人物が見つからない。

 月菜さんに何かあったともまだ聞いてないけれど……

 そう思いながら食後のコーヒーを飲んでいると、隣の席に落ち着いた感じの年配の男性が座った。喫茶店の中にはまだいくつも席は空いている、わざわざ私の隣に座ったという事は――――


「貴女が狭山 香津美さんですね? 少しお話しよろしいですか?」

「……わ、私に何のご用でしょうか?」


 いつもの強気な狭山 香津美は出せない。この人たちには私の事を怖がりで、か弱いお嬢様だと思ってもらわなければならない……

 さあ……簡単に思い通りになる女だと思って、余裕ぶって隙を見せて頂戴よ。


「そんなに怯えなくて大丈夫ですよ、香津美さんが私たちの言う事を聞いて下さればすぐに済みますから……」

「あの、私はどうすれば……?」

「私達と一緒に来てください。香津美さんが協力してくだされば、とても良いものが見れるはずですから」


 どうやら私の演技にうまく騙されてくれたようで、男性はそう言ってすぐに仲間らしき男性を呼ぶと私をその場から連れ出した。

 それにしても彼らの言う「とても良いもの」って何かしらね? 間違いなく聖壱さん達に関する事だとは思うけれど……

 今の私は両サイドから男性に挟まれいる状態で、簡単には逃げられそうもない。今は大人しいふりをして、彼らについていくしかなさそうだわ。


 あらかじめ用意されていたであろう車に乗せられると、小柄な女性が怯えた様子で座っていた。もしかしてこの人が柚瑠木ゆるぎさんの奥さんの月菜つきなさん?

 隣に座っている女性に話しかけたいけれど、今は我慢するしかない。彼女が青ざめて震えているのに、今はどうする事も出来なくて悔しい……


 目的地が分からないように目隠しをされて、連れて行かれたのは古びたビルの一室だった。窓のカーテンは全てキッチリと閉められていて、外の景色は確認出来そうにない。


「素直についてきてくださって助かりましたよ。少しだけ私達のお手伝いをしていただければ、貴女達はすぐに帰してあげますから」


 そう言うと年配の男性は私達をソファーへと座らせた。怯えた様子の女性を見てニヤニヤ笑う男性が気に入らないわ……後で覚えていなさいよ。


「私達は大事な話があるので、少しここで大人しくしていてくださいね?」


 男たちが別の部屋に移動したのを確認して、私は隣に座り震える女性に話しかけた。


「貴女が二階堂にかいどう 柚瑠木ゆるぎさんの奥さん、二階堂 月菜つきなさんよね?」


 こうして私と一緒に連れて来られたという事は、彼女が月菜さんである可能性は高い。あの男たちがここに戻ってくる前に少しでも早く彼女を落ち着かせ安心させてあげなければ……


「あの、私は……」


 余程怖い思いをさせられたのかしら、女性は震えるだけで上手く喋れない様子。ふとその時女性がしっかりと握りしめている白クマのマスコットが目に入る。

 ……間違いないわ、この女性は二階堂 月菜さんだ。


「小柄で色白、持ち物は白クマのマスコットの付いた鍵……聞いていた通りだわ。あのね月菜さん、私の名前は狭山さやま 香津美かつみ。二階堂 柚瑠木ゆるぎさんの親友の狭山さやま 聖壱せいいちの妻よ」

「狭山さんの……奥さん?」


 私が聖壱さんの妻だと名乗ると、少し安心したのか月菜さんはジワリと瞳に涙を浮かべた。こんなか弱そうな女性に何も伝えないなんて……私は柚瑠木さんの考えにはどうしても納得出来ないでいた。


「大丈夫よ、ここは私達が何とかしてみせるから。月菜さんは私の後ろに隠れていてちょうだい」


 きっとすぐに聖壱さん達が助けに来てくれるはず。さすがに私たちのバックは奪われてしまったけれど彼らなら何とかしてここまで来てくれるはずだから。


「あの、この事を柚瑠木ゆるぎさん達は……?」


 知っているのかと聞きたいのでしょうね。けれど柚瑠木さんが月菜つきなさんに何も説明していない以上、余計な事を話せば混乱するだけでしょうし……


「心配いらないわ、必ず彼らが何とかしてくれるはずだから。月菜さんは何も不安がらなくていいのよ」


 肩に手を置いて月菜さんを少しでも安心させようとすると、彼女はそっと震える身体を寄せてきた。


「私、簡単に騙されてしまって。柚瑠木さんに迷惑を……」


 こんな状況なのに、怖くてこんなに震えているのに月菜さんは柚瑠木さんに迷惑をかけて申し訳なさを感じてしまっている。

 もう! こんな優しくていい子に何の説明もしないなんて柚瑠木さんは一体何を考えているのよ!

 震える小さな肩を抱きしめて頭を撫でると、小さな嗚咽が聞こえてくる。きっと月菜さんは怖くても必死に一人で耐えていたのでしょうね。


「大丈夫よ、貴女は絶対に私が守ってあげるから」


 こんなにもか弱いのに一生懸命頑張る姿が私の妹の【なほ】に似ている。聖壱さん達が来るまで、私が月菜さんを何としてでも守らなくては。

 しばらくそうしていると、扉の開く音がして先程の男性二人とそれ以外の数人の男女が部屋に入って来た。その中にはSAYAMAカンパニーの重役として顔を見たことのある人も混じっていて――――

甘溺愛婚 ~性悪お嬢様は契約婚で俺様御曹司に溺愛される~

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