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涙すら出なかった。分かりきっていたことなのに、心のどこかでもしかしたら、優しい言葉をかけてくれるんじゃ…と、期待してしまった自分が許せなかった。
「あーあ。男は逃げてくし。今日、どうしよっかな。野宿でいっか。」
私は、返信することなく携帯をしまった。そして、おぼつかない足取りで外に向かった。
こんな寒い日に野宿したら、死ぬかもしれないな。それもいいかもしれない。
どうせ誰も悲しまないんだし。とにかく疲れた。何のために生きているのか分からない。
めちゃくちゃな思考のまま、扉に手をかけたその時。
「あ、お疲れさん。今上がりかい?」
「っ……」
店長と、ばったり鉢合わせになってしまった。
眩しく、太陽のような笑顔が私を照らし出す。
予想外の展開にビックリして、もやがかかっていた頭が一気にはっきりした。
この男は、どうしていつも私が何かあった時に現れるのだろうか。
落ち着け。もう、向こうに悟られたくない。
「はいっ!!店長も上がりですかー?気を付けて帰ってくださいね!!」
だから、仕事用の笑顔を作って答えた。二人っきりの時にこのキャラになるのは援交がバレた時以来だ。
店長は、少し驚いた顔をしたが、深く考えていないのかにこにこしていた。
ほら、やっぱりこの人は鈍い。よかった。うまく騙せた。
「お疲れ様でしたー!!」