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「あ、ちょっと待って…!!」
店長に背中を向けた瞬間、呼びとめられる。その瞬間に緊張感が後ろに流れ出す。
まさか、また気づいた…?そんなはずない…
「はい?どうしましたか?私、急いで…」
「はい、これ。」
「…?」
振り返った私の前に差し出されたのは、小さな箱に入ったチョコレートのお菓子。くちばしがトレードマークのキャラクターが描かれている。多分、このお店の商品だ。
「チョコボール…。私に…ですか?」
控えめに受け取ると、店長は照れ臭そうに頬を掻いて笑った。
「うん。いや、商品の入れ替えで、その味もう売らないみたいなんだ。それで、売れ残ったからさ。」
じっと見つめて、問いかける。
「何で私に?」
「あ…ま、まあ…偶然会ったからかな?それと、辞めないでいてくれたから、そのお礼も含めてね。」
「そんな…お礼って…」
それで売れ残りを渡すのはどうかと思った。店長は、人のことをよく見てる割りにこういう気配りは苦手らしい。
前から予想していたがこれで確信した。この人は、モテない人種だと。
(ほーんと、呆れすぎて自分が暗い気持ちになっていたのが馬鹿みたいに思えちゃった。)
ふ、と笑いを溢して箱を鞄にそっとしまう。
「ありがとうございます。おかげで気が抜けました。」
「えっ?どういうことだい?もしかして、気に入らなかったかな?」
「いいえ、そんなことはありませんよ?」
私…何でちょっと楽しそうにしてるんだろ。
こんな優しさなんて、嘘なのに。
男なんて、みんな隙を見せた瞬間、下心をさらけ出してくるに決まっている。
(それを…証明してあげる。)
私は、表情を変え、艶っぽく店長を見上げた。
「…店長。私、あの日店長に見つかって、嘘をついちゃったせいで誰も相手にしてくれなくなったんです。店長のせいです。責任とって…私の寂しさ埋めてくれますか?」
(私が、偽りの優しさを暴いてやる。)