連載・第2話
目を覚ましたポオは、まだ夢の余韻の中にいた。
乱歩は、現実の乱歩は、ベッドの隣で目を覚ました彼にやわらかく笑って言った。
「君、三日も眠ってたんだよ? まるで眠り姫だねぇ」
「眠り……いや、姫は断る。」
「……そこはツッコむんだね?」
ポオは軽く目を閉じ、静かに息を吐いた。
あの夢。あの感情。あの言葉。
──『君を好きになったのが本物なら、それだけでいい』
それは、口から出たことすら覚えていなかった。
いや、覚えているからこそ、怖いのだ。
「……君は、夢に入った記憶があるのか?」
「ん〜、なんとなく? でも不思議と君と話した内容は覚えてるよ。ちゃんと、ポオくんが“本音”で話してたこともね」
「……夢と現実の境界が、曖昧だ」
「うん。でもだからこそ、“どっちの僕を好きか”って話だよ」
ふたりは探偵社の資料室に移動した。
事件はまだ終わっていない。いや、ここからが本番だ。
【現在までの事件の構図】:
* 被害者たちは皆「夢の中で誰かと会話」していたと証言(眠る前に)
* そして、目覚めずに死亡。原因は不整脈、脳波異常などさまざま
* 全員が最後に書き残していた言葉は同じ:「また、会える?」
「夢を喰う」ではない。
「心を喰う」殺人者がいる。
「……ねぇ、ポオくん。思い出してみて。君が見てた“夢の中の僕”って、本当に僕だった?」
ポオの瞳に、冷たい閃きが走った。
「……違う。姿は君だが、言葉の端々に矛盾があった。」
「うん。僕もね、“夢の中のポオくん”に一度会ったんだけど……あれ、君じゃない。目が、全然違った。」
ふたりの視線が合う。
次の瞬間、ふたりは同時に口を開いた。
「“誰かが僕たちを装って、夢の中に入ってる。”」
そう、犯人は実在する。
そしてそれは、ふたりの“心に最も近い存在”に化けて侵入してくる能力を持っている――
それを知っていたから、ポオは夢の中で“乱歩”に告げたのだ。
「たとえ君が幻でも、僕の気持ちは変わらない。」
……それが、罠だったとしても。
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