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「え?」「…また、不意打ち。……ダメじゃないし嫌じゃない..むしろ嬉しいけど、俺その…あ、あの日から宇野のことで頭いっぱいで……自分が自分じゃないみたいでその…….」
困惑の連鎖に耐え続けられなかった俺は、素直な気持ちを口に出す。俺的には苦情のつもりだったが、宇野の表情はどんどん緩んでいく。
「な、なんだよ…。」
「いや….来橋、俺のことしか考えられないんだなって」
「..そうだよ!!ずっと心臓バックバクだわもう何なのこれ!!!!」
思わず立ち上がってそう叫んだ俺を、宇野は優しく抱きしめた。
「ごめんごめん、可愛くて。…来橋、俺の胸に手当てみて。」
「…..うわ、早…。」
言われた通りに宇野の胸にそっと手を当てると、その優しい表情からは想像できないくらいに激しい鼓動を直に感じた。
「うん。…..俺も全然余裕ない。好きな子と話すだけでも心臓破裂しそうなのに….可愛いことばっかりいうからつい抱きしめちゃって、自滅してる。」
かっこ悪、と自虐してまた柔らかく笑う宇野を、今度は俺の方から抱きしめた。
….余裕そうに見えていた宇野が、俺と同じようにドキドキしているの知って、たまらなく嬉しかった。
俺なんか誰にも取られるわけないのに、過剰なくらい心配してずっと隣をキープしようとするところを、可愛らしいと思った。
俺のことを俺より思ってくれる度、胸が暖かくなった。
「?!く、来橋…?」
宇野は急な行動に驚きながらも、ぎこちなく応えてくれた。
俺は宇野みたいに男らしくないし、今だって顔から湯気が出そうなくらいに熱を帯びている。
目を見てちゃんと言える気はしないから、宇野の優しさに甘えて肩に顔を埋めて言う。
「……………..お待たせ…。」
「え?」
「俺も……..宇野が好き、デス……。」
「待って、来橋。本当に?」
体から飛び出すんじゃないかというほど、お互いの心臓が激しく脈打っているのがわかる。
「嘘で言うわけないだろ」
「…..来橋、顔見たい。」
「やだよ」
「お願い。」
「ダメ」
「…….あの時は強引だったくせに」
確かに、宇野が告白してくれたあの夜も同じようなやり取りをした。俺は半ば強引に宇野の泣き顔を見たのだ。
痛いところを突かれた俺は、渋々顔を上げる。
顔に熱を帯びすぎて、瞳が潤んでいるのを自覚する。
「….はは、可愛い。真っ赤。」
「誰のせいだよ….。」
「ごめんごめん。たまらなく嬉しくて。」
両手を俺の頬に添えて笑う宇野も、涙を流していた。
「「俺と、付き合ってください。」」
1番大事な言葉は俺が、と不意打ちを狙ったはずだったが、それは宇野も同じだったようだ。
まさかのハモりに俺たちは少しの間見つめあったあと、どちらからともなく吹き出した。
「普通、ここで被る?」
なんて言いながらも心底幸せそうな宇野。
「ある意味奇跡だなあ」
きっと宇野と同じように幸せを滲ませている俺。
また少し見つめあった後、俺たちは大きく息を吸った。
「「よろしくお願いします!」」
…そうして、俺は”無愛想イケメン”と恋人同士になったのだった。
幸福感と安堵を全身に感じながら教室の窓から景色を眺めていると、宇野が後ろから抱きしめてきた。
「….俺さ、結構…っていうか相当、重いと思うけど…いい?」
「今更だよ。ていうかそのまぁ、軽いよりいいじゃん」
「….そっか。」
嬉しさの表現か、宇野は俺を抱きしめる腕にぎゅーっと力を入れた。
「ちょっ、苦しいって!」
笑いながら言って振り返ると、唇に柔らかい感触がした。
「…..え….」
自分の唇に指を当て思考停止していると、宇野は俺の耳元で囁いた。
「….もう、我慢しなくていいんだよね?」
付き合う前から散々抱きしめられていたが、あれでも本人的には我慢していたようだ。
「……..今のはノーカン」
一瞬すぎたキスをノーカンと表現したことが、宇野の何かを煽ってしまったようだった。
「ふーん。じゃあもう1回」
宇野は俺の両腕を掴んで壁に追いやり、さっきより何倍も長くキスをした。
息が続かなくなった俺はしゃがみこんで両手で顔を覆った。
「……すみませんでした。」
「可愛い。ちょっとずつ慣れていこうね」
ドラマや映画で観るキスとはまるで違って、俺は自分のキャパをとうにオーバーしていた。
「俺の知ってるキスじゃないぃ….。」
そう言うと、宇野は穏やかな表情から段々不機嫌そうな表情になった。
「来橋の知ってるキスって何、元カノ?俺聞いたことないんだけど。何歳?ていうか誰?」
怒涛の質問攻めをされ、また何か勘違いさせたことに気付いた。
「待って!!違う違う….元カノとかいないし!!宇野が初めてだし!!ドラマとかそういうあれ!!」
迫り来る宇野に必死にそう言うと、宇野は分かりやすく安堵を顔に滲ませた。
「….なんだ。焦った。これからも俺だけだからね。」
「….分かってます。」
俺の彼氏は少しの失言でもここまで不安になるのか。と、今後自分の言動に気をつけようと覚悟した。
「…..ていうか!!!テスト!!!勉強やばいから!!」
「あ、そうだったね。再開しよう。」
そうして、俺たちは緩みきった表情と浮ついた心のままテスト勉強を再開した。
テストが終われば、次に来るのは文化祭。
恋人と過ごす初めてのイベントへの楽しみに胸を踊らせながら、ペンを走らせるのだった。