💚亮平side
子供の頃、ハムスターを飼っていた。
可愛くて可愛くて、毎日撫でたり、つついたりしていた。
肌身離さずポケットに入れて。
ずーっと手のひらでその体温を感じて。
小さくかよわい生命を感じて。
時々取り出してはいくら眺めても飽きなかった。
でもたった一週間で死んじゃったんだ。
弟は泣いた。
父さんには呆れられ、母さんには叱られた。
俺はそれ以来動物を飼うのをやめた。
可愛がりすぎて、殺してしまうから。
愛しすぎてしまうと、苦しめてしまうから。
小さな生き物が俺の手の中で冷たくなっていく感触を覚えてる。
あの可愛かったつぶらな瞳は二度と開かない。
大好きだった愛くるしい瞳。
あいつの世界には俺しかいなかったのに。
失ったものはもう二度と還っては来ない。
💚翔太、俺と付き合ってください。
💙……俺?
💚うん。翔太がいいんだ。
ある日。
同じアイドルグループのメンバー、渡辺翔太に告白をした。
翔太はとても恥ずかしそうにしていたけど、OKしてくれた。
うん。
わかってるよ。
君は俺が大好きだもんね。
翔太は俺の告白を聞いてとても嬉しそうにしていた。
胸がざわざわする。
💙……俺も…あの…
💚なあに?
ちゃんと言って?
翔太はもじもじしている。
顔だけじゃなく、耳まで真っ赤だ。
💚翔太の気持ち、ちゃんと聞かせて欲しいな?
💙…好き……です。
💚ふふ。よくできました
俺は翔太をゆっくり抱き締めると、優しく頬に口付けした。
俺より小さな翔太は、すっぽりと俺の腕に包まれて幸せそう。
可愛い。
可愛くて、どうしようもない。
俺を恋する目で見上げる翔太が堪らなく愛おしい。
翔太が俺に体を預けたまま、おずおずと言った。
💙阿部にひとつだけお願いがある…
💚なあに?
💙…このこと、誰にも知られたくない
💚俺たちがこうなったこと?
翔太は顔を赤くしたまま、頷く。
白いうなじが見える。
すごく興奮する。
翔太が恥ずかしがりなのは知ってる。
からかわれたり、色々聞かれたりするのが嫌なんだよね?
💚わかった
💙いいの?
期待を込めた目で翔太が顔を上げる。
キスでもしそうな距離だ。
翔太の吐息がかかる。
その愛しさにくらくらする。
このまま襲いたくなるのを俺はぐっと我慢する。
楽しみは後にとっておきたい。
💚もちろん。翔太のお願いだもん。
💙ありがとう
ほっと胸を撫で下ろす翔太。
俺は翔太を優しく抱きながら、どうしようもなく込み上げてくる快感を一人味わっていた……
それスノ収録日。
セット裏にて。
俺は強引に翔太と唇を重ねている。
壁に押し付けられた翔太はまったく身動きができない。
翔太は俺より小柄だから、力では俺に敵わない。
💙ん……っ、やめ……
💚翔太、もっと口、開けて?
💙人が……来る……から
💚ちゃんとキスしてくれないと、やめてあげない
抵抗してるはずなのに、翔太の体にあまり力が入ってなくて、それがさらに俺を煽っている。
翔太の、拒否したくないけど恥ずかしい気持ちが透けて見えるようだ。
翔太が懸命に俺のキスに応えている。
早く解放されたいのか、俺を愛したいのか。
きっとそのどっちもなんだろう。
もっとほしい。
もっと翔太を味わいたい。
翔太の口から甘い吐息が漏れ始めた。
翔太の息が荒くなってきたタイミングで、俺はそっと離れた。
視界の端に佐久間の姿が見えた。
せっかくいいところだったのに。
少し残念だなと思う。
🩷阿部ちゃーん!もうすぐ打ち合わせ始めるよー
佐久間がこっちに来る。
俺は振り返って笑顔で手を上げ、応える。
💚うん、今行くね
背後に隠れている翔太の息が荒い。
膝に力が入らないのか、そのまま壁にもたれるように寄り掛かっている。
ちょっとやりすぎたかな?
佐久間が翔太に気づいたようだ。
🩷翔太もいたのか
💙………
🩷あれ?顔赤くね?どうした?
俺とキスしてたからだよ。
心の中で舌を出して、俺は心配するふりをする。
💚ほんとだ。気がつかなかった。翔太、大丈夫?
翔太は俺を睨みつける。
もちろん知らないふりをする。
だってそういう約束だもんね?
佐久間が近づいてくる。
🩷熱でもあるのか?
手を翔太の額にあてようとした。
翔太は佐久間の手を振り払うと、怒ったようにそのまま控室へ行ってしまう。
🩷なんだあいつ。
💚俺たちも行こ?佐久間
翔太、もう満点だよ。
思った以上に楽しめる。
俺は意地悪な笑いを堪えるのに必死だった。
💙翔太side
やっと収録が終わった。
いつもより疲労感がやばい。
阿部と付き合うようになってから、ずっと気が張り詰めている。
阿部はずっと俺を見ている。
そして、周りに誰もいなくなるとさっきのようにたまにちょっかいをかけてくる。
こっちは誰か来るんじゃないかと気が気じゃないというのに。
💙帰るか
早く帰って寝てしまおう。
楽屋に置きっぱなしにしていた携帯を見る。
LINEが来ている。
阿部からだった。
俺は誰にも見られないようにトーク画面を開く。
💚『涼太とご飯行くから誰か誘っておいで?あくまでも偶然を装ってね』
そのメッセージの後には店のホームページがシェアされているだけ。
他には何もなし。
誰かって…誰だよ…。
俺が楽屋を見回すと、たまたま康二と目が合った。
こいつでいいか。
💙康二、この後ひま?
🧡うん?
💙飯行かない?
🧡ええよ。しょっぴーから誘われるなんて珍しいなあ。
康二は喜んで了承する。
康二が残っていてよかった、と俺は思った。
阿部に指定された店は、目立たない場所にあるこじんまりとしたバー。
隠れ家的な店で、料理も美味しいとホームページに書いてあった。
薄暗い店内には、ジャズが静かに流れている。
客層も大人が多くて落ち着いた雰囲気だ。
きっと涼太の好みなんだろう。
🧡お洒落な店やんなあ。初めて来るわ。
💙俺も。
🧡へ?そうなん?
…しまった。
阿部に偶然を装えと言われていたのに。
初めて来る店に人を誘うのは不自然だったかもしれない。
俺は冷や汗をかく。
💙いいから行こう
店の中はそんなに混んでなく、阿部と涼太はすぐに見つかった。
康二も二人を見つけたようで騒いでいる。
🧡あ!阿部ちゃんと舘さんや!!
💙あ、ほんとだ
棒読みになってないといいけど。
俺は用心して芝居をする。
康二は俺の様子を疑うことなく、阿部と涼太のいるテーブルに真っすぐ向かって行った。
🧡偶然やね!今、しょっぴーと来たとこや!まさか二人ともいるとは思わんかった!
💚俺たちもさっき来たところだよ。あ、翔太もいたんだ?
阿部がにっこりと笑う。
芝居がバレないかひやひやしている自分とは違ってすごく落ち着いている。
昼間も思ったが、阿部は芝居がうまい。
…腹が立つくらい。
❤️せっかくだから二人も一緒にどう?
🧡もちろんや!!な、しょっぴー、ええ?
💙お、おお
💚その方が楽しいもんね?
何をぬけぬけと。
涼太もこの奇妙な偶然を特に不審には思っていないようだ。
店員さんにことわって席に着く。
涼太の隣りに康二が、阿部の隣りに俺が座った。
…!
💙あっ…!
椅子の下で、阿部の手が俺の手を握った。
❤️どうかした?
💙いや、なんでもない
こいつ…。
阿部は知らん顔して、康二とメニューの相談をしている。
料理はどれも美味しく、話もそれなりに弾んだが、食事中に阿部がこっそり何度も手を握ってきたり、足を絡ませて来るので、俺は平静を装うのが大変だった。
いったん落ち着こう。
俺はトイレに立った。
済ませて手を洗っていると、阿部が入って来た。
阿部のことだ、タイミングを見計らったに違いない。
💚翔太、来ちゃった
💙やめろよ
💚なにを?
💙あいつらの前でああいうことするの
阿部は悲しそうな顔をした。
きっと演技なんだろうけど動揺する。
💚嫌なの?
💙嫌じゃ…ないけど。昼間だって…
💚昼間だって、なに?
こいつ、わざと俺に言わせようとしてる。
💙……恥ずかしいから、やめろ
💚ふふ。感じちゃった?
💙ばか!
阿部は俺を引き寄せ、耳元で囁く。
💚可愛い。翔太大好き。
真っ赤になった俺を残して、阿部は先にトイレを出る。
俺はもやもやした気持ちで阿部の後ろ姿を見送った。
コメント
6件
最高すぎる💘 続き待ってます👍🏻
ちょいSな阿部ちゃん好き🫰
チョー最高じゃん 続き楽しみよ