テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
※プロポーズの仕方とかは全部私の妄想と捏造
とっても短い。
自分よりも何倍も小さくて優しくて柔らかい白い手。
この手をずっと守っていきたい。
傷付かないように握ってあげたい。
誰よりも隣で、この手が皺くちゃになるまで見ていたい。
「イナリさん、俺と生涯を共に過ごしてほしいです」
「トラゾー殿?」
作業していた手を止めた彼女はきょとんした。
薄緑色の目には疑問符が浮かんで見える。
「俺に全てをください。貴女に俺の全てを捧げるので、貴女も俺に全てをくれませんか」
イナリさんの隣に座って手を取る。
情けなくも揺れる声と彼女の手を握る震える俺の手。
簡単に折れてしまいそうなくらい細いこの人を支えてあげたい。
俺のことをずっと支えてくれた彼女を。
「私で、いいのですか?貴方にはもっと素敵な方がいるのに……私なんかでいいんですか?」
「俺はイナリさんがいいです。俺のことずっと支えてきてくれた貴女が、…誰よりも好きです。愛してます」
白い肌が薄く赤くなって、薄緑の瞳からはぽろりと涙が落ちた。
「⁈、い、嫌でしたか⁈…あ、いや、…俺なんかじゃ駄目、ですよね…」
握っていたイナリさんの手を離そうとしたら力強く握り返された。
「駄目なわけ、ないです…嫌なわけないっ…。すごく、嬉しい、です…」
泣きながら笑った彼女が愛おしくて、絶対に何よりも大切にしたいと、何者からも守りたいと思った。
「トラゾー殿、私も同じ気持ちです。…貴方の全てを私にもください。私も全てを貴方にあげますから」
そう言って俺の手を包むようにして握った手を重ねてくれた。
「私もトラゾー殿のことをずっと傍で支えたいです。頑張り屋で我慢ばかりする貴方のことを」
「イナリさん…」
「それに貴方を病院に連れて行けれるのも私だけですし」
「ゔぐっ」
色々と迷惑をかけたこともあった。
その度、嫌がる俺をどうにかして病院へ連行してたのはイナリさんだ。
「トラゾー殿のかっこいいところも可愛いところも、頑張ってるとこや情けないとこだって歳を重ねながら見ていきたい」
「俺も、イナリさんの可愛いところや男前なのところやお茶目なとことか、ずっと見ていたいです」
人生で1番、情けない顔をしているであろう俺のことを笑いもせず、優しく微笑み返してくれる彼女は本当に優しい。
「トラゾー殿のことを誰よりも知ってるのは私です。貴方を誰よりも支えてきた自信もあります。だから、本音を言えばこの座だけは絶対に誰にも渡したくないです」
「そんなの俺だってそうです。イナリさんのこと支えられるのは俺だけしかいない。これは誰にも譲りたくない」
自分の頭1個半くらい小さい彼女を見下ろして、華奢な体を抱き締める。
「イナリさん、俺と共に生きてください」
「はい、喜んで」
ふわりと花が綻ぶように笑うイナリさんは誰よりも可愛くて綺麗だった。
結婚したことは色々な人から祝福してもらった。
ぺいんととかにはめちゃくちゃ悔しがられたけど、それ以上に我が身のように喜んでくれていた。
「トラゾーには言う必要ねぇかもだけど、絶対に幸せにしろよ」
「するよ。誰よりも、絶対に」
「ぺいんとさん野暮ってものですよ。トラゾーさんほどのスパダリはいないんですから。なんの心配もいらないでしょ」
しにがみさんが嬉しそうに笑って言った。
「スパダリかどうかは分かんないけど、イナリさんを幸せにできるのは俺だけって自信はすっごくあります。胸を張って言えますよ」
「なんの心配もいらないくらい相思相愛のお二人ですもん。見てるこっちも嬉しくなるほど」
隣にいるイナリさんににこっと笑いかけたしにがみさんにイナリさんも可愛らしく微笑み返した。
「皆さんにそう言ってもらえて、とても嬉しいです」
穏やかな雰囲気に、こんなにも幸せであっていいのだろうかと足が竦みそうになる。
俺の若干の雰囲気の違いを察したのかイナリさんが俺を見上げてきた。
「トラゾー殿のことは私が幸せにします。だから、大丈夫ですよ」
「イナリさん…」
「私はトラゾー殿がいるからなんの不安も心配もしてないです。貴方がいればなんでも大丈夫だと信じてますから」
「俺もそう、思ってます。…ただ、幸せすぎて夢なんじゃないかってくらいに思えて…」
「夢なんかじゃないですよ。ほら」
「へっ」
手を伸ばしたイナリさんが俺のほっぺを摘んだ。
因みに全く痛くはない。
「トラゾー殿も私のほっぺ摘んでください」
「え?」
言われるがまま、柔らかいほっぺを摘む。
「⁇」
「こうやって摘んで触れてる感覚があるんです。私は本物のイナリですよ」
「⁇俺も本物のトラゾー、ですけど…」
「私がトラゾー殿の不安なことも嫌だなって思うことも全部無くしてあげます。自信を持って私のこと幸せにしてください」
微笑むイナリさん。
「トラゾーなら大丈夫だよ。ずっと見てきた俺たちが証明する」
「クロノアさん…」
「そうそう。トラゾーは変なとこ抜けてるけどマジですごい奴なんだから自信持てって!」
「ぺいんと…」
「トラゾーさんはとても優しくて他人思いの人なんですから。ちょっと他人優先しすぎなとこありますけど、そこはきっとイナリさんが止めてくれるでしょうしね」
「しにがみさん…」
「「「トラゾー(さん)は幸せになっていいんだよ」」」
ぼろっと涙が落ちた。
それを拭ってくれるイナリさんは、この場の誰よりも力強く頷いていた。
「トラゾー殿のこと1番理解してる皆さんが言われてるんですから。ね?大丈夫ですよ」
何度も大丈夫だと言われる。
見かねたクロノアさんがハンカチをイナリさんに渡してくれた。
イナリさんがそれで優しく拭いてくれる。
「もう泣き虫なんですから」
「す、みませ、…」
「そういった弱いところも私はお婆さんになっても見ていきたいです」
「イナリさんって、下手すりゃ誰よりも男前だよな…」
「やらんぞ…」
涙目で睨めばぺいんとが首を振る。
「いやいや!言葉の綾だろ!トラゾーの奥さん盗らんて!」
「ふふ、私はトラゾー殿一筋なんで心配しないでください」
「俺もイナリさん一筋です…」
俺の涙で汚れたクロノアさんのハンカチを手に取る。
「洗って返しますね、クロノアさん。ありがとうございます」
「うん。いつでもいいよ」
大丈夫だよ、と肩を優しく叩いてくれるクロノアさん。
その意味合いを察して笑う。
泣いたことをみんなに揶揄われながら、幸せだな、と思った。
「トラゾー殿」
「はい、イナリさん」
「私に全てをくれてありがとうございます」
「イナリさん…」
「トラゾー殿を絶対に幸せにします」
「勿論、俺もイナリさんのこと誰よりも絶対に幸せにします」
守っていきたい手を包み込む。
「俺も、…俺にも全てをくれてありがとうございます。貴女のことは俺が守ります、何者からも」
「はい。私も貴方のこと守ります」
ふわっと可愛く綺麗に笑うイナリさんを優しく抱き締めた。
躊躇いもなく俺の背中に手を回して抱き締め返してくれる。
この先、ずっと彼女のことを隣で支えて、支えられながら共に過ごしていく。
俺の全てを投げ打ってもこの人のことは守り抜きたいと思う。
人生を捧げ合う約束をした。
互いの左手の薬指で光るものがずっと輝き続けるように、それを見ながら年取ったねって笑い合うように。
コメント
2件
えめっちゃ好きです!神やん🥹🥹💕💕🫶😇😇😇