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第一話→まきぴよさん
(フォロー欄にいらっしゃいます!)
「ホテル宿泊券」
「そう」
今頃しょっぴーも岩本くんに同じ報告をしているんだろうなと思いながら、阿部ちゃんにチケットを渡す。
「やったぁ!俺この近くで行きたかった所あるんだ」
あ、でもめめはゆっくりしてね?とか言いながらウキウキとスマホでその行ってみたい所とやらを調べている。
「美肌温泉だって、翔太喜びそう」
「ほんとだね」
「えっ、ねぇめめ見てこれ」
ひときわ上ずった声と共に阿部ちゃんがスマホを向けてきた。
「子宝の石だって」
「…子宝」
「絶対今変なこと考えた」
図星。苦笑いする俺を見て阿部ちゃんはどこか嬉しそうに『もう』なんて言いながら子宝の石を説明してくれた。
「自分の子を幼くして失った女の神様が、せめて自分を信仰する民たちは我が子のことで悲しい思いをしないようにってこの土地に加護を授けたんだって。ここの地域、子だくさんで有名らしい」
「優しい神様だね」
「子どもは双子だったんだってさ、この石に神様が祀られていて、…『未婚の男であっもいずれ迎える我が子や親類の子に至るまで健康と多幸を授ける』なんかすごいね」
同性カップルがここをお詣りした後に養子とマッチングできた、なんていう今の時代らしいエピソードも綴られていた。
「面白いね、行ってみよう。岩本くんたちも来るかな」
「聞いてみる」
かくて現地に到着し、とりあえず一度温泉にゆっくり浸かってからみんなで神社に向かい『子宝の石』に触ってお詣りしてきた。
美しくて白い以外には特に何の変哲もない石だったが、阿部ちゃんに言わせると『ここの地層からしてもこんなに大きくて白い石がまず考えられないらしくて、それも神様の化身と言われてる所以』だそうでみんなで丁寧に撫でた。
誰もがお詣りに来れるようにと、石段も低く少ない。そんな所まで神様の気遣いを感じながら降りていると、阿部ちゃんとしょっぴーがふと立ち止まって振り返った。
「え?」
「なに?翔太」
「…なんでもない」
俺と岩本くんはサンダルで石でも踏んだのかと思って気にせずまた降りた。
「阿部ちゃん、聞こえた?」
「翔太も?気のせいかと思ったけど」
「「女の人の声で『見つけた』って…」」
そんな事も知らずに俺と岩本くんは車から二人を呼び、立ち止まっていた二人もハッとしたように降りてきた。
そして客室に戻ると静かな室内に普段の疲れも相俟って、誰からともなくそのうちみんな眠ってしまった。
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コメント
3件
うわ💦 私の好きな展開ではないですか! 楽しみ〜👏👏