カランカラン🔔
―いらっしゃいませ〜
綺麗で透き通ったような声が、俺を出迎えた。
―何名様ですか?」
今度はそう、俺に問う。
「2人」
必要最低限のことだけ返した。目も合わせない。
「身バレ」すると大変だから。
―お客様、もしや彼女さんを待っておられて?
「違う」
余計なお世話だ。全く面倒臭い店員だ…
冷たい俺の態度になにかを察したのか、店員は俺を席に案内してくれた。
―こちらがお席で御座います。ごゆっくり。
俺は無視して椅子に腰掛けた。
スマホの電源をつけ、ある相手にメッセージを送った。
『着いたぞ』
既読はすぐついた。その数分後、返信がきた。
『もう着くから待ってて』
その言葉通り、約15分後にやって来た。
「お久しぶりね」
そういいながら椅子に腰掛ける彼女。
真っ黒な長い髪の毛、露出多めの白いワンピース、
甘い香りのする香水。
まさに色気溢れかえる彼女を見て、
俺は思わず唾をゴクンと飲み込んだ。
「どうして私を呼んだの?」
さっきの店員よりも透き通る、美しい声だった。
「アンタの兄のことで聞きたいことがある」
俺はそう伝えた。彼女は顔をしかめた。
「それは無理って、何回も伝えているでしょう」
「なんでだよ?」
「目黒家の秘密なの。こればっかりは無理よ」
俺は腹が立った。
「それぐらい教えてくれてもいいじゃないか」
彼女は眉根を下げた。なんだか悲しそうだった。
「お兄ちゃんがああなってしまった理由を、『それぐらい』で片づけないで」
俺は押し黙った。
「あの人」は、ああなりたかったわけではないから。
彼女は続けた。
「これを聞くために私を呼んだの?」
図星だった。
俺はどう返せばいいのか分からなかった。
「なら、もう帰る。またね」
入り口ドアまで歩いていこうとする彼女。
とにかく引き止めたくて俺は彼女の腕を掴んだ。
「なによ?」
「まだ、話したい」
俺の気持ちはそれだった。
「私に恋愛感情でもあるわけ?」
俺は頬が赤くなるのを感じた。
「…そうだよ、俺はお前のことが好き」
彼女はなんとも言えない顔をした。
そして、また椅子に座った。
俺から目を逸らした。俺も逸らした。
すると、彼女は口を開いた。
「私も、貴方のことが好き」
俺は久しぶりに彼女の目を見つめた。
彼女も見つめてきた。
彼女は話をはじめた。
「お兄ちゃんがSnow Manだったとき、とても楽しそうだった」
「なのに、Snow Manが解散して、変わってしまった」
俺は、どこかにある胸の古傷が、傷んだ気がした。
「あんなに優しかった、のに…」
「な、なん…でッ」
彼女は涙を流していた。
ダイヤモンドのような、美しい涙だった。
だけど、儚く消えてしまいそうなか細い声。
俺は、思わず抱きしめていた。
ずっと、ずっと抱きしめていた。
♂️ ラウール.🏳️✨️
♀️ メグロ ナギ.🌹💋