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スタート.ᐟ.ᐟ
第4話「悪役令嬢からの呼び出し」
――翌日の昼休み。
天宮ちぐは、教室でお弁当を広げていた。
その周りには、いつもの四人。
ぷり「ちぐ、今日のお弁当うまそう!」
ちぐ「ほんと? よかったら少し食べる?」
ぷり「いいの!?」
けちゃ「ぷり、食べすぎないでよ?」
ぷり「分かってるって!」
その隣では、まぜがけちゃのお弁当を覗いている。
まぜ「けちゃ、それ何?」
けちゃ「卵焼き」
まぜ「一個ちょうだい」
けちゃ「……しょうがないなぁ」
けちゃが卵焼きをまぜの口元へ持っていく。
まぜ「……ん」
けちゃ「美味しい?」
まぜ「うん」
二人とも少し照れている。
それを見て、ぷりが笑う。
ぷり「お前ら、昼休みになると毎回これやってんな」
けちゃ「だって、まぜちが欲しいって言うから!」
まぜ「けちゃがくれるから」
ぷり「はいはい」
そのとき。
あき「……天宮さん」
教室の入口から声がした。
全員が振り返る。
そこには――。
西園寺あきが立っていた。
ちぐ「……あきちゃん」
あき「昨日、言ったでしょう?」
ちぐ「……うん」
あき「放課後、私のところへ来なさい」
教室の空気が一気に変わる。
あと「……何のために?」
あきがあとを見る。
あき「あなたには聞いていないわ」
あと「でも、ちぐに何かするなら――」
天宮ちぐ「あとくん、大丈夫」
ちぐがあとに笑いかける。
ちぐ「私、一人で行ってみる」
あと「……本当に?」
ちぐ「うん」
あとが心配そうにちぐを見る。
あき「決まりね」
あきはそう言うと、教室を出ていった。
ちぐ「…………」
ぷり「ちぐ、大丈夫か?」
ちぐ「うん……たぶん」
まぜ「絶対一人で行くな」
ちぐ「え?」
まぜ「何されるか分からないだろ」
けちゃ「うん。私も心配」
そして――。
あと「俺も行く」
ちぐ「でも、あきちゃんは一人で来てって……」
あと「だからって、ちぐを一人にはできない」
ちぐは少し黙った。
そして、嬉しそうに笑う。
ちぐ「……ありがとう」
* * *
――放課後。
旧校舎。
約束通り、ちぐは一人でやってきた。
ちぐ「……あきちゃん?」
返事はない。
ちぐ「来たよ……」
ガラッ。
奥の教室から、あきが出てくる。
あき「遅かったわね」
ちぐ「ご、ごめんなさい」
あき「謝るくらいなら、早く来ればいいでしょう?」
ちぐ「……はい」
あきは腕を組む。
あき「あなたに言いたいことがあるの」
ちぐ「……何?」
あき「明日から、私の言うことを聞いて」
ちぐ「え……?」
あき「掃除も、荷物持ちも、私が頼んだことは全部」
ちぐの顔が曇る。
ちぐ「……分かった」
あき「それから――」
あきは、ちぐの机に置かれていたノートを手に取った。
あき「これ、借りるわ」
ちぐ「あっ……それ、明日の授業で使うの……」
あき「なら困るわね」
あきはノートを持ったまま、にやりと笑う。
あき「返してほしければ――」
その瞬間。
ガラッ!!
扉が開いた。
あと「――ちぐ!」
ちぐ「あとくん!?」
あとが息を切らしながら駆け込んでくる。
その後ろには――。
ぷり「やっぱりここだったか!」
けちゃ「ちぐ、大丈夫!?」
まぜ「……あき」
四人が揃っていた。
あき「……どうして来たの?」
あと「ちぐを一人にしたくなかったから」
あとがちぐの前に立つ。
あと「ノート、返して」
西寺あき「嫌よ」
ぷり「あき、さすがにやりすぎだろ」
あき「あなたたちには関係ないわ」
まぜ「関係ある」
まぜがけちゃを見る。
まぜ「ちぐは俺たちの大切な友達だから」
けちゃ「うん」
けちゃも頷く。
けちゃ「だから、傷つけるのはやめて」
あきは黙って四人を見る。
そして――。
あき「……分かったわ」
あきがノートをちぐへ投げる。
ちぐ「……!」
あとがすぐに受け取った。
あと「ちぐ」
ちぐ「ありがとう……」
あき「今日はこれで終わり」
あきは教室を出ていく。
しかし――。
廊下に出た瞬間。
あき「…………」
あきの表情が変わる。
あき「……何なのよ」
拳を握る。
あき「どうして、あの四人は……」
自分は悪役令嬢。
本来なら、攻略対象たちは自分を嫌う。
それなのに。
あき「……ちぐを守るためなら、全員で来るなんて」
あきは悔しそうに目を伏せた。
そのとき。
りん「西園寺さん」
あき「……!」
また、あの声。
振り返ると――。
神楽坂りんが立っていた。
りん「楽しそうですね」
あき「……何が言いたいの?」
りん「あなたは、本当に悪役令嬢になりたいんですか?」
あき「…………」
あき「当たり前でしょう」
りん「そうですか」
りんは微笑む。
りん「では、覚えておいてください」
あき「何を?」
神楽坂りん「この世界では――」
りんがあきの耳元で囁く。
りん「悪役令嬢が、必ずしも悪役になるとは限りませんよ」
あき「…………!」
あきが振り返ったときには、りんの姿はもうなかった。
あき「……どういう意味よ」
一方その頃。
帰り道。
ちぐ「今日はありがとう」
あと「ううん」
あとがちぐの手をそっと握る。
あと「ちぐが無事なら、それでいい」
ちぐ「……あと、大好き」
あと「……俺も」
少し離れたところでは――。
けちゃ「まぜ、今日はありがとう」
まぜ「何が?」
けちゃ「一緒に来てくれて」
まぜ「当たり前」
まぜが笑う。
まぜ「俺、けちゃのことも大切だから」
けちゃ「……私も」
二人は手を繋いで歩く。
そして、少し後ろから歩くぷり。
ぷり「……今日も平和だなぁ」
――しかし。
この平和な日々の裏で。
転生者たちによって、ゲームのシナリオは少しずつ崩れ始めていた。
終了.ᐟ.ᐟ
おつむぅ.ᐟ.ᐟ
コメント
1件
うわー、4話、一気に空気が変わったね…!西園寺あきの圧がすごくて、読んでるこっちまで息が詰まりそうになった。でも最後の廊下での表情で、彼女も何か背負ってるんだろうなってのが伝わってきて、複雑な気持ちになったよ。逆に、ちぐを守るために四人が全員で駆けつけるシーンは熱かった!あとくんたちの絆がしっかり感じられて、こっちまでほっこりした。それにしても神楽坂りんの意味深なセリフ…「悪役令嬢が必ずしも悪役になるとは限らない」って、どういうことなんだろう。この世界の仕組みや転生者の意図が気になりすぎる。続きが待ちきれないよ!