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✦ 第1話「転校生、麗那」 超長編 ✦
今日は緊張で胸が張り裂けそうだった。
初めての学校、初めて会うクラスメイト、そして初めて見る顔。
「今日、転校生が来るらしいぞ」
教室がざわつく声に、思わず肩に力が入る。
でも、私は深呼吸をして、心を落ち着けた。
扉が開き、教室の視線が一斉にそちらに向く。
大人っぽく、優しく、でもどこかクールな雰囲気の少女——麗那(私)が入ってきた瞬間、空気が変わった。
「麗那です。よろしくお願いします」
その声は柔らかく、穏やかで、でも確信をもっていた。
教室の男子たちは一斉に息を飲む。
ざわつくざわつく視線の中、私は軽く微笑むだけで、特に動じなかった。
けれど、目が合った一人の少年の視線だけは違った。
金髪で、無表情。
でも目だけが私から離れない。
佐野万次郎——マイキー。
「……ふぅん」
教室のざわつきの中で、彼だけが静かに私を見つめていた。
不思議なことに、少し怖いけど、どこか安心できる気もする。
授業が始まる。
周りの男子たちは何度もこっそり視線を送ってくる。
私がノートを取るたびに、ささやき声や笑い声が聞こえる。
放課後——。
校門の外に出ると、数人の男子が待っていた。
「麗那ちゃん!LINE交換しよ!」
「部活見学来ない?案内するよ!」
思わず笑ってしまう。
「ごめんね、また今度ね」
断るときの声は優しく、でもしっかりと伝えた。
そのとき、影が近づいた。
肩に、軽く衝撃。
「おまえら、麗那困ってんじゃん」
振り返ると、マイキーが立っていた。
無表情なのに、存在感が圧倒的。
腕を伸ばすだけで、まるで私を守るためにそこにいるみたいに感じる。
「ちょっとついて来いよ」
その一言で、胸がドキドキした。
まるで、世界が少し変わった気がした——。
⸻
秘密の場所
マイキーは私を連れて、学校の裏の小さな公園に向かった。
ベンチに座ると、マイキーは少しだけ視線を落とす。
「……おまえ、転校生?」
「うん、麗那って言うよ」
少し間を置いて、彼はぽつりと呟いた。
「へぇ。可愛い名前」
その言葉に心臓が跳ねた。
初対面なのに、こんなにドキドキするなんて。
「どうして、助けてくれたの?」
マイキーは無表情のまま、でも少しだけ前のめりになって私を見た。
「理由?
おまえ…なんか放っとけねぇんだよ」
その瞬間、風が吹いた。
桜の花びらが舞って、光が揺れる。
「麗那、今日からオレのそばにいな?」
胸の奥が熱くなる。
言葉だけで、世界が色づいたような気がした。
⸻
家に帰る道
帰り道、足が少しふわふわしていた。
友達からLINEが何通も来ているけど、頭の中はマイキーでいっぱい。
「……あの人、なんであんなに強引なのに、怖くないんだろう」
つぶやく私に、少し笑いそうになった自分がいた。
家に着くと、父と母が夕食を作って待っていた。
でも、心ここにあらずで、食事も味がほとんどしない。
夜、ベッドに横になりながら思う。
「明日も、マイキーに会えるかな」
小さな期待と少しの不安が混ざって、眠れずに天井を見つめた。