テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
ぅゆ
1,298
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
-hotoke-side
「ごちそ〜さまっ! 」
初兎ちゃんが寝坊して、今日は少し遅めの朝ご飯
お腹が空いてたまらなかった僕は皆よりも数倍早く、全ての品を平らげた
「ぉ、いむ早いやん。じゃ、任務ね 」
「…へ?」
お腹が膨れてとっても幸せだった僕に降ってきたのは、ないちゃんが発した「任務」の一言
「ここに雑魚爺いるからよろしく〜」
と小さな紙切れを投げられ、ないちゃんは食事に戻る
幸せな気持ちが台無しだ
「はぁ…?最悪…桃饅頭買ってよね」
「ん〜?成果次第な。ほら行った行った」
しっしっ、と動物を追い払うような手草をされる
しぶしぶと毒薬を懐に仕舞い、外へ出ようとした時
「あ、」
と何かを思い出したかのようにないちゃんが 僕の方を振り向いて言った
「今回は、殺してもいいよ」
「……」
移動している時からなんとなく気付いてたけど、現場に着いて確信した
零番街の外れ、隣街との境目ぎりぎりに位置する路地裏の地下
入口の扉は錆で重く、下へ続く階段は廃墟のようにボロボロ
ないちゃんは多分、僕が1番乗りじゃなくても、此処にこさせたと思う
1歩1歩を踏み締めて階段を下りる
向かって正面の扉を開ければ、僕よりも遥かに大きい男が大刀を勢い良く振り回していた
少しずつ近付いてはみたが、気づく気配は一切ない
仕方なく、声を発す
「…ねぇ、おっさん。此処、僕の”家”なんだけど、勝手に入んないでよ」
「ぁ゛あ?んだ、唯の餓鬼かよ笑」
やっとこっちを見たかと思えばとんだ失礼を言ってきやがる
其奴の立ち姿を良く見れば、服には血、靴には土汚れ、おまけに足元には体を使われたであろう女
……汚い
腹の底からふつふつと怒りが沸いてくる
「ん〜?なんだぁ、怖くてうごけねぇか?」
五月蝿く、耳障りに笑う其奴
笑い声まで汚いとか、もう救えないよ
ゆっくり、時間をかけて近寄ってくる相手を無視して、部屋を見渡す
散乱した兜形や詰め紙、銃弾や縄
壁には捕らえられてしまった人々が抵抗したであろう爪痕や血痕、それと体液
ないちゃん…相手、雑魚ではなくない?
足元に跪かされた女を見ればわかる
生気を失った瞳と何日も放置されたような肌
服の布面積はほとんど無くて、身体中には刻み込まれた調教跡
「逃がさない」とでも言うように手脚に鎖が付いていて、天井に繋げられている
多分、抵抗したら吊し上げられて、鞭打ちと性拷問だろうな
反吐が出る
僕の物も、あんなに汚しやがって
怒りで体が震える
「ぉ、可哀想になぁ、震えてんのか?笑」
そう冷笑するおっさん
思わずため息が出る
そして、抑えきれなくなった怒りが僕の体を動かした
「きもい……二度と喋んな」
そう発した時にはもう、相手の息は止まっていた
心臓を中心にして、血管が紫色に膨れ上がり、所々青く痣になっている
口からは赤黒い血が垂れ、目は瞳孔が縮まり流涙している
あんなに煽ってたのにこんなすぐ死んじゃうなんて
「…な……なん…で……しん…でる……?」
震える声が聞こえて振り向いてみれば、酷く怯えた女が此方を凝視していた
「……死んでるよ」
質問の答えだけを返して、女に繋がれた鎖を解く
「……どぅ…やって…?あの人はッ…」
「力は通用しないけど、毒なら?」
「ッ……」
ひゅっと息を鳴らす女
そりゃ怖いよねぇ……こんなに可愛い男の子が毒とか言うんだもん
「…はい、鎖解けたよ。帰りな?」
そう言うと女は逃げるようにこの場を去った
姿を見送ってから、ないちゃんに無線を繋ぐ
「…ないちゃん、終わったよ」
「おー、お疲れ。どうだった?」
「殺したから死体処理お願いしていい?」
「はいよ〜、いむは?どうすんの?」
「部屋、掃除するから 」
「手伝おっか?」
「いらない」
素っ気なく断って、無線を切る
静まり返った部屋
地下に存在しているせいで、街の音も聞こえない
ただ、僕が踵を鳴らす音だけが響く
彼奴の事を引き摺る暇なんてない
天井に付けられた鎖を外し、散らばった塵を集めて纏める
壊れた机や割れた鏡なんかをできるだけ元の状態に直して、再配置する
そして、本題
血だらけになった壁をどうにかしないと
爪痕は後ほどコンクリートを流して消そう
血は磨けば落ちるかな、そう思って布を濡らして壁に手を当てる
……ふと、視線を下に落とした時
壁のすぐ下には白骨化した死体が2人分、寄り添うように置かれていた
それを見て少しだけ、手が震える
濡れた布を落として、頭蓋骨に手を置く
皮膚から伝わる感触は、冷たくて、何年も人に放置されたみたいだった
目を閉じて、両手を合わせる
「お疲れ様でした」そう口を動かそうとした瞬間
こと、と軽いものの落ちる音がした
そっと目を開ける
落ちたものを探して、死体の足の部分に髪飾りを見つけた
「ッ…ぇ……」
思わず目を見開く
息が乱れて、涙があふれる
くすんだ水色をした、星型の髪飾り
その髪飾りはかつて僕の両親がくれた、思い出の髪飾りだった