店を辞めようかと思ったこともあった、それでも辞められないことは彼女にも私にもわかっていた
たいした職歴もないのに勤め始めた仕事を、すぐに辞めるなんて無理だ
ましてやこのご時世次の就職口がいつ見つかるかわかったものではないのに
かといって子供の用に榊原さんの仕打ちを身近な人間に告げ口して回るのも大人げない
もちろん兄や弘美さんに言えば過保護な彼らの事だ、なんとかしてくれるだろうが
しかし私は立派な大人の女性だと言うことを証明したかった
なのであと3年はここに居座って頑張ろうと腹をくくった、その間に人脈を作りなんとか次のステップに登ればいい
昔は俊哉に翻弄されてついには、自分自身が何もかも信じられなくなったものだ
しかしあの時と今では違う、ひよっこもそれなりに試練をくぐり抜けてくると、この手の人間はたとえどこに行ったって世の中に存在するものだということがもうわかっている
男であれ、女であれ