テラーノベル
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#独占欲
#ワンナイトラブ
そのころの僕は、出社するだけで、胃が縮むような地獄にいた。
昇進し、管理職になった僕を待っていたのは、反抗的な部下と上層部との板挟みだった。
「……これ、全部やり直しってことですか?」
部下の一人が、絞り出すような声で言った。
上層部から突きつけられた無慈悲な仕様変更を、言われた通りに現場へ伝えたばかりだった。
「一か月後の納品までに対応してほしい。上からの決定なんだ」
「もう7割方終わってるんですよ?! ここまで積み上げてきた時間、全部なかったことにするんですか?」
詰め寄る部下たちの目は、軽蔑の色を帯びていた。
「結局、管理職になったら“上”の味方なんですね。一緒に汗を流してた俺たちのことなんて、どうでもいいんだ」
かつてはエンジニアとして、自分の技術さえ磨けば報われた。
でも今は、人の心という正解のない迷宮で、僕はただ自分の無力さを突きつけられていた。
(家でも会社でも、誰の期待にも応えられない“役立たず”なのかもしれないな……)
そんな折、彼女から言われた。
「治療をお休みしようと思うの」
時間が止まった気がした。
「最近、お互いちょっと無理してた気がするし……ね?」
彼女は、努めて明るく微笑んだ。それが僕を気遣っての優しさだと、頭では分かっていた。それでも――
(……もう、終わりなのか)
そんなふうに、聞こえてしまった。
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