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2人とも夢中で作業をしていたから今の今まで時計を見る事をせず、それはもちろん桐葉さんも同じで溜め息の意味もよくわかる。
「こんな時間だったとは……」
「えぇ。全然気にしていませんでしたね」
お互い壁に掛かっている時計の秒針を聞きながら、愕然と肩を落とす。これって数時間前に『早く帰れるヤッター!』って喜んだ罰なのかな。今までで1番遅い残業だと思うし。
「お前、終電がないって言ってたがどうするんだ? 帰れるのか?」
「それは無理ですね。電車で1時間は掛かる距離ですし、足がないので。だから近くのビジネスホテルでも探してみます」
鞄からスマホを取り出して近場のビジネスホテルを検索してみるも、こういう時に限ってどこも満室で予約が取れない。普段ならどこかしら空いてるのに、どうして今日に限って運が悪いんだろう。
もうここで夜を明かすしか他に方法がない。始発の電車に乗って帰ればシャワーと着替えくらいなら間に合うかもしれないと、半ば開き直って彼に別の提案する事に。
「支配人が帰ってください。残りは私がやっておきますので」
「はあ?」
桐葉さんは眉を八の字にし眉間に皺を寄せながら、私に『何を言っているんだ』と不機嫌な顔で聞く。
「あ、もしかして支配人の家も遠いんです?」
「そういう問題じゃない」
ご機嫌ナナメにピシャリと否定されてしまった。