ぶらりと暑い太陽を逃げるように日陰を走るいつもの無線はやれバナナボートや砂の城やらで賑やかでよろしい
季節は夏、ギラギラな太陽は輝き,着実に体力を掠めとる
日本人は、虫の音に敏感らしい
確か蝉のあの声を聞くと体感温度が上昇するそうだ
実感した記憶がないのでなんとも言えないがもし、この街でも、鳴くならきっと今より熱く感じるのだろう
待った、勘弁してほしい
日陰を縫って歩いていると無人販売所
治安が悪いのに無人販売とは割とチャレンジャーがいるもんだ
いや、ここの犯罪者は無駄に律儀か、しっかりお金を払ってくれるし
脳内ににっこり夕コさんが浮かび慌てて首を振って消した
あの人たちは別枠だろう
ぼーっと商品達を眺めていると日本語のシールが張ってある果物、黒と緑の模様、夏の代名詞とも言えるそれと目があった
冷やして食べると美味しいだろうな
そんなことを考えていたらつい購入してしまった
大きな丸々としたスイカを両手に抱え、困ってしまった
「…これ一人じゃ無理ですね」
さすがに食いきれんだろう…いやいけるか?
自問自答の末先延ばしを選び車に詰め込む
無線からギャーという悲鳴と個人医-!という切実な声が聞こえた
どうやら賑やかな無線の皆さんはサメに現在進行形で襲われているらしく
先程まで賑やかだった音成さんが沈黙し、変わりにバニさんが叫んでいる
《向かいます!通知お願いします》
ピコンと海で通知がなった
よかった近くに来ていて
砂浜に車を止め海へと走る、助けなくては!
無線では今も悲鳴が聞こえる
救急バックを砂浜に転がし海へと飛び込む
波をかき分け、沈む人影を視認し力任せに引っ張り砂浜に投げ捨てる
ドシャという音と音成さんの悲鳴が聞こえるがしばらく待っていてほしい
868の皆さんが集まってくるのを確認して再び海へ潜る
こぽりと泡が上にあがっているバニさんを見つけた
ピコンとダウン通知
足元にはサメがひぃ、ふぅ、みぃ
引き剥がし襲われないよう砂浜に投げる、ケインさん達のナイスキャッチという声が聞こえた
どうやらバニさんは運が良かったらしい
自分も襲われないよう慌てて海から上がる
ぜぃぜぃと息があがるがお構いなしに音成さんの処置のため、走って向かう
「だぃじょうぶ…ですか」
「死なないだろ、しぶといし」
「店長、心どこに置いてきたんですか」
「知らん」
「ぐっさーん、投げんくてもよかったんじゃないの?ズシャーいったで」
「すみませんサメが来てたもんで」
「あーたすかるぅ、ありがと」
「いえいえ」
雑談しつつ松葉をつける
よし大丈夫そうだ
「ぐち逸!バニ連れてきたヨ」
「ありがとうございます」
芹沢さんが首根っこをずりずりと引きずって、バニさんを目の前に落としてくれたありがたい
「ぇ、酷くない?ぐち逸さんも反応無し?」
体勢を整え処置を進めていきちゃっちゃと松葉杖をこれでもかと手に固定する
「5分間安静にしてくださいね」
「はーい」
さてそろそろ戻るかと車へ目線を向けると、ロックピックを片手に持ったレダーさんが先程まで積んであった私が買ったスイカを指差しにんまり笑った
「なぁぐち逸これ食べね?」
「ぜひ、食べましょう」
お陰さまで汗もだくだくだ、きっと冷して食べたら凄く美味しいだろうということが想像できたため
こちらも負けじとにんまりと笑い返す
となりの夕コさんが何故かナイフを取り出す
「えっ?なんでぐち逸目そらす?」
さすがに隣でゼロ距離ナイフはびびるだろう
それを知ってか知らずかタコさんはずんずん進みちゃっかりスイカ抱えたレダーさんからスイカを受け取る
これおめぇー何て言いながらレダーさんの隣のケインさんにスイカを明け渡して鍵が開いた人の車に我が物顔で乗り込む
「おい!ぐち逸早く乗れ!」
「いや、これ私の…」
「そうやでぐっさん!ほれ手貸してやるよ」
「ぐち逸さん諦めましょうこういう人たちです」
はぁとため息とともに力がフッと抜けて、彼らの手をつかむ
「せめて安全運転でお願いしますね」
「オッケ!レダーぁ!なる早!マンションまで!」
「マカセロー」
もちろん法定速度を守るわけもなくぐわんぐわん荒れる車にグロッキーになりながら、構成員だらけのマンションへ
バーベキューができる広めの場所で2つのスイカを氷につけながら雑談をかまし
丁度よくスイカも冷えたので包丁を渡される
なんだ切れと言うことか
丸々とした黒と緑
ひやひやする皮に手を添えて包丁を入れる
大きいせいなのかなかなか切れないがザクザク刃を入れる
パッカリと2つに裂けた中の黄色が瑞々しく眩しい
くし切りにしてザクザクと切り大皿にドサドサと置いていく
「おっ黄色!」
「珍しいね赤だとばっかり」
「自分も赤色だと思って買いましたね」
「まぁ良いんじゃね?」
雑談しながらバツンバツンと大皿にドサドサと置いてもうひとつのスイカを氷水からザバンと取り出す
先程同様ぴやぴやの皮に手を添えて包丁をいれる
バツン
チラリと見える中の色はお馴染みの赤色
オオーっと思わず868の皆さんからも歓声が上がる
なんだか黄色のスイカより美味しそうに見えるのが不思議だ
こちらも負けじとつやつやと輝いている
ザクザクと切り違う大皿に乗せ、各自思い思いに手に取る
誰かが言った、いただきますの一言を皮切りに、手に持っている黄色のスイカを齧る
シャクシャクとした甘い果汁はさっぱりしていて1口頬張るたびに、なんだか夏だなぁと実感する
蝉の音等よりよっぽど夏らしいと思うのだ
1口、また1口シャリッと音を鳴らし、所々ある種子をペッぺと口からテイッシュに出していきあっという間に手から消えていく
赤色スイカを手に取る、レダーさんは塩をスイカにふりかけこちらに使うかと置いてくれたが違うのだ
「すみません、粗びきの胡椒ってありますか?」
そう邪道かもしれないが、これがまた美味しいのだ
えぇ?こいつマジ?という若干引きぎみな目を向けながら、調味料セットからはいっと粗びきの胡椒の瓶を渡してくれた
皿にスイカ、上から胡椒をぱらぱらと振り落とす
そしてスイカをパクり
シャクリ、ブワッと果汁が口一杯に弾け、甘いだけではなく胡椒がピリリとすることで単調だった味がまた違った雰囲気を纏って非常に幸せなのである
シャク、シャクと食べているとトピオさんも真似をしていたようで
「えっ?これ意外とイケる!なんか食べごたえが増す」
「嘘だぁ、JD食べてみ? 」
「オッケ、ムグッ…案外イケるわ割と好きだこれ」
「えー、少し頂戴」
仲が良くてよろしいことだ
五個目のスイカを手に取り、調味料セットからタバスコをペッとかけて頬張る
そんな私をとある機械に見られて、レダーさんにゲテモノ食いかもと密告されるまでそんなに時間はからなかった