テラーノベル
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コメント
10件
雰囲気すごい✨
初のノベル✨ 元々趣味で書いていた小説をリメイクしたよ〜っ‼︎ 見てくれたらコメントお願いします(*´꒳`*)‼︎
おもしろそう!!! 雰囲気がめっちゃ良くて💓💓 続きも見させてもらうね-!!
2月の頭、時刻は午後十時。吐く息が白い。ほんのり赤くなった指先に息を吹きかけ、コートに腕を突っ込む。
(やっと見えてきた…)
瑠衣は、ある町を訪れていた。小さく、人口が少ない町。家々の間隔が狭く、近所同士が仲の良い穏やかな所だ。
瑠衣が着いた時には、夜にも関わらず、昼間のように明るかった。琥珀色のランタンが家々に吊るされ、町全体を優しく包み込んでいる。
どことなく幻想的な景色は、言い表せない感情を呼び覚ました。
軒先に吊るされるランタンの光が揺れる。一つ、また一つと視線を動かす。何年もここを離れていたのに、まるで昨日までここにいたような。それでいて、月日が隔てた壁越しに見るこの町は、全く知らない場所にも見えた。
その時不意に、背後から懐かしい声が聞こえた。
「あら、瑠衣くん!久しぶりねぇ」
後ろを振り返ると、背筋がぴんと伸びていて、元気そうなおばさんが立っていた。前に会った時より少し皺が増えたが、笑う時のくしゃっとした顔は全く変わっていない。
「千代子おばさん!久しぶり!」
瑠衣はその顔を見て、ぱ、と花を咲かせた。勢いよく抱きしめると、石鹸のような懐かしい香りがする。近所のおばさん。小さな頃からよくしてもらっていて、彼女と出会うと幼かった日々がところどころ蘇ってくる。
「大きくなったねぇ」
「へへ。おばさんこそ、元気でよかった!」
千代子おばさんは、瑠衣を見て指折り数えながら言った。
「5年ぶりじゃない?」
「ほんと、久しぶりだ」
「寂しかったのよ。瑠衣くんが
いなくなって、街が静かになっちゃって」
そうかな、と返しながら一緒に歩き出した。積もる話も多い。瑠衣は、千代子おばさんからの質問攻めに遭いながら町を眺めた。
ふと、町の中央にいる青年が目に入った。バーにあるような高めの椅子に座り、机に頬杖をついている。ハーフアップにされたロングボブの髪が夜風に揺れた。
「おばさん」
「ん?」
横で楽しそうに話していた足が止まる。
「あの人、町にいたっけ」
指さされた方を見て、彼女は一瞬黙った…が、すぐに口を開いた。
「観光じゃないかしら。この町は景色が綺麗だからねぇ」
「そっか」
ちらり、ともう一度見やる。あの物憂げな表情、頬杖をついた姿。
どこかで、見たことがある気がする。
けれど思い出せない。
(まぁ、いっか)
千代子おばさんの声に引かれるように、瑠衣は再び歩き出した。
小さな違和感だけを、置き去りにして。
それからしばらく話した後、おばさんに手を振って別れる。
そして、瑠衣は軽い足取りで町中を歩きだした。目的地は実家。昔、母と二人で暮らしていた家だ。
手作りのリースが飾ってある扉。昔から母が趣味で作っていたもの。これが変わるたび、家に帰るのが楽しみだったことを思い出した。
「ただいま」
ことことと鍋の音がするリビングに向かって叫ぶ。一瞬の沈黙の後、母の声が聞こえてきた。
「瑠衣!?」
どたどたと玄関に出てきて、目を丸くする。
「どうしたの!?」
「……?帰るって言ったじゃん!」
「ただいま!」
瑠衣は急いで靴を脱ぐと、母を倒すような勢いで抱きついた。
「おかえり……って、ちょっと!成人にもなって抱き着くなんて、お母さん倒れちゃうわ」
「えへへ、ごめんごめん!」
懲りない様子で頭をかきながら、母から離れる。
「でも、その時は支えたげる!」
「もう、かっこいいこと言っちゃって」
母は呆れながら、困ったような笑顔で瑠衣の肩を叩いた。
「あぁ、そういえば。なんで今日来たの?お母さんびっくりしたわ」
「なんでって…あれ、今日じゃなかったっけ」
「明日って聞いたけど…だから、瑠衣が好きなビーフシチューの仕込みをしてたの」
「やっぱそうだよねっ!?」
先程の疑問はどこへやら、瑠衣の瞳が輝く。炒めた玉ねぎの甘い香りや、じっくり煮込まれた牛肉の香りがリビングに広がる。
来る前に食べたのに、またお腹が鳴りそうだった。
「ちょっと食べたいっ」
思わず口に出す。
「だーめ、明日が美味しいの」
「えぇ、今日でも絶対美味しい!」
こんな良い匂いをさせておいて、お預けなんてある種の罪だ。
「瑠衣はいつもそうだったわね、ビーフシチューの時」
キッチンに戻りながら笑う母の背中。帰ってきたんだな、と今日何度目かの実感が湧いた。
荷物を整理しながら、母の言葉を思い出す。
『何で今日来たの?』
確かに、明日行く予定だったし、着いたのは22時過ぎ。こんなに遅い時間。
「……」
「瑠衣?」
瑠衣が黙り込んだのを見て、母が声をかける。
「…なんだか、今日帰らないといけない気がしたんだよな」
「……!」
瑠衣の呟きに、母の目の色が一瞬、強張った。
気まずそうに目を逸らし、机を拭き始める。
「…さ、長旅疲れたでしょう?早くお風呂入って寝なさい」
「はーい…」
母の言い方に引っかかりを感じながら、結局、泥のように眠ってしまった────。