そんなわけないのに
は、?
だてさんとは違う声が聞こえる
いや、聞こえるというより、体の奥から語りかけられているみたいな……
本当は好きじゃないのに
こんなやつと恋人なんかなりたくない
なんでこいつとなの
誰だ、誰なんだ
俺の声に似てる……ような
やばい、なんか、頭がクラクラして……
「阿部、?」
「阿部!?」
その声を最後に、俺の意識は
奥底へと追いやられた
「なんでお前なんだよ」
「え、?」
「なんで宮舘なんだよ!!」
「お前ばっかり幸せになりやがって!」
なんだ、何が起こっている?
「やっとか」
「やっと姿を現した」
ドン、と壁に打ちつけられる
「やっとだ」
俺の知ってる、だてさんじゃ、ない
喋りたいけど、喋れない
口を動かそうとしても、やり方が分からない
どうやって口を動かす?
どうやって喋る?
「お前は、誰だ?」
力が加わり、肺が圧迫される
「やめろよ笑」
力が緩められる
「あぁ、外の空気は美味しいな」
「何年ぶりだ?」
「あの日__」
「お前に殺された日からどんぐらい経った?」
今にも泣きそうな声で、俺が問いかける
「13年、かな」
「はは…もうそんな経つのか……」
「早いなぁ、時の流れは」
殺された…?
あの日……
13年前、何があった?
思い……だせない……
記憶が、抜き取られたように、
13年前の記憶が、
いや、
それ以前の記憶も、ない
思い出せない
俺はあの時……何をしていた?
「てことは今俺は……29か」
「もうおっさんだな笑」
「そうだね」
「さっきまでのやつがなんか苦しんでんな」
「……そうだよね」
すると、頭痛が襲う
痛い、痛い
なにかに締め付けられるような痛みが襲う
すると、不思議な感覚になる
体が浮いていくような、感覚
痛みが引いていき、目を開ける
「だてさん」
喋れた
「ごめん、阿部」
苦しそうな顔をする
なんで?なんでそんな顔をするの?
こいつがお前を殺したからだよ
殺した…?
さっきから何を言っているのか分からない
なら、あいつの口から説明してもらえばいい
本人の口から聞くのがいちばん早い
撮影が終わった帰り道
俺は佐久間だてさんと帰っていた
運転は佐久間
後部座席に俺とだてさんが座っていた
「お前らマジで演技力高くね?」
「いやいや、全然だよ」
「宮舘ですから」
「なんだよそれ笑」
こんな会話すらも楽しい
「大丈夫だった?ちょっと強かったよね」
だてさんにそう聞かれる
「いや?全然痛くなかったよ?」
「むしろこれでいいのかってぐらいだし笑」
「マジで阿部ちゃん優しくね?」
鏡の中の佐久間と目が合う
「ほんと、阿部で良かったよ」
俺、そんな優しいかな?
「「無自覚が1番優しいんだよ」」
コメント
6件
片思い中ですかー?笑 ってか、最後の会話尊いな、、
最後のコメント、、絶対に付き合ってるか片思い中だろー! 続き楽しみにしてます!