結局浅い眠りを繰り返し朝を迎えた。
頭痛は少しだけ残っている。
jpはいつも以上に口数が多くそわそわと落ち着かないが、それは少しの不安だったり喜びだったり、期待から来るもののようだった。
遅めの朝食を軽く摂ると、二人揃って家を出た。
お土産をいくつか選び、電車に乗り込んだ。
目的の駅に着いたのは昼すぎで、約束の時間までは余裕がある。
予定通り、少し移動して観光することにした。
週末の観光地は人に溢れており、逸れないようしっかりと手を繋ぐ。
その様子をジロジロと見て来る老若男女がいたが、いつものことだ。
気づかないふりをして二人は食べ歩きを楽しんだ。
約束の時間ぴったりに高層マンションの一室にたどり着いた。
インターホンを鳴らすと、明るい声がしてパタパタと近づく音が聞こえてくる。
ドアの向こうから出て来た男女は、二人を見ると満面の笑顔を見せた。
「おかえり」
「ただいま!父さん母さん」
出迎えてくれたのはjpの父親と母親だ。
ttも何度か会ったことがある。
嬉しそうに頬を緩めるjpの両親は、少し後ろに立っていたttにも優しく声をかけた。
「ttyくんも久しぶり!来てくれてありがとう」
「良く来たね」
「お久しぶりです」ペコ
「さ、あがってあがって!」
グイグイと引っ張って行くのは流石jpの母親だ。
緊張しているttは背中を押されながら、リビングに入った。
促され座るソファからは、立夏の爽やかな空が見える。
風に揺れるカーテンは真っ白で、眩しいくらいだった。
その窓際に置かれた棚の上にはたくさんの写真立てがあり、夫妻の結婚式やjpの幼少期など、様々な時代の家族写真が笑顔を見せている。
新しいとは言えないけど綺麗に整えられたこの部屋は、家族3人の愛情と軌跡を色鮮やかに映し出していた。
jpとttの前に冷えたコーラと請け菓子を出した母親は、前に腰掛けると顔を覗き込むように話し出した。
「元気そうで安心した」
「もう体はバッチリ問題ないよ。ttが色々面倒見てくれてるし、ほんとありがたいよ」
「そうなのね。ttyくんいつもありがとう。この子はttyくんに頼ってばかりね」
「ぉ、俺の方こそいつも助けてもらってるんで…」
「…そもそも怪我したのも俺を…」
ttはグラスに添えた手に力を入れ、目を伏せた。
慌ててjpが肩を掴む。
「!、tt違うよ!俺が、、!」
jpの両親も、事件の内容は本人と警察から聞いて知っていた。
友人が良からぬ2人組に目をつけられて暴行を受け、それを助けるために息子が一時重体にまで陥ったと。
お見舞い時にばったり会ったttは、jpの両親を前に頭を床に付けた。
「俺のせいです…本当にすみません」
大病院のロビー、大勢の人の前で床に這いつくばる息子の友人は、肩を震わせていた。
罪悪感に押し潰されかけていたのだろう。
その小さな肩に優しく触れれば、声を押し殺すようにして泣いた。
「…まだ自分のせいにしてるんだね」
jpの父親が口を開いた。
jpより背の高い父親は、低いながらも優しさを含んだ心地よい声をしていた。
「正直この子が意識を取り戻すまでは生きた心地がしなかったよ。でもね、友達を守って刺されたって聞いて、勇気のある子に育ってくれたんだって誇りに思えたよ。」
母親も床に膝をつくと、ttの心をほどくように、グラスを握る手を優しく包み込んで言った。
「そうよ。命をかけて守りたい程の友達がいるってすごいことだから、私達も嬉しい。これからも仲良くしてあげてね」
優しく微笑むjpの両親。
隣のjpも、ポンポンと肩を優しく叩いた。
ttは心の底がじんと、泣きたくなるほどの優しさに暖かくなるのがわかった。
「二人は友達っていうより、相棒かな」
「兄弟じゃないか?もちろんttyくんがお兄ちゃんで…」
そんなことを言いながら笑い合う両親を見るjp。
二人の元に生まれてよかったと心から思う。
だから俺の思いと決意を、隠さずに話したい。
jpは背筋を伸ばすと改まった声で言った。
「…父さん、母さん。俺、二人に聞いてほしいことがある」
ttの右手を握り、両親の目をまっすぐに見つめた。
「俺たち、ただの友達じゃない。愛し合ってるんだ」
コメント
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🦖さんの両親まじ優しい😇どんな反応されるのかわくわくしてます!!!!