テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
竜牙さんが、どうにもお風呂を一緒に入るのを嫌がる。
その不自然な拒絶に俺がハッと気付き始めたのは
付き合ってちょうど二ヶ月目が過ぎようとしていた頃だった。
最初は、単純にあの人が極度の「照れ屋」なんだと思っていた。
だって竜牙さん、あの強面でガラガラに悪い見た目のくせに
恋愛に関しては変なところでウブだし。
俺が不意打ちでキスするたびに、視線を泳がせて照れるし。
面と向かって「竜牙さん、好き」ってストレートに愛を囁けば
どうしていいか分からないみたいにハの字の眉をさらに下げて困った顔をする。
この前なんて、ちょっと悪ノリして彼の首筋に思いきり深い噛み痕を残してやったら
翌朝、洗面所の鏡を見ながら耳まで真っ赤に染めて固まっていた。
「……慧斗、これ、カッターシャツの襟でも隠れないだろ」
「えー?そんなことないって、ちょいエロで似合ってるよ」
「お前なぁ、常連のマダム連中に見つかったら、手ぇ叩いてオモチャにされるんだぞ」
「ちぇー。じゃあ次は、服に隠れて絶対に見えないところに付けてあげる」
「……そういう問題じゃないんだが…」
なんて頭を抱えて溜息を吐きながらも、竜牙さんは一回だって本気で俺を怒ったりはしなかった。
むしろ、怒るどころか
どこか愛おしそうに俺のワガママを受け入れて、ちょっと嬉しそうにさえ見えるのだ。
だから、俺もついつい調子に乗っちゃうんだよな。
だって竜牙さん、俺に対してだけは、本当に底なしに甘いから。
今日もそうだった。
バーの夜の営業が終わり、そのまま流れるように竜牙さんの家へと転がり込んだ俺は
彼の部屋のソファで我が物顔でだらだらと寝転がっていた。
「慧斗、腹減ってないか?」
エプロンを締め直しながら、竜牙さんがリビングを覗き込んでくる。
「うん、減った。めちゃくちゃ減った」
「パスタでいいか。トマトソースか、ペペロンチーノならすぐできるぞ」
「えー全部食べたい」
「どれかひとつにしろ」
あはは、と笑いながらキッチンへと引っ込んでいく後ろ姿を
俺はソファに顎を乗せたままじっと見つめる。
(……それにしても、相変わらずデカいなぁ)
男の俺から見ても惚れ惚れするくらい、肩幅が広い。
がっしりとした分厚い背中は
部屋着の黒いTシャツ越しでもはっきりと分かるほど、逞しい筋肉のラインを主張している。
ただ立っているだけでも普通に威圧感というか、男らしい迫力があるのだ。
……まあ、俺は彼のその「オス」としての強そうな体格も、含めて全部大好きなんだけど。
むしろ、腕の中にすっぽり収まった時に
全身で“守られてる感”を味わえて、言葉にできないほど安心する。
料理のいい匂いが漂い始めたキッチンのカウンターを回り込み
俺はフライパンを振る竜牙さんの後ろから、その広い背中に遠慮なくギューッと抱きついた。
「うおっ、危ないだろ。今火ぃ使ってんだから離れろ」
「やだ。竜牙さん、なんかいい匂いする」
「……ただの酒と、店の煙草の匂いだろ」
「んーん、それも含めて全部好き。落ち着く」
「お前はほんと、付き合ってから距離感のバグに拍車がかかってんな……」
#ざまぁ