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口では呆れたように文句を言いつつも
竜牙さんはフライパンを持っていない方の大きな手で、俺の頭をポンポンと優しく叩いてくれる。
もう、好き。マジで好き。
胸の奥がキュンキュンして弾けそうだ。
「……ねえ、竜牙さん」
「ん?」
「今度の連休さ、二人でどっか旅行行こ」
「旅行?」
「うん。ちょっと遠出してさ、温泉旅館とか泊まりたいなーって」
その瞬間
背中に頬をくっつけていたから、はっきりと分かった。
竜牙さんの肩の筋肉が、びくっと強張るように揺れたのだ。
……あ、まただ。
この反応、前にもあった。
「……あー、温泉はなぁ。ちょっと、今は時期が悪いっていうか」
「嫌なの?」
「嫌っていうか、その……何だ」
急に歯切れが悪くなって、言い訳を探すように視線を泳がせる。
俺は竜牙さんの背中に背伸びして頬をくっつけたまま、じわじわと不満を募らせて、猫みたいに目を細めた。
「ねえ、竜牙さん」
「ん?」
「なんでそうやって、いつも俺に『見せてくれない』の?」
「……何をだよ」
「体。……っていうか、プライベートな部分全部」
一瞬で、キッチンから言葉が消えた。
ジュージューというトマトソースが弾けるフライパンの音だけが、やけに大きく店内に響く。
やっぱり、あからさまに避けている。
絶対に何かを隠している。
「俺さ、別に男のムキムキした体、嫌いとかじゃないよ?むしろ細いだけの奴より全然いいし」
「……」
「むしろ、竜牙さんの体、男らしくてめちゃくちゃかっこいいと思ってるんだけど」
俺の精一杯の褒め言葉に、竜牙さんはしばらく黙った後、小さく鼻から息を抜いて笑った。
だけど────
その笑い方は、どこか自嘲気味で、ひどく寂しそうな、妙な歪み方だった。
「慧斗は、自分みたいな可愛くて綺麗な奴が好きなんだろ」
「それはそうだけど……それが何?」
「なら、俺はその理想とは真逆の生き物だろ。ゴツくて、可愛げがなくて……」
「もう、何言ってんの?」
意味が分からなすぎて、俺は竜牙さんの背中から勢いよく離れた。
そして横に回り込み、下から彼の顔を覗き込む。
「真逆って何?竜牙さん、自分のことゴツくて可愛げないって思ってるわけ?」
「……客観的に見てそうだろ」
「いや、俺から見たらめちゃくちゃ可愛いんだけど?」
「どこがだよ」
「全部!!」
一秒の躊躇もなく即答してやると
竜牙さんは露骨に「参ったな」という風に眉根を寄せて、耳まで赤くして困り果てた顔をした。
「お前は……主観がバグりすぎだ」
「バグってないって。竜牙さんこそ、自分の価値とか魅力とか、絶対に分かってなさすぎ」
「はいはい、分かったから。パスタ伸びるぞ、運ぶの手伝え」
またそうやって、話を流す。
でも。
こういう「容姿」や「体」の話をする時の竜牙さんは、いつも一瞬だけ
胸の奥を抉られているみたいに苦しそうな目をするのだ。
それが、どうしても俺の胸にトゲのように引っかかっていた。
◆◇◆◇
食後
リビングで一緒に映画のサブスクを見て
一つのブランケットに包まってだらだらして、何度も深いキスを交わして。
その甘い雰囲気のまま、自然な流れで寝室のベッドになだれ込んだ。
「…っ、けい、と……」
重なる熱い吐息の中で、キスを繰り返しながら
#ざまぁ