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玲央、行方不明
玲央が大波に飲み込まれてから数日が経った。
船の上には、重く沈んだ空気が漂っている。
波の音だけが静かに響き、普段なら活気に満ちている仲間たちの声はほとんど聞こえなかった。
⸻
沈黙する仲間たち
龍水はずっと海を見つめたままだった。
普段はどんな時でも自信に満ちた態度を崩さない彼の目が、わずかに揺らいでいる。
その隣で、ゲンも珍しく口を閉ざしていた。
コハクは腕を組んで俯いており、クロムも何かを言いたそうにしながら、歯を食いしばっている。
その場の誰もが、玲央の安否について口に出せなかった。
ようやく、誰かが口を開く。
コハク「……玲央は、必ず生きている。」
その言葉に、誰も反応しない。
皆、玲央の生命力を信じてはいる。しかし、あの荒れ狂う嵐の中、大波に飲み込まれたとなれば――
生きている可能性は、限りなく低い。
⸻
千空は地図を広げ、じっと海流の流れを見つめる。
千空「嵐の勢いと、あの時の海流の流れ……。」
指で地図をなぞりながら、冷静に状況を整理していく。
千空「この状況で玲央が流れ着くとすれば、アメリカ大陸のどこかか、それとも……。」
そこまで言いかけて、千空は言葉を止めた。
行方が分からない以上、玲央がどこにいるかを正確に特定するのは不可能だった。
ましてや、今この場で「生きている」と断言するのも、難しい。
クロムが不安そうに千空を見つめる。
クロム「なぁ千空、本当に……玲央は助かるのか?」
少しの沈黙の後、千空は短く答えた。
千空「……知らねぇ。」
⸻
玲央の死を受け入れられない仲間たち
その言葉に、ゲンが目を伏せる。
クロムは「そうだよな……」と、小さくつぶやいた。
龍水は何も言わないまま、ただ海を見つめている。
しかし、誰も「玲央は死んだ」とは口にしなかった。
認めたくなかった。
それでも、今の状況では探しようがない。
次第に、「玲央はもう戻ってこないのではないか」という思いが、仲間たちの心に広がっていった。