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恋だとか愛だとか言ってらんない。
雨が降っていた。
窓の外で誰かの傘が風に煽られている音がする。
夜の街に溶け込むように、いるまは誰かの部屋のベッドの上にいた。
タバコの煙。シーツの匂い。
どれもこれも、アイツのものではない。それでも目を閉じれば、浮かぶのはいつだって、
黒髪をかき上げるしぐさ。少し低めの声。
無自覚に残酷で、やさしくて、何も知らないあの男の顔だった。
シャワー音が聞こえる。
今夜の相手の名前すら覚えていない。
けれどそれでいい。
この時間だけは、アイツのことを考えなくて済むから。
ずっと、好きだった。
ガキの頃から、目で追ってた。
アイツは気づいてなかったかもしれないけど、いるまはずっと、視界の中にいた。
声が聞こえるだけで、世界の色が変わる気がした。
その笑い声を聞くたびに、胸が痛くて苦しくて、それでも離れられなくて。
どうしようもなくて。
ただ、言えなかった。
男が男を好きだなんて。
まして、今となっては、教師と生徒なんていう立場で。
幸せそうに左手の薬指に指輪をつけてしまったお前になんて、
初めてそれを知った日の夜、
部屋で書いたリリックを破り捨てた。
そんな時だった。
自分を見てくる女がいた。
「いるまくんって、ミステリアスだよね」
そんな薄っぺらい言葉にすら、救われた気がした。
気づけば、ベッドの上にいた。
最初は吐きそうだった。
けれど、何度目かになる頃には慣れてきて、
「これは、俺がアイツを忘れるための儀式だ」って自分に言い聞かせるようになった。
だけど、本当は。
ひとつも、何も、満たされてなどいなかった
雨が降っていた。またしても。
🌸「いるま、」
不意にかかる声に、背筋が凍った。
振り向くと、学校の裏手。放課後。
傘もささずに立っていたのは、紛れもなく、アイツだった。
📢「……なんか用、？」
🌸「…ついてこい」
それだけ言って、らんは歩き出す。
拒めるはずがなかった。
心臓がうるさい。なぜこのタイミングで。
なぜ、今。
案の定、連れて行かれたのは、誰もいない音楽準備室。
楽器のケースと譜面台が無造作に並ぶその空間に、二人きり。
🌸「……聞いた」
らんの声が、低く落ちた。
その声は、妙に速さを帯びながら続く。
🌸「お前が、最近いろんなやつと寝てるって」
息が止まった。
🌸「どういうつもりだ？」
📢「どうって……別に、俺の勝手じゃね」
🌸「勝手で済む話じゃねぇだろ」
📢「なんで？、俺が誰と寝ようが、お前には関係ねえだろ」
言ってから、気づいた。
これは、泣きたい時にふざける子供の言葉だ。
強がることでしか、自分を守れない。
アイツが睨んでくる。
その目は怒りと、何かもっと得体の知れないもので濁っていた。
🌸「どうして、そんなことしてんだよ」
📢「……」
🌸「誰とでも寝ることで、何が埋まるんだよ」
その声に、はじめてほんの少しだけ、コイツの“感情”が混じっていた気がした。
怒りでも悲しみでもなく、もっと近い、もっと恐ろしい何か。
だから、笑ってみせた。
📢「知らねーよ、笑
でも少なくとも、寝てるときだけは、お前のこと考えなくて済むんだわ。」
「それだけで、俺にとっては十分意味があんの」
返ってきたのは、重たい沈黙。
そして次の瞬間＿＿＿＿＿＿
ぐいっと、一気に胸元が苦しくなっ。
らんが、胸ぐらを掴んできた。
距離が近い。呼吸がぶつかる。
その目に、怒りと、焦りと、執着が混ざっていた。
🌸「ふざけんな」
📢「……っ、ぃ゛」
🌸「お前が、そんな風に自分を汚していいわけねぇだろ」
📢「、っ…、゛なんでお前にそんなこといわれなきゃいけねぇんだよ、っ」
言いながら、涙が滲んだ。
こんなはずじゃなかったのに。
どうせ見向きもされないまま、一人で終わるはずだったのに。
📢「俺が誰を見てようが、お前は俺のことなんかどうでもいいんじゃなかったのかよ」
🌸「違ぇよ」
らんが吐き捨てるように言った。
🌸「違う……だからムカついてんだよ」
📢「……なにが？」
🌸「…お前が誰と寝たかとか、そんなもんどうでもいいって思ってたのに……」
「でも、聞いた瞬間からずっと、お前のことしか考えらんねぇんだよ」
📢「……それって」
🌸「これは絶対に“好き”とかじゃない。」
📢「、っ…」
🌸「俺はたぶん……お前のことが、気になって、気になってしょうがないんだよ、誰にも触れてほしくなくて……」
「でも、“愛してる”なんて、軽々しく言えない」
📢「……、」
🌸「ただ……俺の知らねぇお前が、俺以外の誰かの中に存在してるのが、
どうしようもなく、ムカつくんだよ。」
それは恋ではなかった。
だからといって愛でもなかった。
でも、確かに“なによりもおもたいなにか”だった。
そして＿＿
そのまま、ふたりは何も言わずに、見つめ合った。
近づいた唇は触れなかった。
抱きしめもしなかった。
雨は静かに止んだようだった。
コメント
2件
やっぱりタイトルから神ってる😭💘💘 うわん、紫さんがたらし系なのも、桃さんが気にしたりしてんのもらぶ(🫵🏻 ᴖ ̫ ᴖ) 愛があっていいなとおも う⸝⸝ơ ơ⸝⸝ いやぁ、もう全部桃さんだけが思いって話じゃない気がして気にしてる😘😘😘 桃さん紫さんのことが気になってしょうがないってなにつんでれかよ😩🎀 投稿お疲れ様ー‼️😭🩷
