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翼と別れた後、私は久しぶりに電車に乗った。

昔、会社に勤めていた頃には、毎日麗と電車通勤をしていた。

満員電車に揺られて大変な事もあったけれど、麗と過ごす時間は楽しかった。


電車なんて、本当に久しぶり。

午後8時を回って比較的席も空いている車内で、私は1人電車に揺られる。

久しぶりに飲んだお酒のせいで、ちょっと気持ちよくなってきた。


うーん。なんだか眠い。

でも、早く帰らないと。

遥はお母様にお願いしてきたけれど、私がいないと寝られない子だし、賢介さんにも黙って出てきた。

いくら残業の予定だからって、帰って私がいないと心配するはず。

こんなことなら、「遥を心配して仕事を切り上げさせても悪いから、私が外出することは黙っていてください」なんてお母様にお願いしなければよかった。

困ったなあ。どうしよう。


そんなことを頭の中で巡らせながら、私はいつしかウトウトと眠っていた。


***


「琴子。ねえ琴子」

懐かしい声に呼ばれて、私は目を覚ました。


ん?


「もう、いつまで寝てるのよ」


「・・・」


「琴子、大丈夫?」


この声は・・・


「麗?」

声のした方を振り返る。


そこに、麗がいた。


「本当に麗なの?」

病気でやせこけてしまう前のモデルのような麗がそこにはいた。


***


「本当に麗なの?」


「しつこいわね」


うわー、いつもの麗だ。


「麗、私あなたに話したいことがたくさんあるの」

やっと目が覚めた私は、一気にしゃべり出した。


「遥は、随分大きくなったのよ。まだ周りの子より小さいけれど、足も速いしお話だって上手で、とってもいい子」


「うん」

笑って頷きながら、麗は聞いている。


「でも最近自我が出だして、わがままが過ぎるときがあるのね。その上、お父様もお母様もお手伝いさんまでがみんな遥の言うことを何でもきくものだから、調子に乗って」


「そう」

ちょっと困ったなって顔をする麗。


「このあいだ、おなかの調子が悪い時に、『ご飯はいらない。アイスが食べたい』って言いだしたから、私が『アイスは後にして少しでもご飯を食べましょう』って言ったの。そうしたら怒り出しちゃって。きっと体調が悪かったのね。用意した食事を床に投げ落としたの」


「ええ?」

麗が驚いている。


「普段そんなことする子じゃないから、私もお母様も驚いて、立ち尽くしてしまったの。そうしたらね、賢介さんがいきなり遥を抱き上げてお尻を叩いたの。『食べ物を粗末にする子はパパが許さないよ』って。凄く怖い顔をして。遥は大泣きしたのに、『喜代さんがせっかく作ってくれた食事を粗末にする子は悪い子だ。謝りなさい』って。遥が『ごめんなさい』って言うまで叱ってて。私が見てても怖かった」


「遥は大丈夫なの?」


「うん。パパに怒られて、しばらく私にべったりになったけれど、すぐにパパに寄って行ってたわ。でも、パパは怒ると怖いって思ったらしくて、『そんなことすると、パパに言うわよ』って言うとすぐに言うことをきくようになった」


私自身は父も母も知らずに育ったけれど、遥はみんなの愛情に包まれている。


「大切に育ててくれてありがとう」


うんん。


「私こそ、遥を育てさせてくれてありがとう」


***


「ねえ麗」

「何?」


「私、ちゃんと母親が出来ているのかなあ?これからも遥のママでいてもいいのかなあ?」


「バカ。あなた以外、遥のママはいないでしょう」


「麗・・・」

涙が流れた。


ずっと、ずーっと、私は麗にそう言ってもらいたかった。


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