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「若井、恋してるでしょ。」
「はぁ?出会いもないのに、誰に恋しろと。」
半引きこもりの生活なのに、どこにそんな出会いが落ちてたと。
スーパーのレジのお姉さん?
よく行くコンビニの店員さん?
それとも出会い系アプリか。
いや、そもそもそんなのやってねぇし。
「無自覚!小学生かよ!」
元貴が手を叩いて爆笑する。
「身近な物ほど見えないんだよ。見落とすの。気付いた時には、手遅れな時もある。そうならない事を祈るよ。」
その時、ふわっとアイツの姿が
見えた気がして。
「いやいやいや…。」
ないわ。
そもそも男だわ。
「じゃあ、恋する出会いをくれ。」
「ないな。オレもないのに。」
マグカップの中身を飲み干して、お互いにソファに寄りかかる。
「りょうちゃんは?」
「日課のランニング。帰ってくるまでいる?」
「そうしようかな。」
寄りかかったソファを支えに、元貴が伸びをする。
俺はマグカップを手に立ち上がって、ついでに飲み物とタオルの確認。
「冷えてなくていいの?」
「冷えてたら、お腹壊す。」
あの虚弱体質は。
「よく分かってらっしゃる。」
「そりゃ、これだけ一緒にいれば。」
嫌でも知れる。
食べ物の好き嫌いやら、好きそうなTVの番組やら、なんやらかんやら。
お互いに譲り合ってるうちに、俺は動物に詳しくなって、あっちはサッカーに詳しくなった。
そんな変化も、あった。
「ただいまー!あー、もときだー!」
「おかえり、りょうちゃん。」
弾んだ息で飛び込んでくる、涼ちゃん。
「まずは洗面所行って来るー、待っててー。」
俺からタオルだけ受け取って、代わりにイヤホンを置いて行く。
「息ぴったりでないの。」
「慣れだ、慣れ。」
ほぼ毎日のルーティンみたいなもん。
受け取ったイヤホンをケースに仕舞って、テーブルへ置いておく。
忘れなければ、自分で充電するだろう。
忘れてたら、俺が充電。
「そういえばね、かわいいカフェが出来てたから、今度一緒に行こうよ。」
顔まで洗ったのか、タオルで顔を拭きながら涼ちゃんは戻って来た。
「保湿、しろよ。」
「はぁい、カフェは?」
「分かった、今度ランニング付き合ったらな。」
そのうち、な。
化粧水と乳液を手に、涼ちゃんが元貴を振り返る。
「なんでそんなびっくりしてんの?もとき?」
釣られてそっちを見れば。
目がまん丸になった元貴がいる。
「いやぁ?」
意味ありげな笑いをして。
「そのカフェ、オレも行きたいなー。」
「本当⁈じゃあ、いつにしよっか。今日この後行く?」
「オレは用事ないからいいよ?若井は?」
「俺もないし、涼ちゃんもない!」
そもそも、今日オフだろうが。
「じゃあ、行こうね!」
嬉しそうに言って、ヘアバンドをかぶる。
「あ。」
そのヘアバンドは…。
「何、その可愛いやつ。」
「わかいからのプレゼント!」
猫耳ついてるやつじゃんか!