「二度目の夜」
遠ざかる 日比野(ひびの)たちを目にしながら、まるで世界が一時停止したような錯覚に陥った。
動いているのは日比野とあの女の子だけで、ほかのものは闇の中で止まってしまったような錯覚。
駅に向かわず角を曲がった日比野たちは、やがて見えなくなった。
けれど、私のほうはまだ動けない。
さっきの光景が頭に焼きついて、あの子に触れた日比野の手で、口も鼻も塞がれてしまったみたいに、呼吸が苦しくてたまらない。
その時、ぱっと手首をつかまれ、体が前へ引っぱられた。
えっ、と驚くより先に足が動き、視界が動いてやっと、目の前の横断歩道の信号が点滅していることに気づく。
紀坂(きさか)に連れられ横断歩道を渡り切ると、数秒後には真後ろを車が走り始めた。
「あ、ありが―――」
「あの人たちは、知り合い?」
お礼を言おうとする私を遮り、紀坂が言った。
その言葉にびくっとした私***************************
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